恋なんてバカヤロウだ

@sakuranohana

第1話 恋愛なんて、もう知らない

私、美春は、昨日、7年も付き合った彼氏にフラれたばかりだ。


半年前までは、彼氏と間で結婚の話も出ていたのに。

そう、我々は結婚まで、秒読みだったのだ。

それなのに。


悔しい、悲しい、恨めしい、イライラする。


彼氏は、「別れようと思う」と、たった一言だけのメールを寄越してきた。


それが昨日の昼。


納得できず、仕事が残っていたものの、むりやり定時で抜け、彼氏を最寄りの喫茶店に呼びだしたのが、その日の夜。


彼氏の態度は淡々としていた。

別れの理由を尋ねると、


「このまま一緒にいたら、お互いダメになってしまう」


とのこと。


私が、何でダメになるのかと聞くと、


彼は、

「美春が冷たい態度をとったのが癪に触った」

といった。


私の留守に、私の部屋の机の引き出しを隅から隅まで彼氏があさり、それを怒ったことはあったけれど。


だって、引き出しの奥にしまっておいた、昔の恋人とのラブラブプリクラ写真、勝手に彼氏が見つけちゃったのだ。


人の家の引き出しを勝手に漁るのは、ルール違反ではないのか?



それでも、彼氏は私が怒ったこと自体が嫌だったという。


正直、私は「たったそれだけで?」と思った。

それでも、彼氏は私に対して怒りをぶつけたことなんて無かったから、私が悪いのか、と素直に考えた。


反省した。


ごめん、と彼氏に謝った。


それでも、彼氏はガンとして首を縦にふらなかった。


私は泣いた。


彼氏は泣かなかった。


私は別れたくないと言った。


彼氏は別れたいと繰り返した。


私と彼氏との間で、何十回も同じやり取りを繰り返した。


しかし、話し合いは平行線のままだった。


やがて、喫茶店が閉店時間を向かえ、我々は店を出ることになった。


もう彼氏と会うのはこれが最後になるのかと思うと名残惜しく、私の目からポロポロと涙があふれでる。


彼氏の目の縁も、多少赤いように見えた。

きっと私のために泣いてくれているんだ。


しかし、彼は

「それじゃ、元気でね」

と一言だけいうと、足早に立ち去った。


彼氏の目の縁が赤いなんて、どうして思ったんだろう、私。


絶対に気のせいじゃないか。


彼氏との別れから1ヶ月程たった頃。


彼氏は別の女の子と交際を開始したようだ。

何故私が知ることになったかというと、SNSで彼が嬉しそうに交際開始報告をしていたからだ。


彼氏は、私とSNSでまだ繋がっているのを知っているはずなのに。

いや、だからこそ、彼はわざわざSNSで報告することにしたのか。


期間からして、彼氏は、私と付き合っている間に、他に好きな女の子ができたのだろう。


それで、私が邪魔になり、別れたくなったとしか考えられない。


彼女は、彼氏とは同じ職場で働いていたそう。

彼女の彼へのしたたかなアプローチが効を奏したようだ。


交際開始報告記事に添付されていた写真は、彼女の手作りのお菓子をわんさかと写したものや、彼氏に上目遣いをしているものがわんさかと含まれていた。


彼のSNSの交際報告記事に、他の友人らが次々と祝福のコメントを書き込んでいる。



私は、『おめでとう』なんて、口が避けても言わない。


言えない。


言いたくない。


死んでも、絶対に言わない。


悔しくて、また涙がでてきた。



その瞬間。

涙で滲む彼氏のSNS記事に、また新たなコメントがついたのが、私の目に飛び込んできた。


そのコメントの主は、私と彼氏の共通の友人だった。


「美春、こんな薄情な男と別れて良かったね。おめでとう」


違うところから涙腺が吹き出した。


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