第13話 ロリータレンピカの香り

 城に戻るとちょっと遅い昼食を恵留エルに作ってもらい、それを平らげてから三人目の使い魔の絵にとりかかった。


 イメージは城へ帰る途中のゴーレムの上で膨らませてある。元ネタは、大学自体にロリッに目覚めた時のオリジナルキャラだ。


 十三歳。ロリータレンピカ。六女。それらのキーワードもぶちこんで昔描いたキャラと融合させる。


 ちょっと小悪魔的なロリータ。ゴスロリ系かな。


 キーワード自体がなんだかヤバそうではあるが、創作に羞恥心など持ち込むべきではない。己の欲望に正直になるのが絵描きたるべきもの。


 丸顔に好奇心旺盛な瞳。


 髪型はショートのボブ。前髪は毛先に少しシャギーを入れた感じで、サイドは段々になるようにカット。頬に少しかかるくらいのサイドの髪は、丸顔をほっそり見せるという裏設定があったっけ。


 十三歳だから、身体は華奢で胸はなだらかに。背も恵留より小さい。


 前の二人と違って、イメージする時間はたっぷりあったので、余裕を持って描くことができた。


 服装もお約束のゴスロリ服ってことで落ち着く。ってことで三時間くらいで線画をかき終えた。


 後は魔法とかの設定か。


「闇は属性としては曖昧ですよね。日記の内容から解釈すると、月の属性とも受け取れます。それと、情報収集、解析、通信に関する魔法を設定されるのがよろしいかと」


 舞彩マイが日記の内容を覚えていて的確にアドバイスしてくれる。と言っても、俺の知識が共有されているだけなのだ。まあ、物覚えが悪い俺に代わって記憶してくれるメモ的な感じなのかな。


 しかしまあ、わりと使えそうな魔法を設定できるのはありがたい。


「なるほどな。この世界がどんなところなのかもわからない今、こいつの情報収集や解析に関する魔法は役に立ちそうか。攻撃系はどんなやつができそうだ?」

「そうですね。ゾンビを操る屍傀儡リモートデッドとか、スケルトンを召喚する死霊召喚ゴーストサモンでしょうか。あとは即死魔法デスマジック……これは強力ゆえに、設定しても発動にいろいろ条件がつきそうですけど」


 闇魔法ってのは直感的に思いつかないので、いろいろと案を出してもらえるのは助かる。


「そりゃそうだな。即死なんてある意味チートだからな。あとは……ダークマターとかマイクロブラックホールとか設定してみるか。というか、これ全部マジで使えたら、恐ろしいな」


 下手すりゃ星ごと消滅なんてことになり得るから恐ろしい。ある程度は、力を制御しておいた方がいい気もする。


「そうですね。ゲームの中ですと他の属性魔法と変わらない威力でしょうけど、実際に使うとなると……特にマイクロブラックホールは使い方を間違えると自滅することになります」


 舞彩も同じ結論に達したようだ。味方まで巻き込む究極魔法ってのはマズイだろ。


「怖いな。かといって設定しないのも、もったいない」


 そんな舞彩の意見を参考にしながら、様々な魔法を設定していく。


「恵留はなんか希望はあるか? おまえの妹でもあるし」

「え? えーと、通信関係の魔法はどうかな? テレパシーとか獣を操るとか」

「なるほど、今はスマホとか使えないからな。仲間内で通信ができるのはありがたい。それいただくよ」


 俺がそう言うと恵留は赤くなって俯いてしまう。まだ、慣れてないのか。というか、女性が苦手の俺は気にせず話しかけられるって方が不思議なんだけどな。


 あとは獣を服従させる、もしくは操る魔法か。ビーストテイマーってことだよな。


 と、それを書いたが消えてしまう。闇属性とは違うのか? まあいいや。テレパシー系は設定できたからな。


「さてと……」


 俺は一旦筆を止めると、深呼吸をする。


「名前はどうされますか?」

「それは決めてある」


 壁の余白にそれを書いた。


愛瑠メル


 プレイアデス七姉妹のメロペをアレンジした名前だ。


 名前が決定したことで、今までの二人と同様に光と共に立体化していく。

 そしてお決まりのハンドベルの音が鳴り響くと、俺の前に実体化した少女の姿が現れた。


 髪は黒だが、今まで実体化した子のように漆黒ではなく、特殊な色味を持っている。この子の場合は角度によっては黒の中に藍色の輝きが見えた。


「はじめまして、ハルナオさま。メルを実体化してくれてありがとうございます」


 彼女はクラクラするような甲高い甘いロリボイスで挨拶すると、そのまま俺に抱きついてきた。


 むせるような甘い香り。ロリータレンピカの匂いに包まれる。


愛瑠メル?」


 その様子を見ていた舞彩が「あらまあ」と少し驚いた顔を見せ、恵留は何が起きたのか理解できていないように表情が硬直していた。


「ハルナオさま。さっそくですが、魔力を注入してください」

「お、おまえ、わかってるのか? 魔力の注入ってのは――」

「ええ、○ックスですよね。さあ、ベッドに行きましょう」


 待て待て待て。そういや、俺、こいつを何歳の設定にしたっけ? そりゃ実年齢とは関係ないけど、見た目は十三歳だろうが。


 これ、ちょっとヤバくね?


愛瑠メル、ちょっと待って!」


 恵留が俺たちの間に入り込んできて、無理矢理、愛瑠メルを俺から引きはがす。


「恵留姉さまどうしたんですか? ただの魔力注入じゃないですか。姉さまだってやってもらっているんでしょ?」

「ま、まだよ!」

「え? でも、そうしないと愛瑠メルたち消えちゃいますよ」

「そ、そういうのはまだ早いっていうか」

「ハルナオさまぁ。愛瑠メルたちってあと二週間でお払い箱なんですか?」


 愛瑠メルが俺を不安げな顔で見上げる。


「そんなことはしない。おまえら全員、ずっと一緒にいてもらうつもりだ」

「わぁーい!」


 俺のその言葉で、愛瑠メルが恵留を振りほどいて再び俺に抱きついてくる。


「だから! まだ早いの。まだ時間はあるでしょうが」

「えー、いいじゃない姉さまぁ」


 恵留が再び愛瑠メルを引きはがしにかかる。なんだ、この状況は? いわゆる修羅場? いやいや、愛瑠の方はなんだか楽しそうだな。


 とはいえ、原因は俺なんですけどね。


「まあまあ、恵留も愛瑠メルも喧嘩はやめなさい。ご主人さまにご迷惑がかかるわよ」


 舞彩が苦笑しながら仲裁に入る。


「だって、恵留姉さまが」

「そうじゃないでしょ! 愛瑠メルが強引なのよ」


 昨日生まれたばかりの恵留と、たった今生まれた愛瑠メルが、もう何年も暮らしていた姉妹のように喧嘩をしている。ある意味微笑ましい状況でもあった。これも魔法のペンのナンバリングの影響なのか。


愛瑠メル。ご主人さまはね。相手をじっくり知ってから愛を育んでいくタイプなの。何事にも順番というものが大切なのよ。いきなり身体を預ける子はご主人さまの好みでないみたいなの。愛瑠はご主人さまに嫌われたくないでしょ」

「うん」


 愛瑠メルが舞彩の言葉に素直に頷く。


「だから、一歩一歩順序よく愛を育めばいいのよ」

「順番にってこと?」

「そう」

「わかった、舞彩姉さま!」


 そう言っていったん離れる愛瑠メルだが、何を思ったのか俺のズボンのベルトを外して、脱がせ始める。


「め、愛瑠メル? 何をしてるのかな?」


 俺は目を輝かせた彼女を見下ろしながらそう聞いた。


「えっと……下から順番に?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る