03
「そう......だ。雨の日に私は.........」
「全てを知ったんだな」
呟く蒼の声にかぶせるよう、影流の声が耳に入った。
閉じていた目を開けると、元の青みがかった暗闇の世界に戻って来ていた。影流が蒼の目の前にいた。
「試練の合格、おめでとう。これで君の願いは果たされる。...ほら」
影流が横に身を避けると、白く輝く扉が出来ていた。
「あそこに行けば、そしてその扉を開けた先には、君の願いが叶った世界になっている。さ、君にはあの扉を開ける権利が与えられた。今までの労力を報いたいのなら、開けるといい」
「...開けない、って言えば......」
「元の、願いの叶っていない世界に戻るだけさ。それ以上でも以下でもない。...それだけだ」
影流は蒼からゆっくりと離れた。蒼はフラフラと扉へ向かっていく。
どの選択が間違いないのか正しいのか。蒼は分からなかった。だが、この強い望みは叶えたい、と心の底でもう1人の自分が叫んでいる。ならば、それにただ従順に従えば良いのではないか。何に迷うのか、その欲望のままに生きれば良い、と。今までの労働に対する報酬なのだ、と。蒼は考えるのを止め、扉のドアノブを握り回した。
その時、その蒼の手の上に透けた手が引き止めるように置かれた。蒼の手と同じくらいの大きさ、白い肌。その手にはきちんと腕も付いており、
その腕の先の顔を見ようとした時、耳元で、
『返して。 』
蒼は視線を扉に戻し、そのままの勢いで扉を開けたのだった。
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