四六 天政府軍のお目見え
また日が沈みかけ、今日も一日が過ぎようとしていた。
「統括指揮官!」
門番役の兵士が息を切らしながら、勢いよく市長室に飛び込んできた。
3人は、その意味を悟った。
「どうしたの? 慌てて」
フェルファトアは、未だ息を切らしている兵士に、優しく声を掛けた。
「天政府軍が、天政府軍が来てます!」
天政府軍の一言を聞いた瞬間、市長室の空気がすっと凍りつき、またその直後に熱気に満ちた。
「ついに来たわね、天政府軍」
「規模はどのくらいですか!?」
フェブラが興奮気味に問いかけた。
「見えた時点で来たので正確には分からないですけど、ざっと100人はいるかと」
「100人……」
フェルファトアが想定していたよりかは少なかったが、恐怖を感じるには十分の数だった。エルーナンはそれを聞くとすかさず棒を手にした。
「待って、エルーナン。相手の出方を見ましょうよ」
「そ、そう? ちなみに、天政府軍の装備はどうだった?」
「そ、装備ですか? まだ結構遠くだったので、そんなに詳しくは見えませんでしたが……」
「何でもいいの」
フェルファトアとエルーナンは、門番役の兵士にじりじりと詰め寄りながら、必死に聞き出そうとした。
「な、何でもいいんですか? そう言われても……でも、普通の治安管理員よりかは重装備だったような……」
「それで、空は飛んでた?」
「いえ、歩いて来てました」
それを聞いて、フェルファトアとエルーナンは顔を見合わせた。
「力をあまり使わないようにしてるのかもしれないわね」
「それよりも、このままだと残りの門番役も危ないかもしれないよ」
「その前に帰ってくるように言ってるから大丈夫よ。さて、貴女は西の門番だったわね。フェブラ、1階の子に命令してきて、まず、二人ぐらい選んで、西の門の影に隠れて、天政府軍が入りきったら門を閉めるように、あと、10人くらいで西の門のところで第二陣の侵入があったら阻止するように言ってきて」
「はい!」
フェブラは階段を駆け下り、1階で待機している兵士に命令させた。
「それから、貴女」
フェルファトアは門番役の兵士を指差した。
「貴女は、各階で待機しているみんなに、臨戦態勢への準備をお願いしてきて。各部屋に待機しておくこと。ちゃんと、『例の武器』は不足しないことを確認しておくこと。いいわね?」
「あ、分かりました!」
聞くやいなや、その兵士もフェブラ同様に走って市長室を出ていった。
「さて、いよいよお目見えね」
「少し怖いな」
「私だって怖くない訳、ないじゃない。でも、これも民族の明日のためよ。ここでヴェルデネリア市を防衛すれば、ミュレス民族の国土回復の大きな一歩になるんだから!」
フェルファトアは、西軍の長として指揮を執るためにも、無理矢理にでも自らの精神を鼓舞するしかなかったのだった。
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