第38話:久々の登場

部屋に入ると客がいる為かドアの横に立っていたエメさんがすぐに俺達に気づき


「旦那様。体調は……まだ良くなさそうですね。何かご用事でょうか? 私的には今すぐ部屋にお戻りになって、お休みいただきたいのですが」


「俺もそうしたいんですけどね。なんであいつがここにいるんですか?」


「私達が丁度帰ってきた時にルナ様とお城の近くでお会いしまして、お話をお聞きしたところ旦那様のお知り合いだということでしたのでお招き致しました。一応ミナ様にご確認頂いたので大丈夫かと思ったのですが、駄目だったでしょうか?」


恐らくミナに確認させたというのは、あいつが嘘をついてないかどうかってことだろう。それで嘘じゃないとなれば入れざるをおえない。


つか、何がルナだよ。どっからルナなんて名前がきたのさ。アマテラス→太陽→月→ルナってか? それもうアマテラス関係ないからね。


「いえ、大丈夫です……。そんなことより雑炊ありがとうございました。お粥より食べやすくて助かりました」


「そんなお礼を言われるほどのことでは。これも私の仕事ですので」


「こやつ、熱で味覚が狂っておるせいで味が薄いなどと文句を言い出しおって、エメの目を盗んで醤油を足そうとしておったがの」


「流石にいつもの味付けで出すわけにもいかないと思い薄味にしたとはいえ、病人の方でも大丈夫なギリギリの量までお味を濃くしたのですから、そんなことをしてはいけませんよ」


こいつ、余計なことを言いやがって。お陰でエメさんにまで子供扱いされ……いや、割と最初っからされてる気がする。


とか考えていると俺らに気付いたセリアがこちらに走ってきて


「ねえねえ聞いてソウジ! ルナが私のことを不老にしてくれたの。だからずっとこのままの姿でいられるからいつまでも貴方に抱っこしてもらえ―――ちょっとソウジ?」


俺はセリアの言葉を最後まで聞かず、居間で子供達と遊んでいる駄女神の所まで胸倉を掴む勢いで近づき


「おいお前‼ セリアとあと他に誰の体を弄った! つか、今度は俺みたいに何か体に影響が出てたりしてないんだろうな!」


「久々に会ったのにいきなり怖いわね~。そんなんじゃ子供達に怖がられて嫌われちゃうわよ」


「いいから俺の質問に答えろ!」


「はいはい、分かったわよ。私の力で不老にしたのはセリア・ミナ・リアーヌの三人。つまりはあんたの女だけ。そもそも自分だって同じようなことしてるんだからいいじゃない」


「俺のことはどうでもいいんだよ。三人の体への影響は?」


「さっきも言ったけど、あんただって同じことやってるんだから自分の体に影響がない限りあるわけないでしょ。それくらい少し考えれば分かるでしょうに」


そんなこと言われなくても分かってるっつうの。お前がやったから心配なんだよ。……でもパッと見た感じでは大丈夫そうだな。


「ティア、椅子」


「わらわは椅子ではないし、体調が悪化したのなら部屋に戻れい」


「まだこいつと話すことがあるから無理」


若干渋りながらもティアは椅子を持ってきてくれたのでそれに座ると


「ちょっと! なんで私の椅子はないのよ!」


「お主のせいでこやつの体調が悪化したから嫌じゃ。少しくらい立っておれ」


「なにこの子供。私に厳しすぎない?」


「こいつ一応420歳らしいぞ。……つか、神なら椅子くらい自分で出せよ」


「へ~、これが噂に聞くロリババアってやつなのね。あんた、ロリババアとロリ巨乳を自分のメイドにするとか性癖偏りすぎでしょ」


「別に俺が連れてきたわけじゃない。最初っからいたんだよ」


「ちょっと、自分のお嫁さんに向かってその言い方はどうなの?」


セリアはそう言いながら俺の膝の上に座ってきたので落ちないよう後ろから軽く抱きしめる感じにしてやると、今まで黙っていたミナが少しふくれっ面になり


「何ですかその羨ましい態勢は! 私もして欲しいです!」


「んなことより先に聞きたいことがあるんだが……。セリアは兎も角なんでミナ達まで不老になってんだよ。二人は長命種なんだからそのままでいいだろ」


「だってソウジ様とセリアさんだけ不老なのはズルいじゃないですか。私達もソウジ様と一緒にいたいです」


「今はそう思ってくれているかもしれないけど、ずっとそうとは限らないだろ。もし死にたくなったらどうするだよ。二人なら不老になることのデメリットにも気付いてるはずだぞ」


さっきティアも言っていたがセリア・ミナ・リアの三人は俺より頭が良い。その為こんな簡単なことすぐに気付いているはずなのだ。


「そもそもマリノ王国の王族はハイヒューマンの一族。その為私達が普通の人間の方と結婚するとなると、当然寿命の問題が出てきます。ちなみに私のお母様は普通の人間ですよ」


「ですが奥様…お嬢様のお母様は王家に代々伝わる特別な指輪をつけているお陰で今は完全に成長が止まっています。その為今でもとても美しいお姿を保っておられますよ」


ミナの母親が20歳とかで結婚したと考えた場合その歳で成長が止まるから……それもう見た目だけで言ったら姉じゃん。


「ここで先ほどソウジ様が言っていたデメリットの話になりますが、マリノ王国の王族と結婚した方の為にコールドスリープという物が用意されています。今までの記録によると、皆さん結婚相手が亡くなられた後に自分も一緒にという感じで使われているようです」


「自殺するのは勿論、安楽死も気持ち的に嫌だがコールドスリープなら実質寝てるだけだからまだ良いってか?」


「初代国王の奥様が先ほどご主人様と同じようなことを仰られたのが切っ掛けで、何千年と時間を掛けて作られたそうです」


「つまり、人生が嫌になってもそれがあるから大丈夫ってか……」


俺は心の中で、出来れば三人には死んでほしくない…ずっと一緒にいてほしいっと思いながら、それはただの我儘であって絶対に本人達に言ってはいけないと自分に言い聞かせながら……セリアの腰に回していた腕の力を少し強めた。


さっきからずっと自分の二の腕にセリアの下乳が当たっていて気持ち良かったけど、抱きしめる力を強めたお陰で感触が鮮明になって気持ち良さが段違いになったな。………普通に手で触りたい。ってか揉んで―――


(ソウジのえっち)


(……なんのことか分からないな)


念話でそんな会話をした後、セリアは普通の声で


「まあ最初はそんなつもりでやったんじゃないっていうのは分かっているけれど……。ずっと私達と一緒にいたいなら、私達がソウジと一緒にいたいって思えるように頑張ることね。もちろん私達も頑張るけれど」


「そうですよソウジ様。結婚生活というのはどちらか片方だけが頑張るのではなく、お互いが頑張らなきゃ駄目なんですよ」


「まだ結婚どころか婚約もしてないだろ」


それどころか両親に挨拶すらしてないし。


「そういえば、ご主人様の場合は私の治癒魔法でも熱が下がりませんでしたが私達はどうなるのでしょうか?」


確かにそこら辺は聞いておきたいな…っと思いルナのことを探すと、ソファーに座っているアリス達と何やら話していた。ちなみにソファーは子供達が占領している為あいつは立っている状態だ。


「ねえアリス。私の膝の上に座っていいからソファーに座らせてくれない?」


「お兄ちゃんは具合が悪かったのにルナお姉ちゃんのせいで悪化したので嫌です」


「ええ~。じゃあサラは?」


「ソージ兄ぃに怒られたんだから立ってた方がいいよ」


「いやいやいや、私怒られてないからね」


「おい駄女神、ちょっと来い」


「誰が駄女神よ! 私は日本で一番有名と言ってもいい程の神様よ!」


今普通に自分のことを神とか言ったのに誰も反応しなかったってことは、ある程度は皆に話したのか? 気になるしこっちを先に聞いておくか。

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