effu書き下ろし詩集

意味

ある山の頂上付近に、凍りついた一頭の豹の屍があるという話がある。

ヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」に出てくる話。

その豹が山を登った意味を説明できるものはいない。

深海に住むカニの話がある。

深海は寒いが、地底から熱水が出る噴出口の近くにいると、そこまで寒くない。

でも、離れると寒い。

しかしこのカニは、どういうわけか死ぬ間際、敢えて離れて極寒の海水へ行くらしい。

その意味を説明できるものはいない。

地球に住むある哺乳類の話がある。

その哺乳類は、番いや食料だけでなく土地を争って喧嘩することさえある。

自分達の住処が壊れるとわかっていて、敢えて壊すような行動をする。

時には、子孫を敢えて残さず死んでいくのもいるそうだ。

感情があるらしく、無為な時間を感じると病気になる。

何割かは自ら死ぬらしいが、多くは死なない。

カニも、豹も、その哺乳類も…。

どこからやってきたのか。

なんのためにやってきたのか。

その意味を説明できるものはいない。