英雄組織にも

 僕ら英雄組織、その名も『ヒーローズ』は日本国内の悪者を潰す正義の味方だ。

 正直、敵がゾンビじゃなくて良かったって思うくらいだ。

 だって今の敵は忍者集団だぜ?

 MNとは今手を組むことになった。

 仲間を殺され連れていかれて勝負は正々堂々じゃないって怒ってるリーダーと一緒に潰しにかかろうとしてる。

 そこで、面白い物を使おうと思う。

 幻覚毒ガスだ。

 致死性はないし、ちょっと混乱状態になってもらって、対処しようっていうつもりで。

「お、来たな。」

 MNリーダーがそう呟く。

 空から舞い降りて来たコイツが、忍者集団のリーダーか。

 と、もう一人別の方向から男が…部下かな?

「よし、入った。スイッチON!」

 シャッターが閉まったが、二人は閉じ込められてもそれらしい反応はしなかった。

「拉致った奴をどうするんだ?正直邪魔だぞ、あれ。」

「頃合い見て解放するさ。利用価値が無いからね。殺しても金になんない。」

「何故連れ帰った…。」

「奴さんがどっかの誰かさんと手を組まなけりゃ使ってたんだけどねぇ。」

 会話で気付いていないのか?

 取り敢えず毒ガスを。

 充満するのに、そう時間はかからない。

 男の方が少し振らついたところで、もう一人が男の肩に手を置いて、思いっきりビンタした。

 予想外の行動だったが、それが効いたのか男はそれ以降毒ガスの影響を受けてるようには見えなくなった。

 けど、代わりにもう一人の方は壁に手をついて口を抑えたままだ。

「幻覚毒ガスに効く薬を持ち合わせてねぇな。耐えれるか?」

「あんた便利だよね。殴りゃ目が覚めるもの…。」

「お前はキツイだろうな。何が見える?」

「何も…そろそろ意識飛ぶかも。あんたは身を守ることに、徹しなよ。殺さない保証はないから。」

「だろうな。」

 それきり会話が無かった。

 殺さない保証?

 幻覚でそんなことにまで発展するのか?

 口を抑えた状態から立ち直ったように顔を上げて、壁から離れた。

 それに対応するように男の方は身構える。

「我が主に害なす愚か者は、排除する。」

 様子が可笑しいのは一目瞭然、シャッターを一撃、それで凹ませた後それで出来た隙間に手を差し入れて力任せに壊す。

「今回の幻覚は、危ういな。」

『今回の』ってことは何回か経験があるってことだ。

 ガシャン、と後ろで音がした。

 まさかもう此処まで来たってこと!?

 頑丈なドアをさっきの音で凹ませたんだろう、逃げなくては殺されるとわかる。

 殺気が僅かながらする。

 顔を見合わせて頷き合った。

 別の出入口から走り出て、後ろで破壊音が響くのを聞いた。

 幻覚作用が奴を凶暴にさせてしまうということに、驚いた。

 男の方は、回復が早いどころの話でもないし、慣れていると言わんばかりの反応だ。

 毒ガスだとかはある意味効かないということだ。

 足元すれすれに矢が刺さった。

 見上げてみれば、忍装束が一人。

 弓を手に見下ろしてくる。

「お前…。」

「確定した。次は射る。」

 矢を構え、明らかにこっちを狙っている目をする。

 不味い。

 全速力で走り物陰に隠れるしかなかった。

 それでも遠慮なく矢は放たれた。

 矢の威力は絶大で、壁さえ砕いた。

「銃よりも威力が大きい。当たれば即死かもな…。」

 やっと矢が止んだ。

 諦めたか?

 と思えば真上から矢が垂直に地面に刺さった。

 見上げれば向こうのリーダーが見下してきている。

 その隣には弓を持つ男も。

「忍に正々堂々っていうのは無理な話なんだよ。そもそも、忍は正義の味方じゃぁない。忍は昔から、影として汚く生きるもんなのさ。」

 警告をするように、目は鋭かった。

 任務を達成する為ならば、手段は問わない。

 そう言いたげに。

「舐めない方がいい。手を組むなとは言わない。けど、何か行動に出る時には気を付けるこった。仕事を忘れて潰し合ってるようじゃ、何も得られない。」

 そう残し去ってしまった。

 弓を持った男も、間を置いてから立ち去った。

 そういえば、もう一人の男の姿がない。

 時間稼ぎをして、何かを仕掛けたのか?

「どうする?」

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