14-1

~14-1~


 何時如何な意味に於いても、自分は荷としか成り得ない。最初から分かり切っていた事なのだから、最早揺るぎ無い事実として受け止めている。と言うより、そうする他に仕様が無い。抱き上げられる度、食事を与えられる度、身体を重ねる度、込み上げる負い目にも漸く目を背け全て委ねられる境地に至る事が出来た。


 当然に享受するには施しが重すぎる?そんな疑問も埓外に追い遣って、只管に想いを寄せ合えれば幸せなのだと。思い込む事で心を安んずるのではなく、衷心から幸福に身を浸すことが出来ていた。


 「あぁこの人は、自分を愛し育み守る事に終生を費やすを善しとするのか」と、気付くことが出来た。


 懸念が、無いわけではない。惚気ていると言われれば其れまでなのだけれど、近頃は、少し、大事にし過ぎる。


 初めての情交よりも遡ってあの人の態度を思い起こすと、其れ以降と較べてやや素っ気なかったのではなかろうかと、主観が混じっては実際の確かめようも無いのだけれど。甘やかで、気障りで、こそばゆい言い回しが増えた様に感じるのは、自分の方が意識し過ぎている所為なのか。然程に悪い気はしないで居る自分にも非が有るのだろうか、面に出した覚えは無いのだけれど。


 時折、不安にもなる


 「もしも自分が離れる事が有ったなら、貴方はどうなさるのでしょうか」

 自分ならば耐えられない、その自負が有るが故に、一層案じられてしまうのだ。自分が貴方の悲しみの種になってしまうのは、この身が千々に引き裂かれる痛みに勝るだろうと。


 「引き裂かれる身体も、言う程には残って居ないのだけれど」と付け加えるのは、我ながら悪趣味だ。暗くなっていく視界の中で、自嘲の笑みが自然と浮かんでくる感触だけが鮮明だった。

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