第52話 幕間 ~ 第三勢力の野望
「ロノマフ卿。例の船が見つかったそうだ」
仮面舞踏会の会場で、ラーニアスは壁際でくつろいでいたひげ面の男にそう話しかける。
蝶の形のマスクをつけているが、知り合いが見ればそれが誰だかはすぐわかるようだ。四十代半ばの衰えた肌の感じでその頬には切り傷がある。さらに特徴的な口ヒゲは顔を隠す意味がないともいえた。
そしてラーニアスは、手にしていた二つのグラスのうちの一つをひげ面の男、ロノマフへと渡す。中身は血のように赤いワインだった。
「ああ、ありがとう。そうか、見つかったか。だとするとあの宝の地図もまんざらニセモノでもなかったのかもしれん」
「キアサージの研究施設はその船に襲撃されたようだ」
「ふふ、ざまあないな。超技術の兵装など、あのペンに比べれば大した宝でもないのに」
ロノマフは口を歪めて片方の口角をあげると、続けて言葉を綴る。
「して、その船を見つけたのはどこの国だ? リュージョーか? ヴィッテルスバッハか?」
「そのどちらでもないらしい」
「連合国側ではないよな? キアサージに攻め入っているのだから」
「今のところは所属不明の勢力といった方がいいだろう。我が諜報部も全力で情報を集めている」
「ラーニアス卿でもまだ把握できていないのか。まあよい。この戦争のバランスを著しく狂わすような技術は危険だからな。どちらの手に渡るのもあまり良い傾向ではないだろう」
「魔法のペンは危険じゃないと?」
「そうだな、インフレキシブルの奴らにペンの存在を知られたのはまずかったな」
「諜報部からの情報では、彼の国ではペンを使って怪物を作り上げたらしいが。ロノマフ卿はどう思う?
「奴らには使いこなせんよ。古臭い伝統に縛られた島国だ」
「だといいが、まあしばらくは静観ですな」
「ああ、共倒れ、もしくは疲弊してくれるのを待つだけだ」
「そして、時が来たら」
「我らがその利を得る」
ラーニアスとロノマフは互いに顔を合わせて笑いあった。
そして、グラスを近づけて乾盃をする。
「我が同志とロスチスラフの栄光に」
「祖国は我らの為に」
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【第二章】は、これにておしまい。
次回【第三章 現地の女の子とだって仲良くなる! 出逢いから始まる異世界交流生活】へ続く!
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