叔母様




「リランさん。相談があるの。」


突然、叔母様がお部屋にやってきて、何事かと思ったら、まさかの相談。


叔母様から相談なんて、初めてだから、なんかドキドキしますね。


「兄上様には、どう話したら良いのか、分からなくってね。まずは、貴女に相談したいの。」


「ええ、分かりました。わたしで宜しければ、相談に乗りますよ。」


「リランちゃん………ありがとう。」


いつも元気な叔母様からの相談に、わたしは、正直、驚きました。


お父様に見つからないよう、叔母様の部屋で、相談を受けることになりました。







「実は、わたくし、早いうちに、再婚しようと思っていますの。」


「………えっ?再婚!?」


お父様以外の男性が苦手な叔母様が、再婚!?


しかも、プライドが少し高いはずの叔母様が、恥ずかしくなったのか、珍しく、顔赤いです。


「ええーっと、どなたと再婚されるのですか?わたしは、その方を知ってますか?」


「わたくしのお相手は、サエール様ですわ。」


「まあ!サエールさんと!?」


サエールさんは、商人として、この村で有名な

お方で、私の幼馴染シール様の叔父さんです。


叔母様は、実は、養子入りして、叔母になった方だから、お父様とは、親子くらい歳が離れている35歳。サエールさんは、独身の40歳。


うん、ちょうど良さそうな年のお二人ですね!


「そうです。シール様の叔父様でございます。どう思いますか?」


「子どもに対して、お優しい方というイメージあります。幼き頃、よく遊んで下さいました。ハルファちゃんにも良さそうですね。」


「ええ、わたくしも、そう思う。とても優しいお方なの。ありがとう。」


「お父様には、早めに正直に、言った方が良いと思いますけれど………」


「そうよね。言った方が良いわよね。」


義兄妹とはいえ、お父様は、ステファ叔母様が幸せになるなら構わないと思いますし。


サエールさんなら、誠実かつ真面目で優しく、評判の良い方ですからね、大丈夫ですよ。


「分かりました。正直に、言うわ。話し聞いてくれて、ありがとう。」


「いえいえ、叔母様の、お力になれたのなら、嬉しいですよ。」


「うふふ。リランちゃんって良い子よねー。」


「あ、ありがとうございます。」


と、この後、サエール様は、叔母様に婿入りをして、ハルファちゃんの義父になることが決定しました。


お父様には、やっぱり、かなり驚かれました。


でも、実は、孤児の叔母様を、いたく心配されているお父様は、断れなかったんですって。


幸い、サエール様は、お人柄の良いお方です。


商人な上に、料理上手だから、シェフとしても雇う、とも約束がされました。







「こんにちは。改めて、レイーエ男爵の実弟、サエールと申します。宜しくお願いします。」


「ええ、こちらこそ、よろしくお願いします。サエール義叔父様。」


レイーエ男爵には、二人の弟と妹がいまして、サエール義叔父様は三男ですね。


ちなみに、シール様は一人弟三人妹がいます。


「今まで通りで、サエールさんで構わないよ?シール君の叔父さんなんだし。」


「いえ、もう、あなたは、義叔父様ですもの。そう思いませんか?ステファ叔母様?」


「ええ。もちろん。サエールさん、あなたは、わたくしの夫です。可愛い義姪に、義叔父様と呼ばれても良いのよ?」


「ありがとう。ステファさん。リランさん。」


義理の姪っ子なのに、可愛い姪っ子って思って下さったのね!叔母様!ありがとう!


あと、サエール義叔父様は、ちょっと天然ね。






「シール様は、お元気?」


「シール君、最近は、商家のお嬢様と婚約したから、最近は、色々と忙しいみたいだよ。」


「あら、オリバーさんと婚約成立したのね!」


オリバーさんは、大商人であるニールビア家の兄がいる末娘である。


レイーエ男爵領内で、一番美人とされていて、シール様よりも二つ年上らしい。


「おめでとう、とお伝えして下さるかしら?」


「う、うん、もちろんだよ。シール君、喜ぶと思うよ。たぶん、だけれど。」


二人の方が、バリバリに政略結婚で、婚約者になったみたいだから、喜ぶのかは分かりませんけれども………


「オリバーさんは、シール様のこと好きみたいですけどね。どうなるのかしらね。」


「うーん………?どうなるのかなあ。シール君は好いている女性がいるからね、しばらく、複雑かもしれないね。」


「え?シール様に?それ大丈夫なのかしら?」


「たぶん、大丈夫だと、思うよ。」


ちなみに、リランは、全然気付けていないが、実は、シールは、リランに片思い中なのだ。


嫡男の想いに気付いたレイーエ男爵がわざわざ商家の娘を息子に紹介したのである。


男爵家の一人息子と男爵家の婿をもらう予定であろう一人娘は、結婚出来ないからだ。






「リランちゃんも、最近、婚約したのよ〜。」


「ええっ!?えええっ!?そうなのかい!?」


片思い中のシールのことを、まったく知らないステファさんは、気軽に明かした。


サエール自身は、驚きであった。いつの間に!シール君、ますますピンチだよ〜〜!


「ええ、実は、そうなんです。」


「えーっと、どなたと、婚約を………?」


「夜会で、初めてお会いしまして、辺境伯家の次男リエール様と仲良くなりましたの。」


「そっかああ。辺境伯のご子息と、なんだね。そっかあ。リランさん、おめでとう。」


「ええ。義叔父様、ありがとうございます。」


「う、うん。シール君は、びっくりすると思うからね、僕から伝えておくよ。」


「ええ。それも、頼むわね。お願いします。」


実は、再来年辺りに結婚式を挙げて、婿として我が家に迎える予定になりました。


リエール様は、早めに、こちらの男爵領の村に馴染んでいきたいんですって。


恐らく、次期領主として色々と学びたいことがあるのよね!きっと!


「そっかあ。その予定なんだね。シール君は、今年中に、結婚式を挙げるみたいだよ?」


「あら、そうなの!?ますますおめでとう!」


オリバーさんは、かなりシール様を気に入ってらしたわよね!だから、早めたのかしら?


シール様自身は、どうなのか分からないけど。


「ステファ叔母様、招待状が我が家に届いたら教えて下さいませ!」


「もちろんよ〜!シール様も、凄いわね〜!」


「ね〜!凄いわね〜!」







「お久しぶりだね。ハルファちゃん。」


「うん!ひさしぶりです!サエールさん!」


一応、何度か叔母様の友人だと紹介をされて、ハルファちゃんに会ったことがあるらしい。


ハルファちゃんは、よく遊んでくれる人が来たって喜んでいます。


「新しいお父さんになれるように、頑張るのでよろしくお願いします。」


「おかあさまのおともだちのサエールさんが、あたらしいおとうさま………??」


「うん。そうだよ。ハルファちゃん。」


さすがに、困惑気味の、ハルファちゃん。


今は7歳だからね、ゆっくり、新しいお父様に慣れていってくださいませ。


「サエールさんが、おとうさまなら、いいよ!あたらしいおとうさま、よろしくですっ!」


「ありがとう!これからも、よろしくね!」





正式に、ステファ叔母様とサエール義叔父様は婚姻届けを提出して、我が家で暮らすことに。


ハルファちゃんも、サエール義叔父様に懐き、ほんとうの父娘のようです。




それから、約数ヶ月後のことです。


なんと、叔母様の、お腹に赤ちゃんが………!


可愛いらしくて、サエール義叔父様に似ている従弟、レヴィーくんが誕生しましたとさ。

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