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~10-3~
「噂が真実だと仮定して、敵の作為に乗せられるまま会合を延期する事は出来ない」
「かと言って代役が過半を占める会合など論外だ、それこそどんな形で造反者が介入してくるか分かったものではない」
「相手の勢力規模も分からない状態だ、あちらに転ぶ人間が居るとは考え難いがこれ以上疑心の種を増やせばそれこそ取り返しがつかない」
手配師さんは仕切り直しと言わんばかりに喋り続けた。
「そんな内容の話を持って幹部連中の邸宅を一軒一軒訪ね歩き一人一人宥め賺して漸く『会合には全員が出席』と言う約束を取り付けたのが昨日の事だ」
再び語気が強まっていく手配師さん、結局愚痴になってしまっている事に自覚は有るのだろうか。
「それはお疲れ様でした」
淡々と労いの言葉を掛けるあの人、結局理由の説明になっていない事を遠回しに指摘しているつもりなのだろう。
「あぁ、済まない…それで警備の話になる訳なのだが、普段は各幹部の配下から2名ずつ決まった人員を供出しているのは知っているね」
無言で頷き続きを促すあの人。
「ところが手勢の少ない幹部たちはその配下も監視役に回してしまっていてね、単純に人数に不足が出ているんだ」
「元々先の派閥抗争からこっち暴力については掃除屋諸氏に一任する方針になっていた事も有って残った構成員だけでは戦力的に頼りない、私の配下でも鉄火場の作法を心得ているのは奴だけだ」
手配師さんの視線の先には長丁場に備え次の珈琲を支度する例の男が居た。
「かと言って不足を掃除屋では補えない、噂の件も有って幹部連中が納得しない」
「そこで奴の他にせめてもう一人腕利きを控えさせておけないか、そう思った矢先」
「『誰の味方でもない代わりに敵にも成り得ない』、そんな都合の良い立場に在る知己が居た事に思い当たってしまったと言うわけだよ」
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