英雄組織にも

 赤い片目が二つ並んだ。

「この目は、お前に通じているのか?」

「どういう意味で?」

「俺が見た気色を、お前も見ることが出来る…とかな。」

「さぁて、どうだろうね?あんたが見せたい風景があるんだったら、見てあげるさ。」

 そこに腰掛ける忍隊の頭を見下ろす。

 どうしても、どうしても会いたくなる衝動に駆られて、あの監獄のような場所から来てしまう。

 ここに居るとは限らないとわかっていながら、他に宛がなかった。

 それでも、応えるように現れてくれた。

 それに、喜びを感じていた。

「俺もお前のように、自由ならな…。」

 愚痴るようにまた同じ言葉を吐いてしまう。

「俺にお前の見る気色がこの目を通じて見れるのならいいんだが。」

 隣に腰を下ろして、項垂れる。

 帰る度に増す嫌悪感。

 好きで、あの組織にいるわけじゃない。

 叶うなら、出ていきたい。

 だが、行く宛もなかった。

「あんたは鳥籠の中の鷹だね。爪を隠したまんまの、鷹。」

「そう見えるか?」

 ケラケラと笑うこの忍をどうしても、手に入れたい。

 そんな欲求さえある。

 それなのに…そうか、確かに鷹だ。

 思わずフッと笑いが零れる。

「あんたが望むのなら、その鳥籠も開けてやれる。」

「…どういう意味だ。」

「あんな組織はもううんざり…でしょ?」

 誘惑、か。

 俺があの組織を裏切り、戦力を落とす。

 そして、忍隊が有利になるようにする。

 そうとしか思えない。

「遠慮する。開けたところで飛ぶ宛もない鷹を相手にしてどうする。」

「宛なんざ己で作るもんさ。」

「例えばなんだ。お前が俺の忍にでもなってくれるか?お前が俺の宛になってくれるのか?」

 振り向いてその細い腕を掴む。

 それに驚きもしないで、妖しげに笑んだ。

「お望みであれば、あんたの影にでもなってやるさ。主のいない忍の、主になってくれる気が本当にあるのならね。」

 勢いのままに言った言葉に、また応えてくる。

 腕を掴む手に、手を重ねてまで。

 これが、本気なのかもわからない。

 ただの挑発かもしれない。

 それでも、期待したい。

 この鳥籠から抜け出し、得られるのなら。

「冗談ならそう言え。」

「割りと本気だけどなぁ?どの道、あんたはその目が赤い限り…逃れられやしないのさ。」

 心が熱い。

 これを逃せばもうチャンスはこない。

 そして、ついでにはコイツが諦めない限りこのチャンスは逃れない。

 なら、掴むべきではないか。

「…どう解放してくれる?俺はどうすればいい?」

 すがるしかない。

「あんたはただ待ってくれりゃそれでいい。時が来るまで、ね。」

 そう言い残して、この手をすり抜け影となって消えた。

 信じていいのか。

 ただの言葉遊びではないのか。

 揺れる。

 赤い目を片手で覆って、溜め息をつく。

 お前の影に入れば、簡単に消え失せられそうだ。

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最狂舞台で共闘中 影宮 @yagami_kagemiya

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