AOにて

 忍隊の支給を得て、暗殺を進めていた。

 あのヨカゲらでも苦戦を強いられているようだが、だからといって揺れ動かない支給の内容に感謝する。

 行けば静かな拠点で、あの依頼に関係なくとも情報提供をしてくれる。

 無関係でも、怪しい暗殺任務内容には思うことを告げてくれた。

 その全てが的中するのだから、幾千の戦場を疾駆した戦忍だけある。

 少しのことも見逃さない。

 おかげでAOでは、忍隊を引き入れたいとまで声が上がった。

 しかし、忍隊はそうそう容易くは引き入れられない。

 ヨカゲが気に入る主に忍隊は従う。

 雇っても、気に入る者さえ現れれば容易く裏切ってくる。

 その自由さが、猫のようだった。

「あれま。冬獅郎、氷を用意しな。明朗、水。」

 服で見えないはずの傷に、一目で気付いたらしかった。

 サイゾウの姿はない。

 治療を施され、大分楽になった。

「無理はしなさんな。いくらあんたがクローンでも、あんたほどのクローンはそうそう量産できないんだから。」

 驚いた。

 いつから、俺のことを知っていたのか。

 いつの間に、調べたのだろうか。

「最近は、気になるお方を見つけてね。あれが主になりゃ安定だね。」

「もし、主ができたら…。」

「この同盟かい?主が止めろと言うまでは続けるさ。」

 やはり。

 主の命令ならば、どんな命令にも従うのだろう。

 それが、全てを拒絶する命令であっても。

「そう不安そうな目をしなさんな。主がこちとらを選ぶんじゃないんだ。」

 見透かして笑った。

 ヨカゲは普通と違う。

 主に選ばれるのではなく、己で主を選ぶ。

 長いこと主がいないのも、ヨカゲが主に相応しい人間を見つけていなかったからだ。

 この様子だと、自ら探すというよりも偶然出会った人間から選んでいるようだ。

「ん、あんた…今回は日本なんだっけ?」

「それがどうした。」

「何かあれば赤い目をした鳥に頼みな。あんたを運んだり、標的に攻撃したり、なんだってできるさ。」

 そうか。

 日本であれば、いつも以上の協力が得られるのか。

「まぁ、うちの部下も必要なら相性の良い子を向かわせるさ。」

「それは助かる。」

 頼まずとも察して用意をしてくれる。

 依頼さえ明かせば、最大限のことを差し出す。

 それに報酬は付かない。

「越えられない壁が多い。依頼の謎も解けていない。」

「なにも越えようとしなくてもいい。」

「依頼を放棄するという意味か?」

「答えは己の足で歩いてくるのさ。呼べばいいだけ。」

「どうやって?」

「壁を叩いてご覧よ。声をかけてみようか?どうとでも。」

 言っている意味が理解できない。

 それが、何を表しているのか。

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