14-2
~14-2~
目を開けると白い天井。街の中心地に位置する総合病院の一室であることに気付くまで然したる時間は必要としなかった。あの人に引き取られてから暫く健康状態の診断に幾度と無く通い続けた記憶が眼前の配色と紐付いた。であれば、と傍らに視線を移すと案の定堅苦しい面持ちで直立する愛しの君。
「…謝罪は無用にお願いできますか」
努めて笑顔で語り掛ける。右肩に感じる痛みは銃撃に依る其れと想像はついたがこの人の心痛とは較ぶべくもない。押し込めて笑みを浮かべる事に何の苦労が有ろうか。
「…なら、俺の決意だけは聞いてくれないか」
右手に握った拳銃を左手に持ち替え、空いた右手を自分の頬に添えてきた。何れだけの間、如何な力加減で握り締めて居たのか、真白く強張った手に顔を傾け頷く。
「…殺すよ、奴を」
悲しく笑ったあの人の言葉は単純明快。
「奴に限らない、俺達の幸せの妨げに為る奴等は片端から殺し尽くしてやる」
眉間に寄った皺は苦悩と哀しみの深さをありありと物語っているのに。
「そうして二人だけの世界で生きよう」
口許に浮かべる笑みは自嘲する其れではないと確かに感じたのだった。
「…今朝のプロポーズは一際情熱的でいらっしゃる」
その決意を無為と吐き捨てる心算は毛頭無かった。
「病院のベッドで一戦交えるのも一興ですね、此方は御覧の有り様ですが受け身なら何の事はありませんし」
御互いの経歴を思えば、自然に幸福が降りてくる事は決してない。寧ろ自然な流れに身を任せればこうなるのだと言う教訓が得られたのは僥倖と言って差し支えない。
「だから」
ならば
「沢山注いで下さいね?」
無数の屍の上に愛の城を打ち立てる事に何の気兼ねが有ろうか。
許可を出すが早いか覆い被さってくる。垣間見える男気は虚勢か本心か。此れでもし壊れ物でも扱うように触れてきたら渾身の力で噛み付いてやろうと決めていた。後にして思えば杞憂で終わったのだけれど。
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