第3話 イケメン
小噺を一つ
昔10年くらい名古屋に住んでたことがあるんだ。
あれは二十歳くらいのことだったかな。
知らない人もいるかもしれないけど、名古屋には地下鉄があるんだ。
その日俺は東山線って地下鉄に乗ってたんだ。
で、その頃の俺って彼女もいなくて、いたこともなくて、モテたい盛りで
髪型とか服装とか変な方向にキメちゃっててさ、
挙句の果てに席空いてんのに、座るのダサいとかいって立って乗ってたの。
俺が乗って次かその次の駅だったかな、
でけっこうきれいなお姉さんが二人乗ってきたのさ。
意識しながらも、見てることバレないように視界の端にたまに捉える
みたいな感じ、男子なら誰でも分かるんじゃないかな。
で、しばらくバレないように意識しながら、会話とかも聞こえる分だけ聞いてたの
そしたら、そのお姉さん二人、身体は全然違う明後日の方向むいてたんだけど、
首だけ回して、明らかに俺の方を見てる?気がするの。視界の端だからなんとなく
更に意識を集中すると、どうやら二人して顔を俺の方向に向けながら
「イケメン」
「イケメン」
って囁き合ってんのさ。
ついに俺の時代って思ったね。
一つだけ言っておくと俺は全くイケメンの真逆だ。
そんなこと、分かってたつもりだけど舞い上がっちゃってさ。
バッ!ってお姉さんたちの方を、どうだと言わんばかりに向いたさ。
そしたら、目が……合わない。
お姉さんたちの視線はこちらの方を向いているのに合わないんだ。
焦点がもっと上に合ってる。
なんだなんだ、と視線の先を追跡すると、俺の右手で掴んでいたつり革の先に
『イケメン http~ikemen.jp』みたいな広告が載ってたのさ。
何の広告か知らんけど紛らわしすぎんだろ!!
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