第4話 オタクのカンタ

 視線をテレビから外せば、近くにアニメのブルーレイディスクが棚へズラリと飾られている。


 棚の上にはユーフォ―キャッチャーで獲得した戦利品。


 透明なショーケースに入れられ、目立つ場所へこれ見よがしに飾られていた。


これがオタクの勲章と言うやつなのだろう。


 俺には理解の及ばない趣味ではあったが、部屋の持ち主であるカンタにとって、ここは世界で最ももくつろげる、自分だけの聖域であった。



 カンタは俺にとって大事な友人だった。

 中学からの同級生で、出会ってから10年が経つ。


 親友とは彼を指す為にある言葉で、週末にはよく2人で飲みに行っていた。


 飲んで帰った次の日の朝は、決まって彼の部屋で目を覚ます。


 俺はいつも彼がテレビから流す、怪人がヒーローの集団リンチで大爆死する断末魔が目覚まし代わりだった。

 


 ふと部屋の奥からトイレを流す水音が聞こえてくる。


 音の方へ目をやると、小太りの男がフローリングを裸足でペタペタ歩いていた。


 眼鏡をかけた、天然パーマの男だった。カンタである。


 カンタは俺が起きたのに気づくなり「ヒロト、お前、やっと起きたのかよ」と文句を言った。


「お前テレビ見ねぇの?」


 と俺は訊ねた。


 カンタは「何時だと思ってんだよ」と溜息を吐き、テーブルの上の時計を指さした。


 驚いた事に、時間は午後の3時を過ぎていた。


 怪人は8時間近く前に死んでいた。

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