忍隊より
死体回収も終えて、部下が一人敵陣から戻ってきた。
「お疲れさん。」
「長、あの死体はよろしいので?」
「放置の方が奴さんも精神的に辛いだろうからね。暗殺対象、残り六人…居所は掴めたかい?」
振り返れば報告をまとめていた才造が溜め息をつきつつ一枚の紙を差し出す。
「此奴が海外に旅行に行ってやがる。ワシらは国内の任務以外はお断りだ。」
「帰国は?」
「三ヶ月も待てるか?旅行にしては長い気もするが…調べてもこれ以上の情報は無い。」
まさかそんな壁にぶち当たるとは思わなんだ。
「どうしたもんかねぇ。これは、奴さんに譲って他を全部頂戴しとく?」
壁に寄り掛かり、一緒に溜め息をつく他ない。
これでも順調に任務は進んでる。
「長、ターゲットの一人が何者かに暗殺されております。」
「あらま。死体は?」
「放置されておりました。回収は致しましたが、これは…。」
「暗殺者が他にもいるってわけね。其奴を相手してやる暇は無いけど。」
才造と顔を見合わせて、頷く。
才造は直ぐに向かった。
暗殺者特定へ。
「其奴には手を出しなさんな。利用して死体を頂戴する。もし攻撃を加えられても、逃げな。いいね?」
「はっ!」
チラと潜んだ客に目を向けて、如何もてなそうか唸る。
これがあの暗殺者の仲間、もしくは張本人なら茶を出してやらないと。
「いらっしゃい。まさか外部の者に拠点を知られるとは思わなかったわ。」
警戒してるね。
殺意も少々ありやと。
「おいで。我ら忍隊の拠点へようこそ。あんたとは少しばかり仲良くしたい。」
其方へ体ごと振り返ってやる。
銃口を向けながら陰から姿を現したそれに、どこか見覚えがある気がする。
「あんたは茶と珈琲どっち派?」
「なんのつもりだ。」
「何が?」
多分、こういうお人様は珈琲だよなぁ。
そう机に差し出しておいて、座る。
敵意は無い、とわかってもらえるならいいんだけどねぇ。
「ターゲットが同じなのは、偶然か?お前は何故、」
「嗚呼、思い出した。あんた、凄腕の暗殺者、49だったけ?暗殺依頼書、見る?」
机に上に差し出して笑めばやっと座ってその紙を見やる。
49が以前共闘したのを覚えていれば話は早い。
「今現在、こちとらはその依頼で勝負してる。現代の忍っていう組織とね。」
「MNか。」
「異国語で言われてもね。あんたも同じ依頼?」
それに頷かれ、運が良かったと思う。
そりゃだって、こんな便利な勢力が同じ内容で動いてるなら嬉しいじゃない?
「正直こちとらは死体さえ回収出来りゃ問題無い。わかる?」
「邪魔する気は無いが、可能なら死体を寄越せ、と?」
「あんたの依頼は死体を必要としてないんでしょ?じゃ、互いに好都合。あんたに暗殺対象の情報を提供するから死体を頂戴よ。」
パッと取引成立したい。
才造にはちょいと間が悪かった。
道具が手に入ったと言うべきか、とりあえず謝っておこう。
「何故知っている?」
「あんたが死体を置いて姿を消したって報告は部下から聞いた。あ、死体は有難く頂戴したよ。」
茶を啜りながら49へ目を抜ければ、少し考える顔をする。
そりゃそうだ。
独断は危うい。
「さて、どうやってこの拠点を知ったわけ?侵入は容易かったでしょ。皆出払ってて見張りいないから。」
「俺が調べたわけじゃない。」
ふぅん。
そろそろ拠点を移すべきかな。
「あんたとは手を組みたい。一時だけでもいい。」
「少し考えさせてくれ。」
「勿論。いつでもお返事頂戴。赤い目をした烏に返事を持たせばこちとらに伝わるから。」
立ち上がり、ケースを手に取る。
それを机の上に投げてやる。
「それ、要らないからあげるよ。まぁ、あんたも要らないんなら捨てるさ。」
無言でケースを開けて、中身を確かめている。
中身は暗殺対象が持っていた武器やら、何処ぞで奪った武器やら、色々。
「あんたの役に立つと思うよ。情報収集、暗殺加勢、武器提供、治療、宿とかね。同盟を結んでくれるのなら、お安い御用。なんなら部下も貸す。それを考慮した上でご判断を。」
「あぁ、わかった。」
中々ない魅力だと、思うけど。
これでお断りだって言わちゃしょうがない。
どうなることやら。
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