11-1
~11-1~
自身の判断に間違いが有ったとは、今でも思わない。
何事もなく会合が終われば御の字、その時は報酬を断って彼と共に酒場を冷やかしに行く予定だった。有事に際しても、屋敷に彼を一人にするリスクを冒すよりは傍に置いておくべきだと思った。
どちらかが欠けるくらいなら諸共に、と言うのは私だけの考えではない。その筈だ、此れはエゴイズムではない。そう自身に言い聞かせながらテーブル越しに引き金を引いている私がその一言にどれだけ救われているか、彼には自覚が無いのだろう。まるで事も無げに良い放っている。当然の事だと言わんばかりに。
「頭数は減らしました、攻勢に出ます」
自信をつけた私は老紳士に申し出る。
「無理はするな、直に応援も来るだろう」
返答は常からは珍しく命令口調だった。
「向こうもそれは分かっているでしょう、突入を強行されれば押し切られます」
此方の戦力は実質二人、屋外の警備に就いていた構成員がどれ程残っているかは不明だが相手の装備からして早急な救援は望むべくも無かった。
「確かに足並みを乱してやらにゃあ今にも突っ込んで来るでしょうな」
私の意見に同意した男は私の代わりに今にも飛び出していきそうな様子だった。
「此れの面倒を頼みます、我が儘の分くらいは貢献して見せましょう」
老紳士が渋々と言った様子で首肯するのを確認した私は傍らの彼に顔を近付けた。
「聞いての通りご主人様はお仕事だ、良い子で待って居られるな」
笑みを絶やさぬよう留意しつつ語りかけた。
「どうぞ存分に」
武勇を祈る言葉を簡潔に述べた彼が瞼を閉じる。触れさせた唇が震えているように感じたのは気のせいではなかったろう。
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