忍隊より
「さぁて、久々に楽しめそうな予定が出来たよ。さっさと終わらせて、笑ってやろうじゃないの。」
そう言ってやれば部下らはやる気満々。
まぁ、負けるこたない。
実力の差を見せ付けてやりゃいい話。
万一、先に任務を達成するような素振りがあるなら、その成果を奪って依頼人に渡し、報酬を受け取れば問題無し。
それに、負けたとしても手を組む必要はない。
けれど、いいきっかけになる。
勝てれば、遠慮なくあの組織に手を加えてやれる。
「これより、一切の依頼を受け付けない。集中し、奴さんを妨害しつつ任務達成する。」
「応!」
大規模で、人員が多いからとて、だから何って話よ。
多ければ多いほどに出来ることは増えても、それらを動かすのに必ず鈍りが生じる。
さらに、妨害を僅かでも加えられたら?
実力も、日々測りながら任務を行ってきたけれど、問題無し。
前々から忍び込ませておいた部下もバレてない。
情報筒抜けなのに気付いても、それが何処からなのか、何故なのかまで手が届かない辺りと、それでも良いなんて甘い面してる辺り、相当のことが無い限りは問題無し。
「霧ノ班、今すぐ日ノ本中に散れ。林ノ班、潜入続行。才造、あんたにこの場を一時任せる。こちとらは少々仕組みに行く。散れ!」
「はっ!」
まだ任務は明かされないが、行動は速く、判断を素早く。
どうとでも動いて見せるさ。
我が忍隊が、如何に戦国の世を掻き乱したか、我が武家を、どれだけ力付け暗躍に活躍を重ねたか、それを知らせてやろうじゃないの。
任務の候補はもう目星はある。
勿論、我が忍隊の得意と言える暗殺任務を今回の勝負のネタにしてもらう為の目星。
後は選ぶだけ。
勝った方が報酬を頂き、さらに敵さんを好きに弄れる。
上等じゃないか。
暗殺対象が十人、か。
こりゃぁ、いいんじゃない?
簡単過ぎると奴さんが調子に乗るからねぇ。
選ばせる為に、操作をかけてやる。
得意分野で助かったよ。
ま、だから勝負を受けたわけですけれどね?
嗚呼、そうだ、わざと奴さんに殺させて死体を回収、そんであたかもこちらが殺しましたって見せかけ報酬を頂戴するのも、楽でいい。
ピュイッと指笛を鳴らせば影鷹が舞い降りてくる。
「此奴を探せって霧ノ班に伝えてよ。」
さぁ、本気でやってやろうか、手加減してやろうか、迷いどころだねぇ。
文のやりとりは一旦止めにして…烏を行き来するには危う過ぎる。
いや、そうか、寧ろ烏を飛ばせばいい。
電線に止まる烏を見上げる。
「あんた、使えそうだね。」
カァ、と一鳴きして降りてくる。
いい子、いい子、あんたは賢い。
「街中の烏を集めて、あの建物の周りばかりを飛び回ってくれるかい?」
カァー。
そうかい、そりゃぁ頼もしいね。
烏は翼を広げて飛び去る。
「さて、仔猫ちゃんあんたもおいで。」
黒猫の頬を撫でる。
街中の動物と繋がっておいて良かった。
こういう時に便利だ。
「あんたも頼むよ。」
にゃぁ。
策士が策に溺れるほどに馬鹿じゃぁ無い。
策で溺れさせてやりゃぁいい話。
楽しませて。
あの頃のように、騙し合い、探り合い、潰し合い、汚く忍らしく。
あんたも忍を名乗るなら、まともにやってちゃ駄目だよ。
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