この空の下で、何度でも君を好きになる

望月くらげ

プロローグ

第0話 プロローグ

 私、遠山とおやま 瑞穂みずほは、今日、大好きな人を庇って――溶けかけた雪にタイヤがスリップしたのか、ブレーキを踏むことなく歩道へと突っ込んできた車にはねられて、死んだ。

 正確には、もうすぐ死ぬ。さすがにあの速度の車にはねられて無事でいられるほど、頑丈には出来ていないはずだ。

 こんな時に、こんなことを考えているなんて、自分でもなんだか笑えてくる。

 ついさっきまで「今何時?」「もうすぐ10時30分だよ」なんて会話をしていたのに、まさかその数十秒後にこうやって車に轢かれそうになってるなんて思ってもみなかった。

 死ぬのは怖い。でも、それは痛いのは嫌だなぁという意味で、自分の行動に後悔なんてなかった。

 たとえば、もう一度このときをやり直せて、私が助かる未来があったとしても、私は何の迷いなく彼を助けるだろう。

 そのせいで、もう一度私が死ぬことになったとしても。

 視線の先には、突然私に突き飛ばされて何が起きたのか理解できずにいる彼の姿があった。一瞬の間の後、彼の口が開かれるのが見えた。


「瑞穂……? ……っ!?」


 私の向こうに迫りくる車に気付いた時――彼は驚きと焦りと怒りと、いろんな感情がぐちゃぐちゃになった顔で私を見つめていた。

 ごめんね、と思わないでもなかった。――自分のしたことに後悔はないと言ったけれど一つだけ。彼に悲しい思いをさせるのは辛いなと、そう思いながら私は目を閉じた。

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