第15話 回想と再会

「俺、この日にタカシと会ってるんだ」



「この日って、この留守電の日?」


「違う、カラオケの日だ。一昨日の夜だよ」


「え、マジで? それ凄い偶然じゃね」



 一昨日の22時頃の話だ。

 俺達は駅前のカラオケ店で、軽く飲みながら流行りの歌なんかを歌っていた。

 この店は飲んだ後とかによく使っている馴染みの店で、普段は空いているのだが、この日はやけに混んでいた。


 どうもプレミアムフライデーにちなんだキャンペーンが原因のようだった。

 通常より格安な上にビールも飲み放題で、店内からは酔っ払いの下手くそな歌が度々漏れ聞こえていた。


 中でもトイレの込みようと言ったらない。

 俺が用を足している最中にも、数人の柄の悪い男達が入ってきた。


 「かったりぃ」とか「飲み過ぎた」とか「気持ち悪ぃ」なんて気怠そうに、聞いてるこっちが滅入ってくるようなテンションでやってきたのだ。


 タカシと再会を果たしたのも、まさにその時だった。



 俺は最初彼がタカシだとはわからなかった。

 ガラの悪いヤンキーにしか見えなかったからだ。


 だからタカシから声をかけられた時はマジで焦った。

 数秒は固まったと思う。


 しかし「俺だよ、俺」と気さくに喋りかけるタカシの声に、警戒心はみるみる薄められていった。


 おぼろげながらも聞き覚えがある声に、興味が沸いていたんだと思う。


「タカシだよ、板垣タカシ」


 ようやく、そう本人から言われて、本当にようやく思い出す事が出来た。


 「ああ!」と声をあげた俺は、謎の感動に包まれていた。

 タイムカプセルでも掘り返したような感覚だ。

 そこに加えて、俺もタカシも酔っていた。


 酒も手伝ってか、もはや俺達の友情に横たわった数年と言う名の月日は、溝になりえなかった。


 タカシは見てくれこそ別人だが、一目で俺と気付いてくれたし、今でも友人と慕ってくれる。


 そんな彼に、俺はすっかり気を良くしていたのである。


 だが俺達が懐かしさに浸って居られる時間は、決して長くはなかった。


 世間話をしようとした瞬間、近くに居た男が「おい」とタカシを呼んだのだ。

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