記念日
マフユフミ
第1話
遠ざかる町並みを
どこか他人事のように見ていたあの日
ここから離れていくなんて
どうしたって実感が湧かなくて
ふわふわした思考のまま
流れる景色をぼんやりと眺めていた
どんなに遠くに行ったって
見えると信じた校庭のメタセコイア
見えない場所まで走っても
バスは停まらずに進み続け
その時初めて後悔したんだ
もう戻れないんだということに
それでもなんとか現実に
追い縋ってしがみついて
気が付けば時は経ち
あんなにも離れられないと思っていた
あの場所がいつしか帰る場所となり
今はここで一人立つ
今日はあの停まらないバスに
恐怖を覚え涙した日から丸3年
少しは大人になれたのかな、と
鏡に向かって問いかけるけれど
鏡の中の自分には当然のように答えはなくて
ただ一人時の流れを噛みしめた
これからも今のこの場所で生きていく
そんな覚悟を決めるための時だった
今日はほんの少しだけ
高級なお総菜と見た目にもキレイなケーキ
帰りのデパートの地下で買って帰ろう
だって3回目の誕生日
新しい一歩を、それもかなり
大きな一歩を踏み出したあの日から
私は今日もこの道を歩いている
メタセコイアの校庭から未来へと続く道を
記念日 マフユフミ @winterday
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