第43話 魔力注入
救護室で眠っていた
「ハルナオさまは?!」
「よかったぁ。ハルナオさま無事だったんだぁ」
「舞彩と
ベッドの周りには舞彩と
「舞彩姉さま、それから
「
「へ? もしかして4ピ――」
「
「うん、それは自覚してた」
「だからね。わたくしたちの介在でご主人さまの魔力を
舞彩の言葉に
「こうやって、あなたのお腹に左手をあてて、右手はご主人さまの手を握ったの。
「舞彩と
「え?」
「
「あ、あの……ハルナオさま。メルとエッチなことしたんじゃなくて?」
「そんなことできるかよ! おまえ瀕死の状態だったじゃん」
「いやぁあああああ。メルたのしみにしてたのにぃぃぃ」
メルが狂ったように叫び出す。その姿を見てため息を吐く
「元気そうだね。あたし、艦橋戻るわ」
「そうね。
そう言って二人は救護室を後にする。
残されたのは俺と
「しかしまあ、あんな方法もあったとはな。魔力注入」
「そりゃ、抱き合うよりは早いですけど、体液の方がもっと効率がいいですよ」
「舞彩がな、本人の受け入れ意志がない状態での体液注入は危険だって言ってたんだ。受け取る側で魔力吸入の調整ができなくなるから、最悪の場合過剰摂取で我を失うって」
「うん、知ってる……あー!!! なんでメル、気を失っちゃったかなぁ」
頭を抱えて苦悩するように髪をかき乱す
「まあ、しかたないよ。緊急事態だったんだからさ」
「そうですけどぉ……ま、いっか。消えなかったんだから、まだチャンスはありますよね」
項垂れた顔を首だけこちらに向けて、
「そのうち、かわいがってやるから待ってろって。それより、あんまり無理すんな」
「じゃ、じゃあ、今晩、ハルナオさまの寝室に行っていいですか?」
「バカ、おまえ今魔力満タンだろうが。これ以上俺から搾り取る気か?」
「いえ、そういうことじゃなくて……えーと、そうですね。スポーツみたいにですねぇ……」
まあ、そういうエッチの楽しみ方もあるみたいだが、今はどうでもいいや。いつものように
「それよりさ。おまえの魔法、かなりの威力があったよな。地上で使われなくて助かったよ」
「そりゃ、ハルナオさまに虐殺はやめろって止められていましたからね」
「だから空で魔法を生成したのか」
「そうです。爆撃機をギリギリで撃墜できる高度を計算して、大変だったんですから」
「でもな、あれだけの威力があるなら高高度爆発を試してみてもよかったかもな」
ホーキング放射で放出させるガンマ線は、大気中の分子に作用して電磁パルスとなり地上に降り注ぐ。そうすれば地上の兵器が使い物にならなくなった可能性もある。
「ああ、そんな方法もありましたね。けど、確実に影響を起こせるかわかりません。この世界の機械だと、わりとアナログなものが多いですから」
「そうだったな」
彼女は命令に従うだけの人形なんかじゃない。人間と変わらない自我を持っている。
「今度実験してみます?」
「大変だからいいよ。
「大丈夫です。またハルナオさまに魔力を注いでもらえばいいんですから?」
「いいのか?」
また舞彩に手伝ってもらって五時間ほどかけてゆっくりと魔力を注ぐ。けど、それは彼女が望む方法じゃないだろう。
「あ……やっぱダメです。魔力注入はメルが目覚めている時にしてください」
「だったら、あの魔法は封印だな」
「そうですね……封印ですね」
俺は立ち上がると
「俺も
「わかりましたよ……ぶー」
「ハルナオさま」
「ん? なんだ」
「ありがとうございます。メルを消させないでくれて」
そんなの当たり前だって。
俺は無言で手を振り救護室を後にした。
**
第一艦橋に戻ると、俺はエクニル島の状況をモニターに表示されたデータで見る。
高射砲……もとい、戦艦の兵装である対空機銃が消失したのと、司令部の建物が壊滅したってのは知っているがそれ以外がどうなっているのかが気になった。
そう思って周辺を含めたキアサージ軍の損害状況表を見る。
駆逐艦十二、巡洋艦八、戦艦二、航空母艦三、すべて行動不能にしているのか。
これって、
なんだよ。戦艦の主砲なんかなくても、うちら無敵だな。この分だと、魔法のペンはすぐに揃うんじゃね?
俺TUEEE!!!!!!!
――そんな風に考えていたのは三時間前の話。
「撤退だ! 龍譲帝国方面に逃げろ!」
「あははは……さすがに敵多すぎだね」
というのも、次の目的地であるキアサージへと向かおうとしたところで、海岸沿いに配備されていた艦隊と交戦することになったのだ。
最初は一艦隊だけだった。
航空母艦一隻を中心とする中規模の艦隊を相手にしていればよかったのだが、増援を呼ばれたらしくその数はどんどん膨れあがっていく。
二十門ある対空機銃のおかげで航空部隊は退けることができたが、艦砲射撃を集中され、魚雷を撃たれまくり、仕方なくキアサージにある×印への進路を諦めることになった。
「追いつかれます」
「千メートル以内に入ってきたら、ジェットアンカーで各個撃破する。亜琉弓、左舷のジェットアンカーの制御を頼む。今、火器管制補助をおまえの席に移譲するから」
「わ、わかりました。おまかせください」
しばらくはそれでウザい巡洋艦を牽制していく。駆逐艦に関しては、対空機銃を水平掃射して銃弾を撃ち込むだけだ。
装甲の薄い艦ならこれで航行不能まで追い込める。これで近距離で魚雷を発射されることはない。
「舞彩、魔導防壁はあとどれくらい持ちそうか?」
「あと三時間が限度でしょう。かなり被弾していますからね。その後、防壁コアの冷却に一時間ほどかかりますよ」
俺は現在位置の地図を出して、余裕を持って一時間後の位置を割り出す。よし、なんとかギリギリで龍譲の海軍基地のあるレーダーの範囲内に入れるな。
これで龍譲の艦隊を誘いだして、漁夫の利を得るという作戦もとれる。ただ、今のままだと、今度は龍譲の艦隊と交戦しなくてはならない。
この作戦の成功率を上げるためにはもう一手間必要だ。
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