25-4

~25-4~


 幸いにして強引な追跡は一時見直しとなったらしい。未だ側道には何台か不審な車影を認めたものの、此方の前進を妨げようとする様子はない。


 「代わってくれ、この先で降りる」

 バックミラー越しに後部座席へ目配せする。其れを聞き憮然とした態度を見せる店主が口を開いた。

 「囮か、まぁ文句は言わんが」

 有り難い、とも思わない。とは言え勝手に付いて来たのだから当然だろう、と吐き捨てる気にもなれない。

 「だろうな、助かる」

 間を取って此の程度が相応だろう。


 「郊外のモーテルに向かってくれ、偽の集合場所らしい」

 更に待ち伏せを避けて遠回りのルートを使うよう付け加える。

 「お前は本命に向かう訳か、なら持って行け」

 運転席に移った店主は頷くと後部座席から取り出していたアタッシュケースを差し出した。


 「点検はしておいた、妙な仕掛けはなさそうだ」

 中を改めると先程捕らわれた際に奪われたグロックと付属品の一式、いつの間にか取り返していたようだ。

 「…それも変な話だ、親父さんらしいな」

 そう溢した店主は深く息を吐く。全く同意見だ。

 「何にせよ、有る物は使うだけさ」

 ケースを閉じた私は近場の路地を指定し降車する用意を整える。


 「…野郎の目星は付いたのか」

 車外に降りコートを着込む私に店主が問い掛ける。グロックと各種の部品を内ポケットとベルトに据え付けながら答えた。

 「目星どころかはっきりと聞いたよ、まぁ帰ったら話す」

 何の事は無い。素面では語るに多少の差し障りが有る、そんな程度の話だ。

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