03

「おい、目を覚ませ」

 やや不機嫌そうな影流の声に蒼は目を開けた。そこはあの青みがかった暗闇の世界。

 蒼は自身の身体を見る。確かに骨を隅々まで砕かれ、頭部や胸部にシャンデリアの装飾部分が食い込んだ感覚が、未だ身体に残っている。だが、身体のどこも血に濡れておらず、どこも変哲のない身体になっていた。

「まったく...、少しは周りに注意しろ」

「す、すみません」

「まぁ...、でも残りあと1つだ。着実にゴールに近付いてるよ」

 そう、何だかんだ有りながらも何とかゴール目前まで辿り着けていた。

「...でも、影流さんが治さずに捨て置いていたら、私ここまで来ることが出来ていませんし。本当にありがとうございます」

「礼を言われる筋合いは無い」

 蒼はゆっくり立ち上がり、影流目を見上げた。

「それでも!ありがとうございます」

「...あぁ、どういたしまして」

 蒼の視線に耐えられなくなったのか、ふいと視線を反らして影流は答えた。彼女の白い肌が薄く朱色になっているのを見て、蒼はクスクスと微笑む。見た目通り、影流は照れ屋のようだ。

 ひとしきり笑い終えた後、いよいよ蒼は最後の扉へと向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る