MNから

 結局この部屋を含めた一階には誰一人として人がいなかった。

 階段を恐る恐る登っていけば、階段に血が落ちている。

 こんなバイオハザード並のホラー感、リアルで味わえるのは滅多にないだろう、いや絶対普通じゃない!

 階段を登りきればこっちに背を向けて立っている血塗れの男がいる。

 こいつも忍装束。

 窓に血で『次』と書いている。

 っていうことは、そうやって外の奴とやりとりしてるってことか?

 銃を構え、ヘッドショットを狙う。

 パァンッ!

 倒れ込むそいつに駆け寄る。

 ゴロンと顔を上に向かせた瞬間刃物を振ってきやがった。

 それを寸でのとこで避けて尻もちをつく。

 撃ったはずなのに!

 まだ動けるってのか!

 俺を飛び越えて階段の方へ、そのまま素早く降りていった。

 銃を拾い上げようと手元を見れば銃弾が床にめり込んでいる。

 弾いた……のか?

 そうだ、他の奴!

 血はあっても死体を見ていない。

 死んでないかもしれない。

 出血多量で死にそうだけどそれは考えない方がいい。

 ドアを開けようとするが空回り、鍵をかけるんじゃなくこっちにしたのは賢いな。

 マスターキーを持ってる俺に意味は無いことをしないんだな。

「そこに誰かいるのか!」

 声はしない。

 敵がいたとしても、黙ってたらわかるわけないよな。

「お前に言伝がある。黙って聞け。」

 ドアの向こうから低い声がやっと聞こえた。

「『残り五名となった。負けを認めればこれ以上死傷者は出ない。諦めず続けるという愚行で仲間を死に至らしめたければ、それでもいい。』」

「汚ぇぞ!!正々堂々と、」

「応か否かのみ答えろ。」

 遮られる。

 脅しか、いやこれが脅しで無かったら…。

 待て、まだ突破口はある!

「全員そこにいるのか?」

「全員かどうかは知らん。」

 あ、そ、そうだよな。

 わからんよな。

 全員じゃないなら、犠牲は出るが突破を…。

「よぉ!忍者共!!ヒーローのご登場だぜ!!人質を解放しろ!全員だ!!」

 ドアの向こうでそんな声が響いた。

 誰だ?

 ヒーロー…って?

「致し方なし。撤退。」

 その瞬間ドアが勢いよく蹴破られて危うく俺にあたるところだった。

 忍隊二人が素早く別の部屋の方へ入り込む。

 追いかけてドアを開けると、そこにも一人立っている。

「長がそろそろ戻ってこいとおおせだ。」

「宴までまだ時間はあるが?」

「宴の準備か…あれだな、久しく長のが見れる。」

 笑い合いながら包帯をしゅるしゅると俺の部下に巻いている。

 手当?

「お、現忍がお待ちかねだ。」

 振り返って俺を見るなりそう言う。

 そして、ヒヒッと気味悪く笑った。

「包帯足りるのか?」

「いや、そもそも此奴には手を出しとらん。まぁ、勝手に何処かですっ転んで出血なんぞしてたなら知らんがな。」

 地味に馬鹿にされている気がする。

 これがさっきまで脅しをかけてた連中か?ってくらいに一転してる。

「お前ら、なんのつもりなんだ?」

 銃を構えつつ、そう問い掛ければ済んだのか、包帯を片付けながら立ち上がった。

「人質は、そうそう殺せんが…怪我もさせれん。儂らも延々と此処でやり続けるほど暇でもない。行け。」

 窓を蹴って割り、さっきまで手当を施していた俺の部下一人を担ぎ上げた。

「故に、連れて行かせて貰う。此奴の命の保証は無いが…まぁ、此奴のことより大勢の部下の命をも奪わねばならんような返答はするなよ。負けを認めるか、続けるか…だ。」

 気怠そうにそう残して窓から飛び降りやがった。

 クソが!!

 それにしても、あのヒーローって誰だ?

 そこでハッとしてさっきの部屋に戻ったが、もう既にヒーローとやらはいなかった。

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