四千PV記念 夏だっ!水着回だっ!皇一家の海旅行③



「竜司っ!

 腹ごなしにビーチバレーでもしないかっ!?」



 唐突だな。


 でもお昼食べ過ぎたしな。

 運動をしといたほうが良いかも。


「うん良いよ。

 兄さん」


「ん?

 竜司、ビーチバレーするの?

 私も混ぜてよ」


 蓮が乗って来た。


「いいよ」


「何や竜司。

 ビーチバレーやるんか?

 ワイも混ぜろや」


 あら?

 げんも。


「お前ら、何かするのか?」


 お爺ちゃんが会話に入って来た。


「今からビーチバレーをやるんだよ」


「ん…………

 バレーと言うのは排球の事か?」


「排球…………

 あぁバレーボールか。

 そうだよお爺ちゃん」


「フム……

 ビーチは砂浜を指しているとして……

 要は砂浜でやる排球と言う事かの?」


 さすがお爺ちゃん。

 知らない言葉でも推測で正解に導くんだ。


「さすがお爺ちゃん。

 その通りだよ」


「フフン……

 フム……

 排球か……

 よし竜司、儂もやるぞ」


 意外な所でお爺ちゃん参戦。


「ええっ!?」


 僕は驚いて素っ頓狂な声を上げてしまう。


「どこから声出しとるんじゃ……

 いいじゃろ?

 別に。

 儂もたまには孫とスキンシップしたいんじゃよ」


「まあ……

 別に構わないけど……」


「何やボン……

 ワレびーちばれーも知らんのかいな……

 ボンがやるんならワシもやるで」


「バーちゃん、大丈夫なんか?」


げんよ……

 ワシを舐めとりゃせんか?

 びーちばれーぐらい出来るわい」


 あれ?

 フネさんも参加。


「うふぅん……

 竜司くん……

 今からビーチバレーするのぉん……?

 私も混ぜてぇん……」


 腰を振りながらつづりさんが混ぜろと言って来た。


「えぇっ?

 いや……

 まあ……

 いいですけど……

 カズさんは……?」


「あー……

 僕ムリー……

 輸血直後は激しい運動厳禁ー……」


「あ、そう……」


 痴女参戦っと。


「うふふ……

 竜司さん……

 今から何しはりますのんや……?」


 今度は母さんだ。


「今からビーチバレーやろうかなって」


「あらー……

 よろしおすなあ……

 ウチも混ぜてもらおかなあ」


 母さんも混ざったっ!


「ンフフフゥ~~……

 十七とうなさんがやるのでシタラァ……

 私もやりマショウかねぇ……」


 まあそう来てもおかしくはない。

 父さんも参戦。


 …………となると


船長キャプテンがやるなら俺達もやるぜっっ!

 なぁっ!

 ジャックッッ!」


「おうよっっ!

 ケイシーッッ!」


 そうなるわな。


「えっ!?

 えっ!?

 何ッ!?

 何するのっ!?

 竜司っ!?」


 遅れて暮葉がのっかってくる。


「あぁ。

 今からスポーツをやるんだよ。

 ビーチバレー」


「ん?

 びーちばれー?

 何それ?」


「あれ?

 暮葉知らないの?

 じゃあ出来ないかもね。

 応援しとく?」


 僕は敢えて意地悪な言い方をしてみた。


「ムムム~~ッッ……!

 何よっ!

 私だってびーちばれーぐらい出来るモンッ!」


「え~~……

 ホントかなぁ~

 じゃあどうするの?」


「モーーーッッ!

 竜司の意地悪ッッ!

 やるっ!

 私もびーちばれーやるっ!」


 僕が何故意地悪な言い方をしたかと言うとサービスエリアでの母さんの一言を気にしての事。


 暮葉さんも相手にせなあかんよ


 この言葉が地味に響いていたからだ…………

 と言っておく。


 要するに僕は暮葉とイチャイチャしたかっただけなんだ。


「……サーセーーン…………

 ウチ、ダルいんでパスでシクヨロー……」


「私も応援に回るわ」


 湯女ゆなさんと涼子さんはやらない……

 と。


 まあ涼子さんは一般人だしな。


「これで全員かな?」


 僕と兄さんに暮葉、蓮にげんとお爺ちゃん、フネさん。

 父さん、母さん、ケイシーさん、ジャックさん、つづりさんの合計十二人かな。


「十二人か……

 チーム分けはどうする?」


 順当で行くと……


 僕・暮葉。


 蓮・げん


 お爺ちゃん・フネさん。


 兄さん・つづりさん。


 父さん・母さん。


 ケイシーさん・ジャックさん。


 の合計六チームか。

 僕はこのチーム案を提案してみる。


「俺は別に構わんぞ」


 これで行くのかな?

 とか思ってたら、物言いが入る。


「うふぅん……

 私は嫌よぉん……

 隊長と組んだらあーだこーだうるさいから……

 視姦出来ないじゃなぁいん……」


 後半卑猥な単語を出し、物言いを呈したのはつづりさん。


 多分兄さんは勝負事は敗けたくないから色々指示を出すんだろう。

 かたやつづりさんはレジャーとしてやりたいんだろう。

 まあ八割目的はエロ方面だろうが。


「じゃ……

 じゃあ……

 どうしよう……」


 僕が戸惑っているとつづりさんが意外な人物を指名した。


「うふふぅぅん………………

 蓮ちゃん……

 こっちにいらっしゃぁいん……」


 意外。

 暮葉とか指名するのかな?

 とか思ってたけどまさかまさかの蓮。


「えぇっっ!?

 私っっ!?」


 蓮も驚いている。

 冷静に考えて見たら当然か。


 つづりさんの目的は視姦だ。

 と、なると女性と組みたがる。


 多分暮葉を指名しなかったのは僕に気を使っているか、僕とセットで楽しみたいかだろう。


 残る女性は母さんとフネさん。

 面識から考えて蓮という訳だ。


 蓮がつづりさんの側へ。


「ムチュッ……

 蓮ちゃぁん……

 久しぶりぃん……」


 つづりさんが蓮に投げキッス。

 この人は男も女も関係無いんだ。


「えっ……

 えぇ……

 お久しぶりですつづりさん…………

 でも何で私なんですか……?」


「うふふふぅん……

 それはねぇん……

 これヨォッ!」


 ニュルゥッッ!


 つづりさんが蛞蝓なめくじの様な動きで蓮の後ろに回る。


 ムニュゥッッ


 つづりさんが蓮のお尻を鷲掴んだ。


「ちょっ……!

 つづっ……!?

 あぁっ……!

 何っ……!?

 この人っ……!

 上手…………っっ!

 あぁあんっっ……」


 蓮が色っぽい声を上げ始めた。

 僕は見てはいけないと思いつつ目が離せない。

 この旅行、エロ方面に充実しすぎて無いか。


 ムニュゥ

 ムニュゥ


「うふふふぅん……

 蓮ちゃんってぇ……

 お尻は良いのよねぇ……

 デカ尻にまではギリ届かないぐらいの大きさァァ……

 そしてこの柔らかさ……」


 ぷりりんっっ

 ぷりりんっっ


 つづりさんが指で蓮のお尻を弾く。

 プルプル震える蓮のお尻。

 エロい。


「やぁっ……!

 恥ずかしいっっ……!

 竜司がぁっ!

 見てるのにぃっっ!

 あぁんっ……」


 蓮の声が色気を増す。


「ブホッッ!」


 つづりさんが鼻血を噴き出した。

 野太い呻き声が響く。


「わっ!

 つづりさん、大丈夫ですかっっ!?」


「あっ……

 あぁ……

 だっっ……

 大丈夫よっっ……

 蓮ちゃん……

 なかなかに甘酸っぱい反応するわね……

 加えてこのお尻の破壊力……

 これはもうお色気大量破壊兵器ね……」


 ポタポタッ


 滴る程、鼻血が垂れている。

 オイお前吸血鬼だろ。

 妙な称号をつけられた蓮。


「何言ってるんですかーーーっっ!

 早く私の後ろから離れて下さーーーいっっ!」


「こっ……

 このお尻は危険ねっ……

 これ以上触ったらあたし出血多量で死んじゃうわ……

 ならばっっ!」


 ヌルヌルヌルッ


 つづりさんの両掌がスライムの様に這いずり上がる。


「キャアッ!

 そっ……!

 そっちはダメッ!

 ホントにダメッッ!

 やめてぇぇぇッッッ!」


「うふふぅん…………

 会った時から目を付けてたのよぉん……

 アタシの両乳測定器スカウターによると……

 前はBの七十だったわぁん……

 でも今日は……

 C……

 いやDの七十五はあるわねぇん……

 一体どうやって成長したのよぉん……

 やっぱりキャベツ?」


 やはりか。

 やっぱり蓮の胸は大きくなっていた。


 ムニュッッ


 つづりさんが蓮の両胸を掴んだ。


「やめてぇぇぇぇぇっっっ!

 いやぁぁぁぁっっ!」


「ん…………

 これは……」


 バッッ!


 一瞬戸惑いを見せたつづりさんの隙を見て、魔手から逃れる蓮。

 両腕を胸でクロスさせ、顔を真っ赤にさせながらプルプル震えている。


「ふぅん…………

 なるほど……

 切ないわねぇん……

 これもまた青春の恋の色…………」


「つっ……

 つづりさんっっ……」


 プルプル震えながら顔を真っ赤にして、涙目で何かを訴えている蓮。


「チュッ……

 蓮ちゃん、安心してぇ……

 は誰にも言わないわぁん……

 オンナの約束よぉん……

 チュッ」


「ホッッ……」


 投げキッスで始まり投げキッスで締めくくられたつづりさんの一言。

 本当に本当に安堵した顔を見せる蓮。

 いったい何の話だろう?


 結局の所、チームはこうなった。


 僕・暮葉。


 蓮・つづりさん。


 お爺ちゃん・フネさん。


 げん・兄さん。


 父さん・母さん。


 ケイシーさん・ジャックさん。


 げんと兄さんて。

 降って湧いたように誕生した最強チーム。


 蓮とつづりさんの女性チームも侮りがたい。


 お爺ちゃんとフネさんのチームも怖い。

 二人とも伝説級の竜河岸なんだから。


 父さんと母さんもかなり手強そうだ。

 何てったってあの変態の父さんとA.Gの母さんだ。


 そして唯一一般人で参加しているケイシーさんとジャックさん。

 この二人は未知数。


 一般人と言っても二人ともマヤドー会海洋交渉術の使い手だ。

 何をしてくるか逆に想像できない。


 けど僕もやるからには負けるわけにはいかない。

 負けたくない。



 さぁっビーチバレーだッッ!



 僕は気合を入れた。


「あ、ちょっとええか?」


 と、そこへ母さんがほのぼの制止する。

 入れた気合が抜けてしまう。


「な……

 何?

 母さん」


「うちとお父さんら、昼餉ひるげ食うとりゃせんのよー

 そこらの浜茶屋で食うてくるさかいに先始めといてんかー」


「あっうん。

 わかった。

 いってらっしゃい」


「ほな行ってくるわぁうふふ……

 ほら、滋竜しりゅうさん……

 行きますえ……

 あんたらもついてき……」


「ンフフフゥ~~……

 行きましょうかネェ……」


「ヘイッ

 姐さんっ」


「姐さんっっ

 お供させてもらいやすっっ!」


 巨漢の男三人引き連れて母さんは去って行った。

 今の様子は本当に姫って感じ。


「じゃあそろそろやろうか」


「おう……

 それじゃ……」


 兄さんはまとめておいたゴミから空きペットボトルを取り出す。


構成変化コンスティテューション


 フィンッ


 兄さんがスキルを使った。

 何で?

 現れたのはバレーボール。


「兄さん、何でスキルを……?」


「ん?

 俺達がビーチバレーすんだぞ。

 ンなもん、何でもアリに決まってるじゃねーか」


 何でもアリ?

 ……ってスキルや魔力注入インジェクトの事を言っているのか?


「えぇっ!?

 兄さんっっ!

 そっ……

 そんな事したら砂浜がっ……」


「ん?

 砂浜ぐらい俺の構成変化コンスティテューションで元に戻してやるよ。

 母さんの生命の樹ユグドラシルもある事だし何とかなんだろ」


 軽い。

 ホントかよオイ。


「そっ……

 それでそのバレーボールは……?」


「俺達が全力でスパイクとか打ったら、普通のバレーボールだと完全に割れるからな。

 だから俺が改めて造った。

 魔力強度を強めに作ってあるからちっとやそっとじゃ割れねぇぜ」


 白い歯を見せてニカッと笑う。


「あ、そう……

 まず誰と誰がやる?」


「へっ!

 そりゃあ言い出しっぺだろ?

 竜司、かかってこい」


「いいよ。

 負けないからね」


 兄さんからの宣戦布告。

 それを受諾する僕。


 やるからには負けないぞ。

 僕らはビーチバレー場に向かう。


 ビーチバレー場


 そこは誰も居なかった。

 それもそうか。


 今日はお盆の平日。

 他の人もまばらなんだ。


 しかもこの燦々と照り付ける夏の太陽。

 この下でビーチバレーなんかしたら熱中症にでもなるんじゃないかと言う暑さ。


 やがてビーチバレー場に辿り着く。


 砂浜に十m×二十mぐらいの長方形にビニールテープが置かれている。

 中央にネットが張ってある。

 身長の頭、三つ四つ分ほど上にある。


 へえこれがビーチバレー場か。


【何だ?

 さっきから聞いてたけど良く解んねぇぞ。

 何すんだ?

 竜司】


 ようやくガレアが話しかけてきた。


「今からビーチバレーをするんだよ」


【ん?

 何だそりゃ】


 ガレアはお爺ちゃんの様にはいかないか。

 当然だけど。


「ビーチバレーってのはスポーツだよ」


【何ッ!

 すぽーつっっ!

 アレかっ!

 ヤキューかっっ!】


 何か勘違いをしているガレア。

 

「違うよガレア。

 確かに野球もスポーツだけど僕たちがやるのは別のスポーツだよ」


【ん?

 すぽーつっていっぱいあんのか?】


 久々のガレアのキョトン顔。

 やっぱり可愛いなあ。


「うん。

 そうだね。

 いっぱいあるよ」


【ふーん……

 んでどんな事やるんだ?】


 ガレアはまだキョトン顔。


「ねっ!?

 ねっ!?

 竜司っ!

 びーちばれーってどうやるのっ!?」


 と、思ったら焦った暮葉が話しかけてきた。


「えっと……

 じゃあ一度練習してみようか。

 ガレアは見てて。

 その方が解りやすいと思うから。

 じゃあこっちだよ……

 おいで」


 僕は暮葉の小さな手を握り、コートまで連れて行く。


「兄さん、ちょっと暮葉にやり方教えるからボール貸して」


「おう、ほらよ」


 ネットの向こう側から兄さんがボールを投げて来る。


 パシッ


 ボールを受け取る。


「いい?

 暮葉。ビーチバレーっていうのはこのボールをネットを挟んだ向こうの陣地に落とすゲームなんだ」


「うんっ!

 わかったっっ!

 えいっっ!」


 僕の手からボールを奪い取る暮葉。


「え?」


 バンッッ!


 猛然と相手コートにダッシュ。

 ネットの下をスライディングで潜る。


 ズザザザザザァァァッッ!


「とりゃーっっ!」


 ベシッッ!


 可愛い掛け声と共に倒れ込みながら、ラグビーのトライの様に相手コートの地面にボールを叩きつける暮葉。


「どぉーーっ!

 竜司ーーっっ!

 これでいいのーーっっ!?」


 その様を見ていた兄さんとげんが絶句している。


「えっと……

 暮葉……

 ちょっと戻って来て……」


 すぐに立ち上がり、ニコニコしながらこちらに戻って来る暮葉。


「どうだったっ!?

 竜司っ!」


「えっと暮葉……

 ボールは持っちゃダメなんだ……

 手を使って弾かないと……

 どんな感じかやってみるから、優しく僕にボール投げてみて」


「うん」


 ぽい


 暮葉の手からボールが弓なりに飛んでくる。


「よっと」


 パンッ


 オーバーハンドレシーブで返す僕。

 ボールが軽い音を立てて、弓なりに暮葉の元へ戻る。


「フム」


 暮葉が少し真剣な顔で僕を見ている。


「これがオーバーハンドレシーブ。

 ボールが自分の頭上から来たら、これでボールを弾くんだ……

 後はね……

 もう一度軽く投げてみて」


 ぽい


 暮葉がボールを投げる。

 さっきと同じ様に弓なりにボールがこちらへ。


 バン


 僕は腰を落とし両手を合わせ、アンダーハンドレシーブの構え。

 ボールは僕の両手に当たり、また暮葉の元へ。


「フムフム」


 真剣な表情を変えない暮葉。


「これがアンダーハンドレシーブ。

 これはボールの位置が低い時に弾くやり方ね」


「ねえ竜司、これは両手でやらないとダメなの?」


 暮葉がキョトン顔


「ん?

 そんな事無いよ。

 要はボールを弾けばいいんだから。

 だけど足はダメね。

 足は反則」


「うんわかった」


「じゃあ一回ラリーをやってみようか。

 ラリーって言うのは交互にボールを弾き合う事だよ。

 僕にボールを投げて。

 それを僕が弾いて暮葉に返すから、そのボールを今教えた二つでも良いし、片手でも良いし、僕に返してみて。

 ラリーって言うのはね続いたら凄い事なんだよ」


「そうなの?

 ……じゃあ」


 ぽい


 暮葉がボールを投げる。


 パン


 オーバーハンドレシーブで返す僕。


 パン


 オーバーハンドレシーブで返す暮葉。


「ははっ

 上手上手」


 バン


 今度はアンダーハンドレシーブで返してみる僕。


 バン


 暮葉も同じくアンダーハンドレシーブで返す。


「凄い。

 暮葉出来てるよ」


 パン


 僕はオーバーハンドレシーブ。


「ふふーんっ

 でしょーっっ!?」


 暮葉が自慢気な顔でオーバーハンドレシーブ。

 普通に出来てるな。

 練習はこれぐらいで良いかな?


 パシッ


 僕はボールを掴んだ。

 ラリー練習終了。


「うん。

 暮葉、大丈夫そうだよ」


「私にかかったらびーちばれーなんて朝超し前なんだからっっ!」


 暮葉がウインクしながら、人差し指を立ててポーズを決める。

 うん可愛い。


 可愛いんだけど……


「暮葉……

 それをいうなら朝飯前ね……」


 こういう妙な言い間違いは相変わらずだなあ。


「おーいっ!

 竜司っ!

 練習は終わったかーっ!

 そろそろやるぞーっっ」


「あ、うんっっ!

 じゃあ暮葉……

 がんばろ」


「うんっっ!」


 暮葉の元気な返事。

 まずはサーブ権のジャンケンだ。


「兄さん、サーブ権のジャンケンしよう」


「おう、ジャーンケーン……

 ホイッッ!」


 僕の勝ち。

 サーブ権は僕達からだ。


「竜司、本来ならビーチバレーは二十一点の二セット先取だが、テンポが悪いから、十二点先取の一回勝負だ」


「うんわかった」


 〇第一試合


 竜司・暮葉VS豪輝・げん


「じゃあ行くよー」


 パンッッ


 軽い音を立てて、ボールが大きく弓なりを描き、敵側のコートに飛んで行く。


「よーし、行くぞー」


 パン


 兄さんがオーバーハンドレシーブ。


 ひゅん


 兄さんからげんの方にボールが行く。


 何か普通にスポーツしてるって感じ。

 健康的だ。

 楽しい。


 前には婚約者。

 しかも水着。

 女友達や親友、家族と海旅行。


 これがリア充と言うものなのか。

 去年の引き籠りの日々が嘘の様だ。

 凄く楽しい。



 …………と思ってたのはここまでだった。



発動アクティベートォォッッ!」


 げんの叫び。


 は?


 僕の頭の中にはこの一言しか浮かばなかった。


 バンッッッッ!


 状況を整理する暇も無く、空高く舞い上がるげん


 カッッッ!


「眩しっっ!」


 げんの身体が真夏の太陽を背負い、逆光になって黒く。

 余りに眩しくて目を遮ってしまう。


「死ねぇッッ!

 竜司ィィィッッ!

 震拳ウェイブゥゥゥッッ!」


 ドコォォォンッッッ!


 大きな衝撃音。


 え?

 死ね?


 これスポーツなんですけど。


 震拳ウェイブ

 え?

 何でビーチバレーでスキル?


 それで何?

 あの大きな音。


 瞬時にいくつも疑問符が浮かぶ。

 猛然とこちらに向かってくるボールを見てスキルの意味が解った。


 ボールがグラグラ揺れてこちらに向かってくるのだ。

 まるで野球のナックルボールの様に。


 ただげんが放った震拳ウェイブスパイクはスピードも物凄い。


 グラグラグラァァッ


 不規則に揺れながら猛然と向かってくるボール。


「えいっっ!」


 暮葉がアンダーハンドレシーブで受ける。

 上手い。

 だがげん震拳ウェイブスパイクはこれだけでは終わらなかった。


 ギュギュギュッッ!

 グラグラグラグラァッ!


 げんの放ったボールは暮葉の両手から離れる事無く、くっついたまま激しく揺れる。

 まるで激しく踊るダンサーの様に。


「やだっっ!

 何これぇぇっっ!?」


 暮葉も初めての状況に驚いている。


 ビュンッッ


 自身の激しい揺れに耐えきれなくなったボールは勢いよく、あらぬ方向へ飛んで行く。


「くっっ!!」


 僕はすぐさまボールを拾おうと横っ飛び。

 が、間に合わず無情に落下。


 ザシャァァァァッッ!


「くそっ!」


「ほぉーい。

 1対0じゃ」


 フネさんがスコアラーらしい。


 僕は悔しさが沸き上がるのを感じながら、ゆっくり立ち上がる。


「ちょっとっっ!

 げんっっ!

 どういう…………!!?」


 僕はもっと普通にビーチバレーがしたかったんだ。

 物言いの為に声を荒げる僕。

 だが、途中で止まる。


「何やぁ~~……?

 竜司くん……

 まさか健全な一般人がやる様なスポーツ期待しとったんやないやろうなあ……」


 ゴゴゴゴゴゴゴ


 空気が震えているのかと錯覚する。

 目が紅く光ってる。


 こいつガチだ。

 ガチで殺る気だ。


「そうだとも……

 げん君が正しい……

 さっきも言っただろう……

 何でもありだと……

 まさか忘れていた訳じゃあないよな……

 竜司……」


 兄さんの目も赤く光っている。

 オイお前もか。


「豪輝さーん、頑張ってー」


 状況を理解しているのかしていないのか、ほのぼのした涼子さんの声援が飛ぶ。


「はいっっ!

 任せて下さいっっ!」


 兄さんの元気な応答。


「どや?

 竜司。

 目ぇ覚めたか?」


「ガレア……

 こっち来て……」


【ん?

 何だ竜司】


 ドスドス


 ガレアがこっち向かってくる。


 そっちがその気ならやってやる。

 僕も本気だ。

 大型魔力補給。


 保持レテンション


 ガガガガガシュガシュガシュガシュ


 舐めるなよ。

 僕だって去年の死闘を生き残ったんだ。


 集中フォーカス


 両脚と右腕に魔力集中。


 準備OK。

 目にもの見せてやる。


「兄さん……

 じゃあ行くよ……」


 ビュンッッ


 左手で思い切り真上にボールを上げる。

 空高く飛んで行くボール。


 バンッッッッ!


 僕は思い切り砂浜を蹴った。


 舞い上がる砂塵。

 僕の身体は弾丸の様に天を駆け上る。

 すぐにボールを捉えた。


 発動アクティベートは僕の右掌がボールに触れるインパクトの瞬間。

 タイミングを合わせろ。


「デリャァァァァァァッッッッ!」


 気合のいれた声と共に、鞭の様にしなる僕の右腕。

 ここだっっ。


発動アクティベートォォォォォォッッ!」


 ドルルンッ!

 ドルルルンッッッ!

 ドルンッ!


 ドコォォォォォォォォォォォォンッッッッッッ!


 爆発にも似た巨大な衝撃音が響く。

 鋭い角度で猛然と落下するボール。


 ボッッッ!


 空気との摩擦でボールが発火した。

 途轍もないスピードで真っすぐ敵コートに落下する。


発動アクティベートォォォッッ!」


 バァァァァッァァァンッッ!!


 大きな衝撃音が眼下で聞こえる。

 げんが受け止めたんだ。

 僕は重力に逆らわず落下。


「グオッ…………!

 グオオオオオッッッ!」


 げんの呻き声。

 アンダーハンドレシーブで受け止めているげんが見える。


 だが僕には勝算があった。

 敵には受けれないって。

 難なく砂浜に着地。


 ギャギャギャギャギャギャッッッッ!


 僕の放った弾丸サーブは未だ勢い衰えず、げんの両手を突き抜け、地面に突き刺さろうとしている。


「ウウッ……

 ウワァァッ…………

 もうアカーーンッッッ!」


 バシィィィィィッッッッ!


 巨大な弾かれる音。

 げんの両手が球の勢いに負けて弾かれたんだ。


 ドコォォォォォォォォォォォォン!


 大きな着弾音。

 砂嵐のように巻き上がる砂塵。


「うわぁぁっっ!」


「うおぉぉっっ!」


 兄さんとげんの叫び声が聞こえる。

 やがて浜風によって砂塵は四散する。


 敵コートでひっくり返っている二人。


げん……

 魔力注入インジェクトの練度なら僕の方が上なんだよ……

 あと兄さん……

 僕の今の球を受けれるのは形状変化コンフィグレーションぐらい……

 でも兄さんの形状変化コンフィグレーションは時間がかかるんだよね…………

 どう?

 これが僕の本気だよ……」


 僕は倒れている二人を見下ろす。


「グゥッ……

 やるやないけ……

 竜司……」


「ヒョヒョヒョ……

 竜司やるやんけ……

 ホイ1対1ー」


 ゆっくり起き上がるげん

 兄さんも続いて起き上がる。


「う~ん……

 痛てて……

 んで……

 竜司……

 何だって?

 俺の形状変化コンフィグレーションの発動が遅いって……

 まあそれは概ね間違ってねえよ……

 それなら……

 このままボーっとしてていいのか……?

 構成変化コンフィグレーション……」


 グギャギャギャギャギャァァァッッ!


 肉の擦れる音がする。

 両腕が鋼鉄色に変わって行く。


 しまった。

 優位に立ったと思って、油断していた。


 両肩が三周りほど大きくなる。


 両腕の色が見る見るうちに深い鋼色スチールグレーに変化。

 肥大した前腕部から管が三本ずつ隆起。

 ゆらりと煙をくゆらせている。


 これは兄さんの腕力超強化モード。

 異形の両椀を持つ兄さんが誕生。

 っていうかこんな化物の姿、涼子さんに見せて大丈夫なのか?


「キャーーッ!

 豪輝さんステキーッ!」


 涼子さんの無邪気な黄色い声援が飛ぶ。

 兄さんの異形の姿は平気みたいだ。

 愛の力は偉大だなあ。


「さあ竜司……

 わざわざ準備完了するまで待ってくれてご苦労さん……

 来やがれ……」


 ブァンッッ


 頬に風を感じる。

 兄さんからだ。

 強者の“圧”を放ったんだ。


 でも僕は負けないぞ。

 残存魔力はまだある。


 集中フォーカス


 先と同じ様に両脚と右腕に魔力を集中。


 ブンッッ!


 僕は左腕を振り、真上に高くボールを上げる。

 さっきよりも高くなるよう力を込めた。


 バンッッ


 砂浜を思い切り蹴り、跳躍。

 天高く真っすぐ駆ける。

 その姿はロケットの様。


 超高度まで一瞬で到達。


「死ねぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!

 発動アクティベートォォォッッ!」


 ドルルンッ!

 ドルルルルンッッ!

 ドルンッ!


 ドコォォォォォォォォォォォォン!


 大きな衝撃音。

 僕が右手に込めた力を全てボールに伝える。


 キュンッッッ!


 ボールは閃光と化し、真っすぐ敵コートに落下。


げんくんっっ!

 下がれっっ!

 俺が受けるっっ!」


「頼んますッッ!

 にいやんッッ!」


 兄さんとげんがスイッチした。

 位置変更。


 ダァァッァァァァンッッッッ!


 硬い物にぶつかった音が鼓膜を揺さぶる。

 兄さんがアンダーハンドレシーブで受け止めた。


「ウオオオオオオッッッ!」


 兄さんの叫び声。

 着地した僕は固唾を飲んで見る。


 大魔力注入ビッグインジェクトの力を込めた強烈なレシーブは物凄く、兄さんの異形の両手を貫こうと猛回転している。


 ギャギャギャギャギャァァァァッッッ!


「こんのぉぉぉぉっっっ!

 舐めるなぁぁッッ!」


 バァァァァァンッッッ!


 大きく何かが弾かれた音がする。

 兄さんのレシーブが成功したんだ。

 全ての力を吸い取られたボールは弓なりに浮く。


げん君っっ!

 行けッッ!」


にいやんっ!

 任せとけぇッッ!

 発動アクティベートォォォォッッ!」


 バァァァァァンッッ!


 げん発動アクティベート

 巨大な力で砂浜を蹴る。

 轟音と共に砂塵が舞い上がる。


「オラァァァッァァァァッッッ!

 震拳ウェイブゥゥゥゥッッ!!」


 ドコォォォォォォンッッッ!


 激しい衝撃音。

 これもうビーチバレーで出る音じゃ無いだろ。


「竜司っっっ!

 任せてっっ!

 私が捕るッッッ!」


 頼もしい暮葉の言葉。

 アンダーハンドレシーブの構え。


 ぶりりんっっっ!


 着弾点に素早く横移動した為、暮葉の柔らかいお尻が激しく揺れる。

 アンダーの白と微妙に色の違う暮葉の肌の白さがお尻のいい形をクッキリ際立たせる。


 あ、これヤバいかも。


 バァァァンッッッ!


 暮葉のアンダーハンドレシーブが受けた。


げんちゃんのっっ……!

 球ってっ……!

 ここから暴れるんっっ……!

 だよねっっ……!」


 一度受けただけでげんの球の性質を見切った暮葉。

 竜の本能がそうさせたのかはわからない。


 暮葉は俯いている。

 ボールをじっと見ているんだ。


 グラグラグラグラグラァッ


「ここっっ!」


 暮葉が急激に身体を揺する。


 ぷりりりんっっ!


 動きに合わせて暮葉のお尻が揺れる。


 わかっているんだ。

 エロに集中していないで試合に集中しろって話だ。


 しかしあの崩れないゼリーと称される暮葉のお尻を前でフリフリされたら否が応でも気になってしまう。


 いかんいかん。

 煩悩は捨てて、試合に集中しないと。


 ダッッ!


 僕は首を左右に振り、前方へダッシュをかける。


 集中フォーカスッッ!


 両脚と右拳に魔力集中。


発動アクティベートォォォッッ!」


 ドルンッ!

 ドルルンッ!


 バァァァンッッッ!


 僕も負けじと発動アクティベート

 高く舞い上がる僕の身体。


発動アクティベートォォッッ!」


 ドルルンッ!

 ドルルルルンッッ!

 ドルンッ!


 ドコォォォォォォォンッッッ!


 捉えたボールを目掛けて、思い切り右拳を振るう。

 凄まじい轟音。

 ボールの接触面が爆発したかの様。


 上空から鋭角に敵コートを目指すボール。

 空気の層を突き破る猛烈な勢い。


げんくんっっ!

 俺が受けるッッ!」


「わかりましたぁぁっっ!」


 げんと兄さんが素早く位置変更。

 兄さんが前に来る。

 アンダーハンドレシーブの構え。


 ドコォォォォォォンッッッ!!


 激しい音。

 兄さんの異形の両手が受け止めたんだ。


「ヌオオオオオッッッ!」


 ギャリギャリギャリギャリィィィッッ!


 兄さんが受け止めても、削り取る様に猛回転を続けるボール。


「ヌウウウウウッッッッッ……………………!

 ゥオラァァァァァァッッッ!」


 バキィィィィィンッッッ!


 硬い物に弾かれた様な音がする。

 また兄さんに受け止められた。


 力を吸い取られたボールが弓なりに飛ぶ。

 またさっきのパターンか。


 暮葉も察知したらしく、着弾予測地点に素早く移動。

 が、向こうはこちらが読んでいるのは気づいていた。


 パン


 げんは魔力未使用のオーバーハンドトス。

 またボールは兄さんの方に返される。

 これはげんが撃つと見せかけたフェイントだ。


「えっっ!?」


「アレッッ!?」


 僕らはげんを注視していた為、完全に裏をかかれた。


げんくんっっ!

 ナイス判断だっっ!

 おりゃあっっっ!」


 兄さんが高くジャンプ。

 

 え?

 兄さん、魔力注入インジェクトは使えないし、脚は形状変化コンフィグレーション未使用だぞ。

 素でこれだけ飛べるのか。


 バシューーーッッ


 兄さんの右前腕部の管から勢いよく魔力煙が噴き出る。


「二点目頂いたぞォォッッ!

 竜司ィィィ!」


 ドコォォォォンッッッ!


 轟音。

 鋭いスパイクが僕らのコートに落下。


「クソォォッッ!」


 急いで位置修正。


 ドカンッッッッ!


 僕の両手とボール接触。

 何とか位置修正間に合い、アンダーハンドレシーブの体勢は取れるも兄さんのスパイク。

 まるで巨大な鉄球が落ちてきたかの様な感覚。


「グウウウッッ!」


 重い。

 物凄く重い。


「わっっ!

 竜司っっ!

 どいてどいてーーっっ!」


「え……?」


 暮葉も反射でこちらに向かって来ていた。

 どけったって今僕は兄さんの鉄球サーブを処理している最中だ。


 避けれない。

 避けれる訳が無い。


「わぁーーっっ!」


 ドシーーーンッッッ!


 僕と暮葉がぶつかった。

 衝撃で僕の体勢が崩れ、力も抜ける。

 動きを封じていた枷が解かれたかの様にボールが、僕の手をすり抜け砂浜に落下。


 ドコォォォォォォォォォォォォン!


 鉄球サーブ着弾。

 重苦しい鈍い大きな音が響く。

 砂塵も大きく舞い上がり、僕らを包む。


 ブァァンッッ!


「わぁっっ!」


「キャアッッ!」


 球の落下衝撃と風圧により、僕らは倒れ込む。


 モクモクモク


 偶然無風状態だったのか砂煙がなかなか晴れない。


 僕は。

 僕はどうなった。


 何か身体全体が柔らかく、ほのかに暖かいものに包まれている気がする。

 何だコレ?

 砂煙の中、左手で手探ってみる。


 ぷにょぉんっっ


 あれ?

 何か物凄く柔らかいものに触れた。


 ぐにゅん

 ぐにゅん


 何か解らないが揉んでみる。


 うわ凄い。

 この柔らかさは凄い。


 全く抵抗せずに五指が沈み込んでいくぞ。

 そして掌にコリコリ硬めの突起が触れている感触がある。


「ひゃんっっ!

 やぁぁぁ……」


 可愛らしい悲鳴が聞こえる。

 正直七割は揉んでる段階で気づいていたんだ。


 多分……

 これは……


 サァァァァ


 優しい浜風がようやく砂煙を攫って行った。

 視界がクリアーになる。


「え……」


 自分の置かれている状況に一瞬頭が真っ白になる。


 僕は仰向け。

 その僕の身体に倒れ込む様に暮葉の身体がある。

 ちょうど僕の両脚に挟まれる形。


 そして……

 そして……

 僕の左手は……


 暮葉の水着の中にあった。


 ぐにゅうん


「きゃんっっ!

 やだ竜司……

 揉まないでぇ……

 それはボールじゃないよう……

 私のおっぱいだよう……」


 何で?

 こんな所、狙いでもしないと入らないだろ。


 これがラッキースケベ体質と言うものなのか。

 こんなベタな萌えアニメみたいな事が起こるんだ。


「竜司……」


 暮葉が僕の胸元から僕を上目づかいで見る。

 頬が紅潮している。

 目が若干潤んでいないか?


 この潤んだ瞳でようやく正気に戻る僕。


 ツウ


 あ、出た。

 またか。


 鼻腔内に溢れる鉄臭さ。

 温く垂れる粘体。

 頭がどっか飛んでると鼻血って出ないんだ。


 と、そんな事言ってる場合じゃない。


「わわっっ!

 ゴメンッッ!

 すぐに離れるからッッ!」


 焦った僕は左手を離してしまう。


「だめだよう……

 竜司……

 そんな引っ張ったら水着取れちゃう…………

 って竜司……

 また鼻血出てる……

 うふふ……

 竜司ってばエッチなんだから……」


 頬を真っ赤に染めながら暮葉がはにかむ。


 モゾモゾ


 暮葉がモゾモゾし出した。

 僕の下腹部を優しく刺激する。

 段々熱を帯びていくのを感じる。


「あぁっっ……!

 暮葉っっ……!

 やめてっっ……

 やめ……」


「アレ……?

 竜司のが何かおっきくなったような……」


 僕の下半身を挟んでいるもの。

 それは暮葉の両太腿だ。

 予想通り暮葉の太腿はムッチリ柔らかかった。


 やばい。

 死ぬ程気持ちいい。


 やめて何か出る。

 何か出ちゃう。


 僕は公衆の面前で出ちゃうのか。

 しかも兄弟の前で。


「ブホッ!」


 僕の鼻から勢いよく鼻血が噴き出る。


「わーっ!

 竜司の鼻から血が噴き出たーーッッ!」


 ガバッッ


 暮葉が勢いよく起き上がる。


 はらり


 取れた。

 暮葉の真っ白いトップスが取れた。


 見てしまった。

 暮葉の左胸のピンク色乳首を見てしまった。


 そして依然として右胸を掴んだままの僕の左手。


 時が止まった…………


 気がした。


 ええ、真夏の太陽が照りつける中、半裸の暮葉はもう綺麗で。

 女神が馬乗りになっていると錯覚させる程で。


 暑さで胸の谷間を垂れる汗が艶めかしく妖艶で。

 そして左掌から伝わってくる柔らかさ。


 それはそれはもう神の乳房かと思う程の心地よさで。



 チーーーン



 僕は気絶した。



 ###

 ###



 時は少し進む。



 竜司は気絶してしまい、げん・豪輝チームとの対決は選手気絶により続行不能という何とも中途半端な結末になったのだ。

 場は第二試合に進んでいた。


 〇第二試合


 源蔵・フネVS蓮・つづり


 試合は中盤から終盤に差し掛かっていた。

 点数は10対8で蓮達のチームが僅差で負けている。


 蓮側のチームは完全に電流機敏エレクトリッパー頼み。

 発動時の反応速度なら相手のスパイクにも対応が出来る。


 が、こちらがスパイクを撃っても源蔵の歪曲壁ディストーションウォールで上空に逸らされてしまう。

 加えて魔力注入インジェクトも多用する為始末が悪い。


 本当に化け物の老人二人である。


 が、蓮も負けてはいない。

 ボールを高圧帯電状態にしてスパイクを放つ。

 いくら源蔵でも高圧電流による電気ショックが身体を走ると一瞬動きが止まってしまう。


 加えて源蔵の活動限界五分が来てしまい、身体能力大幅ダウンと言う状況にも陥る。


 そう言った状況から何とか点を巻き返し、10対8まで漕ぎ付けたのだ。


「ハァ……

 ハァ……」


 蓮も体力の限界が近い。

 電流機敏エレクトリッパーもあと使えて三~四発。


 そんな中、源蔵が蓮の戦いぶりを見て話しかけてくる。


「ゼイ…………

 嬢ちゃんや……

 なかなかやるのう……

 君を見てると昔おった考古学者見習いの竜河岸を思い出すわい……」


 蓮はピンと来る。

 考古学者で竜河岸と言うのは本当に世界レベルで数が少ない。


「ハァ……

 ハァ……

 それってママの事……?」


「……君の母の名は……?」


「ハァ……

 新崎藜しんざきあかざ……」


 源蔵は蓮の返答を聞いた瞬間、驚いた顔を見せる。


「プッ…………

 カァーッハッハッハァッ!!」


 大きな口を開けて大爆笑の源蔵。


「な……

 何ですか……?」


「ぷくく……

 いやスマン……

 まさかあのあかざ嬢ちゃんにこんな大きなお子さんがおったとはなと思ってな……」


「あ……

 あかざ嬢ちゃん……」


「儂が交流があった頃はまだ考古学者の見習いだったからのう……

 あのギラギラしていた子がなあ…………

 そういえばどことなく面影がある……

 まあ嬢ちゃんの方が上品ではあるがのう……」


「ママの話もっと聞きたい所だけど……

 今は試合です……

 じゃあ行きますッッ!」


 ダッッ


 ボールを軽く上に上げた蓮は高くジャンプ。


「えいっっ!」


 バンッ!


 蓮のジャンピングサーブ。

 軽快な音を立て、勢いよくボールが敵コートへ飛んで行く。


「この辺りか……」


 源蔵に向かって行ったボール。

 いや……

 源蔵が敢えて当たる位置に移動したと言うべきか。


 フィンッ


 ボールが不自然な挙動で真上に飛ぶ。

 ある程度上に行くと重力に逆らわず降りてくる。

 これが源蔵の歪曲壁ディストーションウォールである。


「フネさんやっ!

 行くぞっ!」


 パンッ


「ほいさ……

 発動アクティベート……」


 ピチョーーン


 周りに響く水滴が落ちる音。


 バンッッッッッ!


 フネが勢いよく大地を蹴る。

 吐き出される様に砂煙が舞う。

 高く舞い上がる老婆。


 ドンッッッッ!


 魔力を集中させた手で思い切りスパイクを撃つフネ。

 鋭角に老婆の放った弾丸サーブが襲い来る。


電流機敏エレクトリッパーッッ!」


 蓮が叫ぶ。

 スキル発動。


 蓮の周りの動きがゆっくり見える。

 これはタキサイア現象。

 脳内情報処理能力が飛躍的に上がる時に起こる現象である。


 蓮は着弾予測地点に素早く移動。

 蓮は電流機敏エレクトリッパーの作用により、タキサイア現象下でも通常通り動けるのだ。


 ドンッッッッッ!


 蓮がアンダーハンドレシーブで受ける。

 動きがスローになっているといっても強烈な威力は変わらない。


 蓮の両手に重く圧し掛かる威力。

 ではこれまで蓮はどう受けていたのか?


「ええいっっ!」


 蓮の気合のいれた掛け声と共にボールの方向が変わる。


 蓮は力の方向を変えた。

 いわゆる力を逸らした形。

 このやり方で蓮は敵の猛攻を凌いでいたのだ。


 タキサイア現象解除。

 力が抜けきったボールは弓なりにつづりの元へ。


「はぁいん……

 蓮ちゃん……

 行くわよぉん……」


 パン


 つづりのオーバハンドレーブ。

 ボールは蓮に返される。


「任せて下さいっっ!」


 バチィィッッ!


 蓮は電力を右手に集中。

 空中に放電。


 ダッッ!


 高く跳び上がる蓮。

 全身を限界まで逸らせる。

 充分に溜めた力を全て右手に込める。


「てりゃぁぁぁぁっっ!」


 バリィィィィッッッ


 接触点がスパーク。

 空中に放電する。


 バチバチィッッ!


 帯電したボールがフネに向かって猛然と向かう。


「ヒョォッッ!?」


 フネがアンダーハンドレシーブの構え。


 バチィィィィッッ!


 ボール接触。

 フネが感電。

 一瞬動きが止まる。


 ポーン


 弾かれたボールは弓なりに源蔵の元へ。


「ホッ…………

 …………フネさんっっ!!?」


 オーバハンドレーブで球を返す源蔵だが、依然としてアンダーハンドレシーブの構えから震えて動かないフネを見て叫ぶ。


 ザッ


 ボールが砂浜に落下。


「はーい。

 10対9」


 豪輝がぶっきらぼうに点数を告げる。

 この試合は豪輝がスコアラーなのである。


「フネさん……

 どうしたんじゃ……?」


 依然として動かず、プルプル震えているフネに異常を感じ、源蔵が話しかける。

 よく見るとフネは驚いた顔。

 顔面蒼白で脂汗を流している。


 ドシャ


 力無く、前のめりで倒れてしまったフネ。

 そんな様子を見て、パラソルの下で観覧していたげんから声がかかる。


「ばーーーちゃーーんっっ!

 どないしたんやーーーっっ!?

 またイッたんかーーーっっ!?」


「フネさん、持病なぞ持っていたのか?」


 源蔵は最初、持病を疑う。


「ちゃうわい…………

 コシじゃ……

 コシ、イッてもた……」


 砂浜に顔を埋めながら、小声でギックリ腰を訴えるフネ。


「しょうがねーなー。

 この試合もか。

 はーい試合終了ー。

 相手チーム続行不可能により蓮ちゃんとつづりチームの勝ちー」


 〇第二試合


 蓮・つづりチームの勝利


 ビーチバレーも一区切りつき、観覧用に設置された大型パラソルの下で小休憩を取る一同。


「痛っ!

 イタタタッ!

 げんッッ!

 ワレ、触るんやないッッ!」


 げんがコートからフネを救い出し、ようやく日陰に寝かせる事が出来た。


「トシの癖に無理するからやバーちゃん。

 今日はシップ持って来とらんのか?」


 言っているはフネが自身で調合し、作成した腰用特製湿布薬の事である。

 激しい運動をする時は常に持ち歩いてるのだが、海女作業は穏やかな若狭湾内で入り慣れたポイントだったから今日は持って来なかったのだ。


「やかましい……

 まさかびーちばれーするなんて思わんやろ……

 イタタタッ!」


「ねえ……

 竜司のお爺さん……」


 所変わって今度は蓮が源蔵に話しかける。

 このツーショットは珍しい。


「ん?

 どうした嬢ちゃん」


「あの……

 ママの昔ってどんな人だったの?」


「ん?

 あかざ嬢ちゃんか?

 そうさのう……

 最初逢った時はずっとこっちを睨んでおったのう……」


 容易に想像できてしまう蓮。


「タハハ……

 でもどうしてお爺さんと知り合う事になったんですか……?」


「儂は昔、土木関連の仕事をしておってな……

 発掘作業で発破するからとよくかり出されておったんじゃ……

 どういう繋がりかは知らぬが知り合いの博士の後ろにくっついてよく来ておったわ……」


 ここで蓮は名古屋のカンファレンスを思い出した。


「そういえばママが言ってました……

 お爺さんの発破は芸術だって……」


 そう言われた源蔵は少し驚いた後、頬を赤らめる。


「あのあかざ嬢ちゃんがそんな事を……

 フフン……

 まあ悪い気はせんわい……」


「そんなに驚く事ですか?

 ウチのママは感動したものには正直に感動したって言う人ですよ?」


「そうなのか?

 儂が発破するとやれやかましいだのやれ煙たいだのずっと文句ばっかり言っておったのにのう……

 いつしか呼ばれなくなって儂が引退して会っておらんが……

 懐かしいわい。

 相変わらず周りを睨んでおるのか?」


「いえっ!

 今はそんなにっ……」


「ハッハッ。

 “そんなに”と言う事はまだ時々は睨んどるのか。

 儂が会った時も妙な迫力を持っててのう。

 あかざ嬢ちゃんはグレておったのか?」


「う……

 ええ……

 まぁ……

 高一の後半ぐらいまでですけど……」


「ハッハ。

 通りで。

 自己紹介も……

 チャーッスッ新崎藜しんざきあかざッス。

 アタイ、ガチで考古学でテッペン取ろうって考えてるんでぇー……

 そこんとこ夜露死苦ヨロシクッッ!

 じゃったからのう……」


 また容易に想像できてしまう蓮。


「タハハ……」


 苦笑いしか出来ない。


「それにしても嬢ちゃんの立ち振る舞いを見ると、それなりに母親やっとる様じゃな」


 それを聞いた蓮は少し顔が曇る。


「ええ……

 まあ……」


「何じゃ?

 浮かない顔をしおって」


「いえ……

 ママ……

 家に居る時があんまり無くて……」


「そうか…………

 家庭の内情も知らずに無責任な事を言ってしまったの……

 許せ」


 源蔵がぺこりと頭を下げる。


「あぁっ!

 いえいえっ!

 気にしていませんから頭を上げて下さいっっ!」


「嬢ちゃん……

 名を教えてくれんか……?」


「蓮です。

 新崎蓮しんざきれん


「”れん”か……

 漢字ではどう書くんじゃ?」


「蓮の花の蓮です」


「フム……

 蓮の花でれんか……

 良い名前では無いか……

 れんという名前の意味を知っておるか?」


「いえ……」


「清らかに生きると言う意味があってな……

 花言葉も“清らかな心”、“神聖”……

 これは儂の勝手な推測じゃが、あかざ嬢ちゃんは自分がグレていた事を後悔していたんじゃ無いかのう?

 だかられんちゃんよ……

 君には清らかに育って欲しい……

 そんな願いが込めれれてるんじゃないじゃろうか……?」


「そ……

 そうかな……?」


「そうじゃとも……

 子供を愛さない親はおらん……」


「うん……

 ありがとうございます……

 竜司のお爺さん……」


「ウム…………

 竜司とも仲良くしてやってくれ……」


「はい」


「はい……

 おまちどうさん……」


 そこへ昼食を摂っていた十七とうな達が戻って来る。


「おう、おかえり母さん」


 豪輝が出迎える。

 ゆっくりと周りを眺め、状況確認する十七とうな


「あら…………?

 ビーチバレーはもうおわたんかいな……?」


「まあ一通りな。

 みんな今は休憩中だよ」


 そしてまず十七とうなが眼にしたのは、団扇をゆっくり仰いでいる暮葉の姿と暮葉の膝で目下気絶中の竜司の姿。

 暮葉が置いたのだろうか口元に濡れたタオルが置いてある。


「ふむ…………

 暮葉さん……

 竜司さん……

 どないしはったんや……?」


「あっ……

 おか……

 十七とうなさん……

 竜司は鼻血を出して気絶してしまったので……」


 言い淀んだのは出発前に義母ははと呼ぶのはまだ早いと言われたからである。


「ふむ……

 鼻血の処置としては……

 八十点やなあ……

 出来れば膝枕や無しに顔を真っすぐ向かせて血を出させた方がええんやけどな……

 まあ気絶しとんのやったらしゃあないなあ……

 竜司さんはお願いしてええんかいな?」


 これは十七とうながある程度、暮葉を信頼しているからである。

 暮葉もそれを感覚的に察して、少し顔が明るくなる。


「はいっ!」


 元気な返事。


「ほなよろしゅうなあ……

 ほいで、そこの御婆はんはどなたですのん?

 んで、どないしたんや?

 倒れはって……」


「あっ

 竜司のオカンっ!

 このバーちゃんはウチのバーちゃんですわ……

 トシやのにイキッてビーチバレーなんかしよるから腰イわしたんや」


「ふむ……

 見た所……

 ギックリ腰みたいやけど……

 この御婆はん……

 竜河岸かいな……?」


「“元”ですけどな」


「なら……

 魔力耐性もあるか……

 ほんならうちが処置したろか?」


「え?

 処置って何か出来るんでっかっ!?

 竜司のオカンッ!」


「ンフフフゥ~~……

 げんくぅん……

 十七とうなさんは世界中を股に掛ける名医なんデスヨォ……

 私の自慢の妻デスゥ……」


 滋竜しりゅうが代わりに答える。

 それを聞いた十七とうなの頬が紅くなる。


「いややわぁ……

 滋竜しりゅうさん……

 自慢の妻やなんて……

 うち……

 照れるやないかぁ……」


 両手で頬を押さえながらクネクネする十七とうな


 揉めると周りの被害が甚大になるが、何て事は無い。

 この夫婦、普段は只のおしどり夫婦である。


「ほんだら……

 一仕事しよか……

 ダイナはん」


【おう】


 うつ伏せにの転がっているフネを抱きかかえるダイナ。


「イタタタァッッッッ!!」


 フネが絶叫。

 無理もない。

 ギックリ腰になったのはついさっきである。


「あぁ~……

 痛いなぁ……

 痛いなぁ……

 でももうちょい我慢してなぁ……

 すぐに楽になるさかいに……」


 慣れている感じでフネをなだめる十七とうな

 適当に砂浜に寝かせるダイナ。


「ほな行こか……

 生命の樹ユグドラシル……」


 ゆっくりと砂浜に手を合わせて呟く。


 ギュオオオオオッッッッ!


 フネをぐるりと取り囲む様に太い樹が急激に生え始める。


 ギュギュッッ!

 ギュギュギュギュギュッッッ!!


 木々の間を埋める様に枝や蔓が伸びて行く。

 木々の締まる音が響く。


「な……

 何やコレ……?」


「何……

 これ……?」


 一瞬で出来た木製のドーム。

 げんも蓮も驚いている。

 この二人は気絶していて十七とうなのスキルは見ていないのだ。


「あぁ……

 二人とも見るのは初めてか。

 これが母さんのスキル生命の樹ユグドラシルだ」


「ほなちょっと一仕事してくるわぁ……」


 ほのぼのそう言いながら木製ドーム内へ入る十七とうな


「イタッ!

 イタタタタタァッ!」


 中からフネの絶叫が聞こえる。

 しばらく待っていると出て来る十七とうな


【姫、どうだった?】


「うん……

 思った通り筋筋膜性やねえ……

 内臓体制反射やったら切らなアカンかったけど……

 これやったら針で何とかなりそうやわぁ……」


 今、十七とうなが中で行ったのは診断と治療方針決定の為である。


【おう、針か】


 ダイナが亜空間を出す。

 無言で中に手を入れる十七とうな


 出てきたのは長細い袋が連なって付いている太く白い帯。

 袋の中には針がたくさん入っている。


 シュルンッッ


 白い帯を右手に巻き取り、再びドーム内に入る十七とうな


 中は闇に包まれている。

 が、十七とうなからしたら問題無い。


生命の樹ユグドラシル


 十七とうなが呟くと、じんわりドーム内が明るくなっていく。

 やがて電灯がついた室内程の明るさになる。


 十七とうなが産み出したのはヒカリゴケ。

 ヒカリゴケを外から細かい隙間へ。

 そして内壁びっしりと培養した。


 ヒカリゴケは自身で発光している訳では無く外から光を取り込みレンズ状細胞が反射して光を発するのだが、通常だとせいぜい五~八ルクス。


 とても手術を行える光量は得られないのだが、十七とうなが生成した魔力で機能増強させたヒカリゴケ。


 ある程度の量を超えると光量は優に千ルクスを超える。

 ちなみに千ルクスとは蛍光灯の明かりぐらいである。


「まあ今日は切る訳やあらへんしこんなもんでええやろ……

 細菌指令バクテリア・コマンド……」


 十七とうなが呟く。

 見た目的には特に変化は無い。

 だがドーム内は完全無菌状態になったのだ。

 範囲としては十七とうなの足元からヒカリゴケが付着しているギリギリのラインまで。


 ■細菌指令バクテリア・コマンド


 生命の樹ユグドラシルの応用スキル。

 指定範囲内を無菌状態に変化させる。

 逆に細菌を超急性培養させる事も可能。


「ほな……

 行こか」


 十七とうなが針を持って構える。

 目線は巨大な切株に寝かされているフネの腰。

 既に海人着はめくって素肌を晒している。


「ふむ……

 炎症を起こしてんのは……

 腸腰筋と……

 腰方形筋……

 の二つやねえ……

 なら……」


 ストッ

 ストッ

 ストッ

 スッ


 合計四か所に長い針を突き刺す。

 もちろんこの針には魔力が込められている。


「ほいで……」


 十七とうなが左手をかざす。

 手には魔力が込められている。


「ア~~……

 温いわ~~……

 ええわ~~……

 ア~~……」


 フネがじんわり伝わる温もりに愉悦の声を上げる。

 これは十七とうなが魔力を照射して温めているのだ。

 しばらくその姿勢のまま動かない十七とうな


 五分後


「ホイ……

 終わったで……

 起きてみんさいや……

 御婆はん……」


「エッ!?

 もう終わったんかいなッッ!?

 こないに早く治るなんてワシの漢方でも……」


 ゆっくり力を入れ、四つん這いになるフネ。

 問題無い。


「うふふ……」


 自分の処置が上手く行った事にご満悦な十七とうな


「エッ……!?

 痛ない……

 痛ないデェッ!?」


 そのまま切株から降りるフネ


 ストッ


 普通に立っている。

 ついさっきまで腰が痛いと叫び声をあげていたとは思えない。


「あくまでも応急に近い処置やから無理はアカンよ……

 痛覚鈍麻のツボが効いとるだけやからなあ……

 炎症が消える様魔力も送っとるけど……

 肝心なんは本人の回復力やからなあ……

 見た所、結構トシいってはるやろし……

 この旅行ぐらいは持つやろけど……

 帰ったらきちんと治療せなアカンよ……」


「ホーッ…………

 所でワレ誰や?」


 十七とうなとは初対面のフネ。

 それにしても無礼な聞き方である。


「お初にお目にかかります……

 うちは皇十七すめらぎとうな……

 竜司の母で御座います……

 医者をやっとります……」


 だが十七とうなは微笑を崩さない。

 年長者への礼儀も怠らない。


「ホホーーッ!?

 竜司のオカンかっ!?

 しかし若いのう……

 先生いくつや……?」


「うふふ……

 うち、名前は十七とうなですが……

 今年五十になりますわぁ……」


 それを聞いたフネは絶句する。

 そしてすぐさま絶望が襲う。


 十七とうなの肌のきめ細やかさ、ハリは五十代のソレでは無く、どうみても三十。

 いや、下手したら二十代と思わせるモノだった。


 かたや自身はもはやほうれい線がどれかも判別できない程顔は皺枯れ、歯も弱く、世間の九十よりかは気持ち若いかな?

 と疑問形で締めくくられてしまう。


 そんな自身と十七とうなと比べてしまったのだ。


「ほら……

 御婆はん……

 何をしとりますのや……

 病気が治った時にまずする事は……

 家族を安心させてやる事でっしゃろ……?」


「ヒョッ……

 そやな……

 ほな行こかい……」


 十七とうなとフネはドーム外へ出る。


「バーちゃんッッ!?」


 普通に歩いて出てきた姿に驚いているげん

 側へ駆け寄る。


「ヒョヒョヒョッ!

 心配かけたのうげん

 もう大丈夫や」


「マジでか……

 バーちゃん、あーなったら二、三日はイタイイタイ言うてんのに……

 ホンマにバーちゃんなんか……?」


 余りの回復ぶりに疑い始めるげん


 ギュゥッッ!


 無言で右拳を握るげん

 ゆっくり拳を引く。


 ビュンッッ!


 思い切り上から撃ち降ろす。

 右ストレート。


 げんの大きな右拳がフネを襲う。

 が、フネは全く動じず。


「ヒョッ」


 流れる小枝のように体勢をずらし、的確に左手で右手首を取り、後ろに引く。

 ストレートの突進力を利用し、げんのバランスを崩す。


 大きく傾くげんの巨体。

 顎に右手を合わせ、身体を捻りながら、げんの巨体を砂浜に叩き付ける。


 ズシャァァァッッ!


「カハッ……!」


 下が柔らかい砂浜とは言え、全く受け身が取れない形で投げられたげん

 一瞬呼吸が止まる。

 これが合気である。


「ヒョヒョヒョッ!

 どうやげん…………

 間違いないやろがい……」


「あぁ……

 間違いないわ……

 バーちゃんやわ……

 熱……」


 背中に熱せられた砂の熱さを感じだげんはゆっくり起き上がり、顔を左右に振る。


「びっくりした……

 フネさんって……

 強かったのね……」


 蓮がフネの立ち振る舞いを見て、驚いている。


「ヒョヒョヒョッッ!

 蓮よっ……

 ワシを舐めんなや……」


「御婆はん……

 あんま無理したらアカンゆうたとこやろ……

 そない激し動いたらまた簡単にイワしますよ……」


 十七とうながフネをたしなめる。


「ヒョヒョヒョッ……

 こんなん動いたうちに入らんわい。

 心配すなや先生」


「まぁよろしおす……

 暮葉さん……

 竜司さん……

 どないでっか……?」


 気絶したと聞いていた竜司を案ずる十七とうな

 暮葉は依然として膝に竜司の頭を乗せ、団扇をゆっくり扇いでいる。

 時折優しく頭を撫でる。


 この様子から漂ってくる圧倒的母性は十七とうなも感じていた。


「あ……

 十七とうなさん……

 まだ竜司は起きないんです……」


「もう十分冷えたやろから、口元のタオルはとってもええよ……」


 暮葉がゆっくり竜司の口元のタオルを取る。

 現れたのは暮葉の膝の柔らかさに包まれ、幸せそうに口元を緩めながら眠っている竜司の顔。


「うふふ……

 竜司ってば幸せそうな顔で眠ってる……」


 竜司の顔を見ながら、優しく微笑む暮葉。

 さらりと頭を撫で、団扇を扇ぐ手も休める気配がない。


「……九十五点……」


 溢れ出る圧倒的母性に十七とうなも高得点を付けざるを得ない。

 だが、何となく悔しいのでわざと聞こえないぐらいの小声で呟く十七とうな


「え?

 何ですか?

 十七とうなさん」


「何でもありゃしまへん……

 ダイナはん……」


【ん?

 何だ姫。

 亜空間か?】


 ドスドス


 ダイナが寄って来て亜空間を開く。

 十七とうながダイナを呼びつける時は大抵魔力補給か亜空間である。


 ダイナも慣れたもので呼びつけられたらすぐに亜空間を開くようになっている。

 中に手を入れる十七とうな


 取り出したのは瞬間冷却剤二つ。

 すぐさまパッケージを開け、軽く叩く。


「豪輝さん……

 すんまへんけど、ハンドタオル二つ取ってくれへんか……?」


「おう、ほらよ母さん」


 ハンドタオルを二つ、十七とうなに向かって投げる豪輝。


「……あんがとさん」


 受け取った十七とうなは既に冷え始めた冷却剤をハンドタオルで包んでいく。

 物凄く慣れた自然な手つきに、キョトン顔で見つめてしまう暮葉。


「ほい……

 暮葉さん……

 竜司さんの体温下げさせたいんやったら……

 この冷却剤を脇の下に挟んだったらええで……」


「あっ……

 ありがとうございますっっ!」


 十七とうなの取った行動が意外だったのか不必要に大きな声でお礼を言ってしまう暮葉。


「さぁ……

 色々終わったし……

 うちらも楽しみまひょか……

 滋竜しりゅうさん……」


「ンフフフゥ~~……

 ご苦労様デシタァ十七とうなさん……

 それじゃあビーチバレーやりましょうカネェ……」


「ヘイッ!

 負けませんぜっ!

 船長キャプテンッッ!」


「やりましょうやっっ!

 姐さんっっ!」


 元気に応答するケイシートジャック。

 お互い自コートに散って行く。


 〇第三試合


 滋竜・十七とうなVSケイシー・ジャック


 サーブ権はジャンケンの末、滋竜・十七とうなチームへ。

 すると滋竜が妙な行動を取り出す。


 ビン

 ビン


 掴んだ両手でボールを外側に引っ張り出した。


「ンフフフゥ~~……

 豪輝ィ……

 このボールは……?」


「ん?

 そんな事言われても解んねえよ。

 だいいち魔力強度強めに創ってるから、球自体も大分硬てぇぞ。

 そんなもん伸ばせるって一体どこのバケモ……」


 豪輝の言は途中で止まる。


 ビヨンッッ!

 ビヨーーンッッ!


 それは滋竜に掴まれたボールが大きく伸び始めたからだ。

 その様を見て絶句したのだ。


「ハッハァーーッ!

 ヨク伸びますネェこのボールゥ……

 これだけ伸びても割れる気配も見せマセン……

 さすが豪輝の構成変化コンスティテューションですネェ……

 凄いデスゥ……」


 いやいやそれを伸ばせるお前の方が凄いから


 心中でそう思う豪輝なのであった。


 ビヨーーーンッ!

 ビヨーーーンッ!


 スパァァンッッ!


 二、三回伸ばした後、右手を離し左手でボールを受け止める。

 勢いよく打ち付けられた反発音が響く。


「ハァイ……

 準備OKですゥ……

 ケイシーッ!

 ジャックッッ!

 行きまスヨーーッッ!

 準備は良いでスカァ……?」


「はぁいっっ!

 いいっすよーっっ!

 船長キャプテンッッ!」


「OKでぇすっ!

 船長キャプテンっ!」


 双方準備完了。


「手加減しませンヨォォォォォッッッ…………!

 フンッッッッ!」


 滋竜が気合を入れ、力を込める。


 バンッッッ!


 弾ける音がしたと思うと滋竜の両腕が更に太くなる。

 先は電柱ぐらいの太さだったのが巨大な樹ぐらいの太さにまで膨れ上がる。

 膨れ上がったゴツい手でボールを思い切り引っ張る。


 ビヨォォォォーーーンッッッ!


 大きく伸びるボール。

 普通のボール大が広げたハンドタオル程の長さにまで伸びる。


「行きますヨォォォッッッ…………!

 ヘァッッ!」


 下側に降ろした手を離す。


 ビュンッッッ!


 物凄い勢いで元のボール大に戻ろうとする力が働く。


 スパァァァァァァァァンッッッッ!


 ボール大に戻った時の巨大な反発力により、音が鳴る。

 産まれた反発力は大きく、滋竜の手から離れる…………

 いや、敢えて離したと言うべきか。


 ギュルギュルギュルギュル


 内部で反発力が暴れ、乱回転をしながら上がるボール。


「ハァッッッ!」


 バンッッッッッ!


 滋竜が思い切り砂浜を蹴る。

 舞い上がる砂塵。

 高く跳ぶ滋竜の身体。


 柔軟でしなやかな脊柱起立筋、腹直筋、腹斜筋をフルで使い、思い切り後ろへ身体を反らせる。


 身体に生まれる活火山の様なエネルギー。

 乱回転を続けるボールを滋竜の目が捉えた。


 大きく右腕を後ろへ引く。

 産まれた巨大なエネルギーが脊柱起立筋を駆け上り、広背筋で倍化。


 ギュゥゥゥッッ!


 突き抜けるエネルギーに上腕二頭筋と上腕三頭筋が喜びの軋みを上げる。

 全てのエネルギーが右掌に集約。


「ヘヤァァァッァァァァァッッッッッ!!」


 ドコォォォォォォォォォォォォォォンッッッ!


 乱回転を続けるボールが滋竜の右掌と接触。


 巨大な衝撃音。

 ボールは圧倒的強制力により突き進む方向を定められる。

 目指すは敵コート。


 ギャリギャリギャリギャリギャリィィィィッッッ!


 元々乱回転がかけられている所に巨大なエネルギーが加わり、更に乱回転が大きく、激しくなる。


「キタキタキタキタキタキタキタキタキタキタキタァァァァァッァァッッッッッ!」


 何処かのドイツ軍将校の様な叫び声を上げるジャック。


「ジャックッッッッ!

 下がれェッッッ!

 俺が受けるゥゥゥッッッ!」


 ケイシーが叫ぶ。


 素早くスイッチ。

 位置変更。

 アンダーハンドレシーブの構え。


 ドコォォォォォォンッッッ!!


 激しい接触音。


「ウォォォォォォォォォッッッ!!」


 強烈なサーブに対するケイシーの叫び声。

 ここで滋竜の産み出した乱回転の意味が解る。


 ギャギャギャギャギャギャギャァァァッッッ!


 ボールが物凄い勢いでケイシーの腕を駈け上がり始めた。


「何だぁぁっぁぁぁっっっ!」


 予想だにしない出来事に驚愕の声を発するケイシー。


 バチィィィィィィンッッッ!


「ゴハァッッッ!」


 一瞬で駆け上がったボールがケイシーの頬まで上がった段階で外側へ弾け飛ぶ。

 強烈なパンチで殴られた様に血を吐きながら吹き飛ぶケイシー。


 ストッ


 ボールは無情にも砂浜へ落下。

 ジャックも余りの出来事に微動だに出来ず。


「はーい1対0ー」


 今回も豪輝がスコアラー。

 馴れているのか肝が据わっているのか今の出来事を見ても動じていない。


「な……

 何だぁ……

 今の球はァ……」


 ケイシーは口元に垂れた血を拭いながらゆっくり立ち上がる。

 ニヤリと怪しく笑う滋竜。


「ンフフフゥ~~……

 これはジェノサイド・スクリューですヨォ……

 まさかビーチバレーでも出来るとは思ってませんデシタァ……」


 ■ジェノサイド・スクリュー


 某TVアニメ“疾風!アイアンリーガー”で登場する敵キャラ、ゴールドアームが放つ殺人投法。

 モーションは滋竜とほぼ同じ。

 ボールを伸ばして投げる。

 打者のバットに当たった瞬間バットを駆け上がり打者を攻撃する。

 滋竜はたまたま中東で見かけたアニメで登場話を見てからずっとやりたいと思っていた。

 なお前述の単語などから解る様に、この“疾風!アイアンリーガー”は、ほぼ野球のアニメである。


「ンフフフゥ~~……

 では続いて行きまスヨォ~~……」


 ドコォォォォォォォォォォォォォォンッッッ!


 再び上空から放たれるジェノサイド・スクリュー。

 周りに響く激しい衝撃音。


 ギャギャギャギャギャギャギャァァァ!!


 激しく乱回転しながらボールが敵コートに襲い掛かる。


 ケイシーも手の内は把握。

 対策はある。

 アンダーハンドレシーブの構え。


 ドコォォォォォォンッッッ!


 激しい接触音。


 ギャリギャリギャリィッ!


 さっきと同じ様にケイシーの腕を駆け上がるボール。

 が、さっきとは違いケイシーの肘裏辺りで失速。

 完全に力を失う。


 パンッ


 こうなっては只のボール。

 容易にトス可能。

 ボールは弓なりにジャックの元へ。


「いけぇぇぇぇっっっ!

 ジャックゥゥゥゥッッッ!」


 ケイシーが叫ぶ。

 既にジャックは跳んでいた。

 ケイシーがレシーブ成功すると信じていたのだ。


 自分のやる事は挙げたトスを最高の状態でスパイクする事。

 予想通りトスを上げたケイシー。


 ボールは最高点まで到着。

 タイミングバッチリ。


「オラァァァッァァァァッッッ!」


 ドコォォォォォォンッッッ!


 ジャックの叫びと共に鋭いスパイクが敵コートの十七とうな目掛けて撃ち込まれる。


 が、鋭いスパイクと言えども所詮は一般人。

 化け物がひしめく竜河岸とは根本的に住んでいる世界が違うのだ。

 と、思いきや更に場は予想を上回る。


「嫌やわぁ~~……

 うち、こんな強い球受けれへ~ん…………

 滋竜さ~~ん……」


 十七とうなが急に猫なで声をあげ、滋竜に抱きついた。


 ザフッッ!


 当然無視されたボールは砂浜に突き刺さる。


「ンフフフゥ~~……

 弱りましたネェ……

 ホラ……

 十七とうなさん……

 ボールはあっちデスヨォ……」


「え~~~……

 どこやの~~…………?

 うち、怖ぁて目ぇ開けれへ~~ん……

 うふふうぅ~~……」


 そう言いながら抱きつき、滋竜の鉄の様な胸板に顔を擦り付けている十七とうな


「いっ……

 1対1……」


 豪輝が若干ひいている。

 無理もない。

 目の前で両親がイチャついているのだから。


「ンフフフゥ~~……

 所でケイシーィ……

 さっき私のジェノサイド・スクリューを受けたのはその六十一“滄海そうかい一粟いちぞく”ですカァ……?」


「はいっ!

 そうっす!

 正直吸収しきれるかは賭けだったんですけど……

 この賭けは俺の勝ちっすねっ!」


 ケイシーがニカッと笑う。

 この二人が言っているのはマヤドー会海洋交渉術その六十一“滄海そうかい一粟いちぞく”の事である。


 ■滄海そうかい一粟いちぞく


 マヤドー会海洋交渉術その六十一に数えられる変態技。

 もうどんな作用でそうなるかは筆者も不明ではあるが、受けた衝撃を吸収する技。

 吸収できる衝撃は許容量があるらしい。


「ンフフフゥ~~……

 見事ですゥ……

 これは面白くなりソウデスヨォ……」


 試合は終盤まで進み、スコアはどうなったかと言うと


 1対11


 ケイシー・ジャックチームが大差で勝っている。

 圧倒的大差で負けている滋竜・十七とうなチーム。


 理由は簡単。

 簡単というか一緒。


 滋竜のジェノサイド・スクリューを滄海そうかい一粟いちげきで受け、それをジャックがスパイク。

 十七とうなが滋竜に抱きつきイチャつく。


 この繰り返しで試合が進む。

 何とも大味でつまらない試合になってしまった。


「ンフフフゥ~~……

 十七とうなさん……

 あと一点で負けてしまいマスヨォ……

 子供が見ている手前ェ……

 負けるのは余り宜しくありませんネェ……

 勝ってェ……

 見せつけてやりまショウ……

 我々がァッッ!

 Greatッッ!

 Parentsだって事をォォ……」


「えぇ~~……

 しゃあないなぁ~~……

 あとでいっぱい甘えさせるんやでっ…………

 …………ほな本気出さななぁ~~……」


 前半の猫なで声が嘘の様に最後の一言は低く重くドスが効いている。

 十七とうなと滋竜の目が紅く光る。


「ぬおっ……」


「ぐぅうっ……」


 二人の出す圧倒的迫力に飲まれそうになるケイシーとジャック。


「ケイシーッッ!

 何ビビってやがんだッッ!

 後一点じゃねぇかッ!」


 ガタガタガタガタ


 そう言うジャックの両膝は震えている。


「おっ……!

 おう……

 やってやるぜっっ!!」


 精一杯自分を鼓舞するケイシー。


 だがこの二人は改めて思い知る事になる。


 海賊たちがひしめく超危険な中東の海を渡る巨大タンカー高島の船長を三十年続けると言う事がどういう事なのかを。


 戦闘状態になれば銃弾が網目の様に飛び交う中で三十年常勝無敗と言う事がどういう事なのかを。


 そしてその船長を夫に持つ人物がどういう人間なのかを。


 現在サーブ権はケイシー・ジャック側。


 ダッッ!


 ケイシーは砂浜を蹴り、高くジャンプ。

 上体を限界まで反らし、力を溜める。


 ドコンッッ!


 身体中のエネルギーをボールに込めた渾身のサーブ。

 十七とうな目掛けて突き進む。

 充分な威力。


 ……なのだがそれはあくまでも一般人の話。


「滋竜さん……

 このボールはうちが受けるわぁ……

 ホイ」


 パンッ


 十七とうなはアンダーハンドレシーブの構えで難なく受ける。

 弓なりにボールが滋竜の元へ。


「ンフフフゥ~~……

 ナイスボール……

 さすが私の妻ァ……」


「いややわぁ~~……

 さすがやなんてぇ~~

 うち、照れてしまうやないかぁ~~」


 赤らめた頬を両手で押さえながら、乙女の様に照れる十七とうな


「フンッッッ!」


 バンッッッ!


 滋竜の気合と共に瞬時に倍加する両脚。

 大樹の幹を思わせる太い腰から伸びるそれはまるで二本のボーリングマシンハンマーの様。


 ゆっくりしゃがみ、力を溜め、一気に爆発。


 バァァァァァァンッッッッ!


 巨大な衝撃音。


 吹き荒れる砂塵。

 瞬時に空を駆ける巨大な肉ダルマ。

 ボールが真横の位置まで到達。


 鉄の様に鍛え抜かれた腹直筋、外腹斜筋。

 しなやかで柔軟な広背筋、脊柱起立筋等が唸りを上げる。


 ターボエンジンの様に凄まじく回転する上半身。

 猛烈な勢いに乗ってボールに右拳が接触。


 ズバァァァァァァァァァァンッッッッ!


 雷鳴の様な轟音。


 キュンッッッ!


 閃光が敵コートに突き刺さる。

 一歩も動けないケイシーとジャック。


 ドッカァァァァァァァァァンッッッ!!


 着弾点を中心に嵐の様に舞い上がる砂塵。


「ウワァァァッッッ!」


「ヌァァァァァァッッ!」


 砂煙の中、響くケイシーとジャックの呻き声。


 ストッ


 滋竜が難なく着地


「ンフフフゥ~~……

 上々……」


「素敵ぃ……

 素敵やわぁ滋竜さん……」


 頬を赤らめ、ウットリしながら見つめる十七とうな


「フンッッ!

 フロント・ダブル・バイセーーーップスッッ!」


 意気揚々とポーズを決める滋竜。


「きゃーーっ……!

 たまらんわぁ……

 この胸板……」


 歓喜の声を上げ滋竜の胸板に手を合わせる十七とうな


「これでサーブ権はコチラに移動デスネェ……

 オヤァ……

 どうしましタカァ……

 ケイシー……

 ジャックゥ……

 まだまだ試合はこれからデスヨォ……」


 滋竜の目が怪しく光る。


「グッ……

 グウゥゥッッッッ……」


「ウッッ……

 ウウゥゥゥ……!」


 激しく砂浜に叩き付けれれ苦悶の表情を浮かべる。

 ゆっくり起き上がるケイシーとジャック。


「オイ……

 ジャック……

 俺は“筋大”行くぞ……

 アレがねえと多分跳ね返せネェ……」


「了解だ……

 ケイシー……

 多用と分配には注意しろよぉ……」


「あぁ……

 わかっている……」


 何やら不穏な言葉を発するケイシー。


「ンフフフゥ~~……

 準備はOKデスネェ……

 では行きマスヨォッッッ……!」


 ドッカァァァァッァァァァァァァァンッッッ!


 轟音と共にまた上空から滋竜の天災にも似た苛烈な閃光サーブが放たれる。

 フォームとしては概ね先のスパイクと同じ。

 ボールの真横まで跳び、大回転しながら右拳で飛ばす。

 

 そもそもが間違っている。

 サーブやスパイクは頭上にあるボールを弧を描く手で、はたく様に打つものである。


 こんな変態的な打ち方が出来るのも皇滋竜が規格外の人物だからと言う事である。


 ボールは真っすぐ敵コートを目指す。


「マヤドー会海洋交渉術その四十二ッッ!

 筋肉大移動ォォォォォォォッッッ!」


 ギュァッッ!


 ケイシーの身体に変化が起きる。

 太腿、腰辺りが一気にガリガリになり、代わりに下腿部から下が五周りほど大きくなる。


 同様に大胸部、首部、上腕部の筋肉も瞬時にガリガリ。

 同時に前腕部が五周りほど大きくなる。


 その様子はほうれん草を食べたポパイを想像して頂くと解りやすいだろう。

 ただケイシーの場合は筋肉を集中させた場所とさせて無い場所の差が激しく、化け物じみてはいるが。


 ■筋肉大移動


 マヤドー会海洋交渉術その四十二に数えられる。

 ケイシーが得意とする。

 もはや作用がどうとかそういうレベルを超えている変態技。

 要するに身体の筋肉を集め、特定個所に集中させる。

 略語は筋大。


 参照:新沢基栄著 ハイスクール奇面組 一堂零


 ドコォォォォォォォォォォォォンッッッッ!


「ウオオオオオッッッッ!」


 肥大したケイシーの両腕とボールが接触。

 ケイシーの叫び声が響く。

 巨大な接触音。


 本作をお読みの読者ならお気づきかも知れないがここで筋肉大移動を使うのは愚策である。


 グキィィィィッッッ!


 ゴキャァァァァッッ!


 衝撃音に続いて響く、骨が外れた音。

 おわかりだろうか?


 確かに筋肉大移動は物凄い変態技ではあるが、強烈な攻撃に真っ向から立ち向かうには決して向いていない。


 移動した事により吸い上げられた他の部分の強度が恐ろしく低下しているのだ。

 攻撃を受けると言う事は接触・接地面だけではない。

 身体全体に衝撃は行くものである。


 今回の正しい解としては蓮の様に力を反らせば良かったのだ。


 ドシャァ……


 完全に白眼を剥き、声も発せず大の字に倒れ込むケイシー。


「ケイシーィィィィィィィッッッッ!!」


 友の身を案ずるジャックの声が響く。

 ボールは?

 ボールはどうなったのか。


 ポーン


 弓なりに大きく弾むボール。

 滋竜の閃光サーブをレシーブ成功。

 ケイシーの気合が勝ったのだ。


 ケイシーの気絶。

 これは今のプレーがこの試合のラストプレーになる事を意味する。

 それはジャックも重々承知。


 ケイシーが見事に戦死したのだ(いや死んではいないが)。

 ジャックの心は燃えていた。

 ケイシーの漢気に応えねばと。


「マヤドー会海洋交渉術その四十五ッッッ!

 滄海桑田そうかいそうでんッッッッ!!」


 ジャックが叫ぶ。


 ニュルゥゥゥゥゥゥゥゥンッッッッ!


 と同時にジャックの右腕が天へ向かって伸びて行く。

 奇人変人大賞も真っ青の現象。

 十メートル程伸びた手が浮いていたボールに触れる。


「オラァァァァァァァッッッ!」


 グラァァァァァァッッ!


 高く伸びたジャックの右腕が大きく傾く。

 そのままボールごと敵コートに倒れ込む気なのだ。


 おそらくジャックは敵コート接触寸前で手を離すつもり。

 ”ボールを持ってはいない。あれはスパイクのモーションだ”と言い張る気なのだ。

 もはやビーチバレーでも何でもない。


「ヨガァァァァァッァァァ!」


 言ってはならない一言を叫んでしまうジャック。


「ムムッ……!?

 滄桑そうそうですカァ……

 やりマスネェ……」


 ■滄海桑田そうかいそうでん


 マヤドー会海洋交渉術その四十五に数えられる技。

 ジャックが得意とする。

 ここまで来ると筆者も説明するのが馬鹿馬鹿しく思えてくる変態技。

 要は四肢を自分の意のままの伸ばす事が出来る。

 何故こんな技があるのかと言うとヨガの技法を取り入れてるからとか。

 略称は滄桑そうそう


 参照:株式会社カプコン作 ストリートファイターⅡ ダルシム


「ええよ……

 滋竜さん……

 あの子の考えてる事わかりましたから……

 うちがやりますわぁ……」


「ンフフフゥ~~……

 ソウデスカァ……?

 ではお願いしまスゥ……」


「はいな…………

 発動アクティベート……」


 ッッコォォーーーーーンッッッ!


 周りに響く竹の音。


「なっ……

 何やッ……?

 今の音……

 まさか竜司のオカンも魔力注入インジェクト使えるんでっかッッ!?」


 突然の音に驚くげん


「あぁ……

 母さんも魔力注入インジェクト使いだ……

 それにしても何の音だ……

 これ……」


 豪輝も十七とうな魔力注入インジェクトを見るのは幼い頃以来の為、記憶が定かではない。


 十七とうな発動アクティベートの発動音。

 それは添水そうずの音。


 一般的には鹿威ししおどしと言った方が解りやすいか。

 添水そうずの起源は京都の詩仙堂が発祥とされる。

 京女の十七とうならしい発動音である。


「ヨガァァァァァァッッッ!」


 まだ言ってならない事を叫んでいるジャック。

 グングン傾いてくる。

 振り下ろされる伸びきった腕。


 グンッッ!


 ネットに引っかかった。


「ヨガッ!?」


 ジャックもコレは予想していなかったらしく戸惑いの声を上げる。

 だが、これが功を奏する。

 支点と作用点の距離が短くなった為、振り下ろされるスピードが倍加する。


 グォォォォォォォッッ!


 振り下ろされるジャックの腕。

 着弾迄あと一メートルを切った。


 だが微動だにしない十七とうな

 微笑みを携え、ジャックの伸びきった腕が砂浜に着くのを眺めている。


 着弾迄あと三十センチを切った。


「勝ったァァァァァァァッッッ!」


 ジャックの勝利の雄たけびが響く。

 着弾迄三十センチを切ったのだ。

 勝利を確信してもおかしくない。


「うふふ……

 あんさん……

 甘いで……」


 十七とうなの優しい声が響く。


 だが声を発した場所がさっき居た場所ではない。

 既に十七とうなは着弾点の側まで来ていた。


 無音。


 全く音がしなかった。

 げんの縮地ですら空気を切り裂く音や、大地を蹴る音はすると言うのに。


 全く挙動音をさせずに着弾点側まで移動していた十七とうな

 驚異の素早さである。


 だが後三十センチを切っているのである。

 側まで来たとしても手の動きが間に合う訳が無い。


 ……と、誰もが思う所ではある。

 が、現実は違った。


 スパンッッッッ!


 勢いのある軽い音。

 ボールが舞い上がった。


「へ…………?」


 ジャックが唖然とした顔を見せる。

 一瞬何が起きたか解らない様な顔。


「はぁ~~い……

 滋竜さん……

 行ったでぇ~~」


 既に滋竜は跳んでいた。

 そこはさすがおしどり夫婦である。


「アリガトウゴザイマスゥゥゥ………………

 ヘヤァァァァッァァァァッッッ!」


 ドコォォォォォォォォォォォォン!


 滋竜の強烈なスパイク。

 敵コートに突き刺さる。


「ハイ…………

 試合終了……

 スコア上は2対11だが……

 相手チーム続行不能により……

 滋竜・十七とうなチームの勝ち……」


 ヤレヤレと言った表情で試合終了を告げる豪輝。


「あぁ~~……

 ええ汗掻かしてもろたわぁ~~……」


 ズシン

 ズシン


 滋竜の巨大な右腕に腰掛ける十七とうな

 皇夫婦、休憩所に帰還。


「なぁ……

 竜司のオトン……

 あの人らどうすんの……?」


 辟易とした表情をしたげんが指差す先には大の字で失神しているケイシーとダルダルに伸びきった右腕をネットにかけながら呆然としているジャック。

 振り向いた滋竜は部下の現状を確認。


「オヤオヤァァァァァ~~……

 これはいけマセンネェ……

 十七とうなさん……

 もう一仕事お願いしてよろシィデスカァ……?」


 ストッ


 十七とうなを優しく降ろす滋竜。


「うん……

 ええよ……

 あの子、診たったらええんやろ……?」


 十七とうなの細く白い指はケイシーを指差している。


「ハァイ……

 ケイシーはお願いしますネェ……」


「はいな……

 ほなやろか……」


「デハァ……」


 各々散って行く。

 十七とうなはケイシーに。

 滋竜はジャックに。


 ケイシーを見つめる十七とうな

 ケイシーは完全に白眼を剥いている。


「あちゃぁ~~~…………

 こら完全にイッとるなぁ~~……」


 つん

 つん

 ぴと


 しゃがんだ十七とうなはケイシーの身体をつついたり、触れたりしている。

 これは触診だ。


「ふむ……

 ダイナはん」


 ドスドス


【何だ?

 また生命の樹ユグドラシル使うのか?】


 ダイナが側へ寄って来る。


「アホか…………

 この子の症状は脱臼や……

 んなメンドクサイ事出来るかいな……

 ただ箇所が両肩関節と両股関節やねんなあ……

 ようこないな器用な場所脱臼するわ……

 整復するから支えてんか……」


 整復とは脱臼した際の治療法。


 目的は外れた関節を正しい位置に戻す事である。

 一般的には手を引っ張ったり、手術して行う。


【おう、どっちからやるんだ?

 肩か?

 股か?】


「両肩から行こか……」


【わかった。

 どの辺りを持ってればいい?】


「脇から左手入れる感じで頼むわ…………

 うち、力系の魔力注入インジェクトは好かんねんけどな…………

 発動アクティベート……」


 ッッコォォーーーーーンッッ!


 辺りに響く添水そうずの音。


「ほな行くでダイナはん……

 しっかり支えててな……」


【おう】


 ギュゥッッ!


 ダイナが脇に差し入れた右手に力を込める。


「よいっっ……!

 しょぉぉぉぉっっ!」


 思い切り右手を引っ張る十七とうな

 伸びるケイシーの右腕。


「ううっ……」


 失神しているが、痛覚に奔る指令に呻き声を上げるケイシー。


「こんだけ……

 ふっとい腕してると、整復も一苦労やで……」


 ちなみに筋肉大移動は失神した段階で解除されている。


 ゴキィィッッッ!


「ほい……

 これでええ……

 次は左腕やな……

 よいっっしょぉぉぉっっっ!」


 ゴキィィッッッ!


 両肩整復完了。


「次は股関節やな……

 ダイナはん……

 次は腰辺り支えとってな……」


【おう】


 慣れた手つきで次は腰辺りを持つダイナ。

 続いて右太腿を持つ十七とうな


「よいっっしょぉぉぉっっっ!」


 ゴキィィッッッ!


「ふう……

 あとは左股関節やな……」


 十七とうなは続いて左太腿を持つ。

 それに合わせて腰を支える位置を変えるダイナ。


「よいっっしょぉぉぉっっっ!」


 ゴキィィッッッ!


「はい……

 おしまい……

 ほいじゃあダイナはん……」


【おう】


 すぐに亜空間を出す。

 気持ち入り口は大きめだ。

 その中に手を突っ込む十七とうな


 ずるり


 まず出てきたの長方形の大きい

 縦から見ると銀行の地図記号の様な形をしている。

 これは股関節固定具である。


 ケイシーの股に固定具を挟み入れ、手早くベルトを締めて行く。

 再び亜空間に手を突っ込む十七とうな


 次に出てきたのは小手の様な物が付いたベルトが二つ。

 これは肩関節固定具である。


「よいしょ」


 十七とうなは両腕をくの字に曲げ、ベルトについていた小手を装着させる。

 ベルトを肩から回し完璧に固定。

 重症患者の様になったケイシー。


【んでどうすんだ姫?

 こいつあの日陰まで運ぶのか?】


「うん、頼んますわ……

 整復したてやからくれぐれも安静になぁ……」


【おう。

 わかってるぜ】


 静かにケイシーを持ち上げるダイナ。

 粗暴な竜とは思えない程、繊細に運ぶ。


 続いて滋竜。


「ンフフフゥ~~……

 ジャックゥ……

 だから言ったではありマセンカァ……

 滄桑そうそうを使う時ハァ……

 元に戻す事を考えナイトォ……」


船長キャプテン~~~……」


 肩幅が異様にある巨漢が涙目である。

 自身の姿の化物ぶりに絶望したのであろう。


「デハ…………

 元に戻しまショウカァ…………」


 ズルズル

 ズルズル


 滋竜はネットにかかっている伸びに伸びきったジャックの腕を手繰り寄せる。


 ドサドサ


 まるで太い荒縄の様にジャックの側まで持ってくる。


「では行きますヨォ……」


 グッ

 グッ


 側でしゃがんだ滋竜は両手でジャックの右腕の根元を持ちながら少しづつ少しづつ押し込んでいく。


 この滄海桑田そうかいそうでんという変態技。

 自身で操れるのは制限時間がある。


 時間内であれば自在に元に戻せるのだが、リミットを超えるとそのままという大変怖い技なのだ。


 なお制限時間を超えた場合、両手で各部のツボを押さえながら少しづつ押し込めばやがて元に戻る。


 ジャックの場合、脚であれば問題無かったのだが、腕だった為に人の手を借りないと元に戻らないという訳だ。


「ンフフフゥ~~……

 でもジャック……

 さっきの戦いぶり……

 なかなかのイジャーでしタヨォ……」


 ■イジャー


 沖縄語で勇気のある者、度胸のある者の意味。

 マヤドー会海洋交渉術の使い手が勇猛に戦ったおとこに対して贈る言葉である。


船長キャプテン……」


 頬を赤らめ、眼をキラキラさせながらウットリ滋竜を見つめるジャック。

 正直気持ち悪い画である。


「ンフフフゥ~~……

 ジャックゥ……

 今宵……

 私の部…………」


 ドスッッ!


 滋竜が誘い終わらない内に上から出刃包丁が降って来る。

 刃との距離、凡そ二ミリ。


「ヒィェァアァアァッッッ!」


 滋竜が悲鳴を上げて尻もちをつく。

 恐る恐る見上げると般若の様な形相で滋竜を見下ろす十七とうなの姿。


「滋竜さん…………

 私の部…………

 何でんの…………?」


 地獄の怨嗟の様に恐ろしく低い声。

 さきの猫なで声が嘘の様だ。


 ドバッ


 滋竜の身体から冷汗が大量噴出。

 中東によく航海する為、暑さには慣れているはずだが、それだけ妻が怖かったと言う事だ。


「いいいいいっっ……

 嫌ですネェ……

 十七とうなさん……

 じょじょっ!

 冗談に決まってるじゃないでスカァ……」


 それを聞いた十七とうなの顔は普段通りの笑顔に。


「そう……

 ならええんや……

 はよその子の腕……

 戻したりぃな……」


「ハッッッ……!

 ハイィィィィッッ!」


 再びジャックの腕の戻し作業に入る滋竜。

 その後、終始無言だった。

 何故ならずっと十七とうなが見守っていたからだ。(監視)


 こうして嵐の様なビーチバレーは幕を閉じる。


 夏だっ! 水着回だっ! 皇一家の海旅行④へ続く。

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