AOにて

『Assassination organizations』

 略して、『AO』

 暗殺者49を始めとする暗殺者と、それをサポートする者が集まった組織。

 依頼は特定の別の組織のものを受け付けている。

 また、この組織を潰そうと狙うような輩を含めた害ある者を潰してもいる。

 拠点は此処日本ではないが、依頼の為に日本へ来ている。

 殺したターゲットが、何者かにより死体回収されていることと、その何者かが此方を遠方から監視している様子が伺えた。

 それを調べた結果、日本に昔からある組織、忍者隊であった。

 そしてその拠点を突き止め、潜入。

 見張りも居らず、ただ一人だけが立っていた。

 その一人こそ、この忍者隊のリーダーであるヨカゲであった。

「49、貴方の知り合い?」

「あぁ、以前、暗殺に協力してくれた奴だ。まさか、こんな形で再会するとはな。」

「そう。彼女との取引…条件が良過ぎるわ。」

 ディナの声は疑っているが、俺はヨカゲに信頼と信用を持っている。

 ヨカゲは害を与えなければAOに害を与えようとはしない。

「手を組んだ方がいい。何かと、便利になる。互いにな。」

「貴方はヨカゲについて詳しいの?」

「わかっているのは、ヨカゲの組織はAOと似ているということだ。」

 害なす者は殺す、という部分も人員の少なさも。

 暗殺に関してもプロだということも。

 依頼を選ぶということも。

 共通点は多い。

「貴方がそういうのなら、手を組みましょうか。」

「返答は赤い目の烏にすればいい。」

「烏を探すことからね。」

「いや、その必要はない。」

 振り返れば赤い目をした烏が首を傾げた。

 気付けばこうして、近くにいる。

 返答をいつでも聞けるよう、さりげなく視界に入ってくるようだ。

「これを頼むぞ。」

 烏に返答の紙を差し出すと、一つ鳴いて咥えた。

 そして両翼を広げると、彼方へと去っていって。

「ディナ、忍者隊の居場所をどうやって突き止めた?」

「拠点の場所についてだけの情報が昔のデータに残っていたの。」

「そうか。」

 昔に、それのみの情報を誰かが得て残したままだったのだろう、そしてその時からもずっと変わらず同じ場所に留まっているのか。

 此処までずっと隠し続けられた理由は、情報を得た者を生かしておかなかったからか、それともやはり得ることが容易で無かっただけの話なのか、だ。

 明日に拠点に行って、武器を調達しよう。

 それから、現在仕留めた奴と居所を聞く。

 報酬の山分けすらないのは、互いに便利だな。

 翌日…。

「49だ。ヨカゲに用がある。」

「存じ上げております。長ならば奥に。」

「あぁ。」

 奥に進めばあの時にはいなかった多くの忍者隊の者がいた。

 人数があっても、やはり静かだ。

「おっと、この気配は…。」

 そんな声も聞こえた。

 気配察知が鋭い。

「いらっしゃい。お返事ありがとさん。早速だけど、情報はこれね。武器で欲しいもんはあるかい?」

 話が早くて助かる。

 差し出される数枚の紙を受け取る。

 暗殺済みが思ったより多いな。

「海外、か。場所までは突き止めていないんだな?」

「多分それ、台湾だよ。確定以外は言わない主義だけど、ほぼ確定してるから言うね。台湾で旅行とお仕事。其奴の自室から予定を入手。これに忠実に動くとは限らないけど、一応、ね。裏に貼っておいた。」

 口早な説明も合わせて把握、裏返せば確かに書かれていた。

 それに目を通している間に武器などをしまったケースをいくつか机に運び置かれていた。

「この予定表、ちっと匂うんだわ。」

 溜め息混じりにそう零す。

「匂う?」

「なんだろうねぇ。こちとらの感覚なんだけどさ…。」

「それでもいい。」

「んー、此奴、表向きの仕事ついでに、人殺す気だよ。」

 予定表の紙を指さしながら、予定表にしては細かくかかれた部分を指差す。

「予定表見た時、そう思ってね。」

「確かに怪しい書き方はしてるが、何故そう思った?」

「だから、感覚。なんとなーくそう感じたってだけ。あんた、気を付けなよ。杞憂だといいんだけど、台湾で手を出したら怪我するわ。」

 顔をしかめて、そう告げると部下から何かを受け取った。

 そしてそれに目を通している。

「怪我、か。」

「夜影の勘は当たるぞ。寧ろ、外れたことは無い。」

 ヨカゲに何かを渡していた男だ。

 予定表を指差しながら、溜め息をついた。

「此処に『AO49』と書かれているが、大方お前の事だろう。掠めるかもしれん。」

「才造!それは言わないって言った!」

「何故隠す?言えることは言わんとならん。」

「だから、不確かなことで暗殺に障害があったらどうすんの!最低限でいいの!」

 ヨカゲはサイゾウと呼ばれた男の腕を掴みそう怒るが、サイゾウは涼しい顔をするばかり。

「その心配はない。教えてくれ。」

「才造が言った通り、あんたの事について掠めるかもしれないことと、此奴が薬殺を狙ってるってこと。才造なら一発でわかったと思う。」

「まぁな。飲食物に混入させるいたって簡単な方法で殺る気だろう。薬物は現地調達だな。」

「何故そこまでわかる?」

 二人は顔を見合わせた。

 ヨカゲは黒い方の目をつむり、赤い目を指差す。

「こちとらはどの忍よりも、誰よりも殺しの経験は多い。」

 サイゾウは片手にいくつかの薬品を持ち晒す。

「薬については任せろ。得意分野だ。薬を使った殺し、治療もな。」

 そしてニッとヨカゲは笑う。

「言っちゃ失礼だろうけど、あんたらよりもこの道は玄人なわけよ。」

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