第2話 起床と着信

 拾い上げた携帯の画面には、知らない番号が表示されていた。

 知り合いからの電話ならまだしも、登録すらされてない番号から呼び起こされるとは。


 番号を確認し、知らないヤツとわかった途端に億劫となるのは、多分俺だけではないだろう。



 出来る事なら居留守を使って、どうにか電話をやり過ごしてやりたい。

 そう俺は考えていた。


 こういうと人は、少しばかり俺をドライな男と思うかもしれないが、


 ――誤解を恐れず言うなら、俺は知らない番号からの着信は出ないに限る、そう思っている。


 しかし待ちに徹すると決めた途端、電話というやつは意固地にコチラへ呼びかけてくるのだ。



 マナーモードの振動は「ブーブーブーブー」とブーイングをするように、俺へ「早く出ろ、早く出ろ」とはやし立てていた。



 日曜の休みにこれ以上に煩わしいものなどない。

 言い切ってしまっても構わない。


 それほどの精神的圧迫を、目の前の携帯は俺に与えていた。


「まだ鳴るのか……」


 過ぎた時間に比例して、心はジリジリと焦がされている。

 仮病で会社を休んだ日に、居留守で訪問客をあしらおうとしている気分に近い。


 ……もういい加減にしてくれよ。それとも試しに出てみるか?


 あれほど長い時間待っていたと思っていたのに、

 実際は心変わりが起るまで、二分とかかっていなかった。


「もしもし?」


 呼びかけると相手も『おぅお?』と返してきた。


 どこか威圧する、乱暴な声かけである。


 間違い電話だ、とすぐに俺は気づいたが「アンタだれ?」と尋ねるより早く、電話の男は文句を言った。


『やっと出たなコノヤロウ。今からソッチに行くからな、逃げんじゃねえぞ』

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