第2話 起床と着信
拾い上げた携帯の画面には、知らない番号が表示されていた。
知り合いからの電話ならまだしも、登録すらされてない番号から呼び起こされるとは。
番号を確認し、知らないヤツとわかった途端に億劫となるのは、多分俺だけではないだろう。
出来る事なら居留守を使って、どうにか電話をやり過ごしてやりたい。
そう俺は考えていた。
こういうと人は、少しばかり俺をドライな男と思うかもしれないが、
――誤解を恐れず言うなら、俺は知らない番号からの着信は出ないに限る、そう思っている。
しかし待ちに徹すると決めた途端、電話というやつは意固地にコチラへ呼びかけてくるのだ。
マナーモードの振動は「ブーブーブーブー」とブーイングをするように、俺へ「早く出ろ、早く出ろ」とはやし立てていた。
日曜の休みにこれ以上に煩わしいものなどない。
言い切ってしまっても構わない。
それほどの精神的圧迫を、目の前の携帯は俺に与えていた。
「まだ鳴るのか……」
過ぎた時間に比例して、心はジリジリと焦がされている。
仮病で会社を休んだ日に、居留守で訪問客をあしらおうとしている気分に近い。
……もういい加減にしてくれよ。それとも試しに出てみるか?
あれほど長い時間待っていたと思っていたのに、
実際は心変わりが起るまで、二分とかかっていなかった。
「もしもし?」
呼びかけると相手も『おぅお?』と返してきた。
どこか威圧する、乱暴な声かけである。
間違い電話だ、とすぐに俺は気づいたが「アンタだれ?」と尋ねるより早く、電話の男は文句を言った。
『やっと出たなコノヤロウ。今からソッチに行くからな、逃げんじゃねえぞ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます