第39話:どこまで話したの?

駄女神という言葉に反応したルナは俺に対する文句と、少し気になることを言いながらこちらにやって来た。


「おい、お前自分のことをどこまで話した?」


「どこまでって、あんたとの関係を含めて全部」


「はあ⁉ 全部ってことは……全部?」


「だって最初は適当に誤魔化そうとしたんだけど、ミナに全部バレちゃうんだからしょうがないじゃない」


確かにミナは相手の嘘を見抜く能力を持っているけれど、神ならそれくらいなんとかしろよ。もし他国の王貴族にバレたら俺のところに暗殺者やら、何とかして仲良くなろうとしてくる奴らが押し寄せてきそうで嫌なんだけど。


「もしかして今マイカがいないのって……」


「マイカさんには申し訳ないのですが、内容が内容でしたので資料としてまとめてもらっています」


外に出回れが大騒ぎ確定の資料を一人で作成してるマイカって何者だよ。肝が据わりすぎだろ。


「ご主人様は極秘事項の塊ですね。また知られてはいけない秘密が増えましたよ」


「私ならこの国を敵に回すのだけはごめんね」


「お主、このルナという者とどんな関係なんじゃ?」


「面倒くさいから後でマイカが作った資料でも見てくれ」


面倒くさいというのも本当だが、自分の口から働きたくないから異世界で王様やりたいって神に頼んだなんて恥ずかしくて言えない。


「それで、私に何の用なのかしら。今子供達と交渉中なんだけど」


「さっきも言ったが椅子くらい神の力で出せよ」


「私の家は和風建築だから椅子なんて持っていないの。家にあったとしても一々持ち歩いたりなんてしないし」


「じゃああそこにあるから自分で持ってくればいいだろ」


そう言いながら俺はリビングの方を指さすと


「嫌よ面倒くさい。魔法で引き寄せられるならまだしも、あんたがこの建物の周辺に変な結界を張っているせいでそれも出来ないし」


「んあ? いくら俺がチートとはいえお前は神なんだから、こんな結界余裕で無効化できるだろ」


「本来の私なら出来るけど、人間界に降りてくる時は基本仮の体で来るから極端に力が制御されてて無理なのよ」


「ふ~ん……。まあそんなことより一つ聞きたいことがあるんだけどさ、ミナ達を不老にしたのは分かったけど何かデメリットとかないのか? 一応こっちの世界でも不老になる方法はあるらしいんだけど、どうも病気関係は治癒魔法でも治らないらしんだがそこら辺はどうなるんだ?」


「私は神なのよ。人間が作った不老魔法より高性能に決まってるじゃない」


その魔法を作ったであろう関係者の前でそこまで偉そうに言えるとは、流石は駄女神。


「それじゃあ私達は不老になっただけで、あとは何も変わりないってことでいいのかしら?」


「それだけじゃなくセリアの場合は一旦不老状態を解除して、大人の体になったらまた不老にすることも出来るわよ。まあ流石に大人の体から子供の体に戻すのは無理だけど」


最後の部分、なにドヤ顔で言ってんだよ。俺が犠牲になるまで知らなかったクセに。


「それじゃあソウジが私の体に飽きたとしても、もう一度誘惑出来るってことになるわね」


「その言い方だと俺がクズ男みたいじゃねーか」


「でもこいつの場合既に三人もお嫁さんがいるのだし、セリアはそのままロリ巨乳でいいんじゃない? 他のタイプは別の子達に任せればいいんだし。もしあなた達だけじゃ物足りないってなったとしても他の女の子をお嫁さんに追加すればいいだけだし」


「人を女好きのクズみたいに言うな」


「こっちの世界に来てからまだあんまり経ってないのに三人も女の子を囲っといてどの口が言ってんのよ」


「たまたまタイミングが重なっただけで、増やそうと思って増やしたわけじゃない」


なんか言い方が悪いような気もするが事実なのでしょうがない。


「あの、ルナ様。お話の途中で申し訳ないのですが一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「別に私が答えられることなら何でもいいわよ」


「私達は不老のままでも病気を治癒魔法で治せるとのことでしたが、ご主人様はどうなるのでしょうか? 私としてはご主人様にも同じ魔法をかけて欲しいのですが……」


「あ~、それね。私も最初はついでだしやってあげようかと思ったんだけど、私の力不足とかじゃなく普通に出来なかったのよね」


『なんでかしら?』みたいな顔しながら言ってんじゃねーぞ。思い当たる理由なんて一個しかないだろうが。


「どう考えてもお前のせいだろ。見た目が厨二になっただけじゃなく自分で自分に回復魔法が使えない次はこれかよ。あれの副作用多すぎるぞ」


「私も初めてやったんだからしょうがないじゃない。それにワザとじゃなく親切心でやったんだからもう許してよ」


「ん? あれの副作用とはさっきお主が言っておったやつかの?」


「ああ。俺の見た目が変なのも、二日酔いで苦しんだのも全部こいつのせいだ。更にもう一つ追加されたがな」


………あれ? なんか俺の周りの空気が一気に変わった気がするぞ。殺気とかよく分かんないけど、多分それに近いものじゃないかこれ。


「ちょ、ちょっと、いきなり皆して怖いんですけど……。これ全員あんたの女と専属メイドでしょ⁉ なんとかしなさいよ!」


なるほど。この殺気ぽいのを出してるのはミナ・リア・セリア・ティアの四人なのか。流石は神、俺には誰かまでは分からなかったぞ。ついでに怒ってる理由も分からないからどうにもできん。


「お主が神だかなんだか知らんがの、こやつに危害を加えたというのなら容赦はせんぞ」


「私達を不老にしてくださったことには感謝しますが、ソウジ様を苦しめている原因を作ったのがあなた自身だと言うのであれば話は別です」


あ~、この四人はそれに怒ってるのね。


「いいぞ! もっと言ってやれ!」


「なに煽ってるのよ! 病人は大人しくしてなさいよ! う~~ん。でっ、でも、こいつに治癒魔法が効かないことによって貴方達は本来できなかったはずの看病が出来るんだし良かったじゃない。それに本当にマズイ時は私が何とかするし……」


なにその信用ならない言葉。逆にお前のせいで病気が悪化して死ぬの間違えだろ。


「う~ん、確かに熱で弱っているソウジは凄く可愛かったし…キスもさせてくれたから有りと言えば有りね」


「これからもご主人様のお世話を出来るとはいえ、本来看病が出来なかったはずの方にそれが出来るようになったと考えると……悪くないですね」


えーーー⁉ なんで君達納得しちゃってるの。なんか言ってやれミナ!


「じっ、実は私も熱でちょっと頬を赤くしていたソウジ様の寝顔が可愛くて……キスしてしまいました♡」


よくそれでルナに怒れたな。本来ならこいつに感謝すべき立場だろお前。


「………こやつの女子三人が納得しておるというのもあるが、強すぎる力を持っておる者でも普通の人間と同じで病気にもなるし、なんなら若干病弱ということを周囲に見せて安心させるというのも悪くないのう」


最後のティアの言葉だけは納得せざる負えないのがなんか悔しい。……あとルナはドヤ顔すんな。


「熱で気付いたのだけど…ソウジの体なんだか熱くない? 私が膝の上に座ったばっかりの時はこんなに熱くなかったような……」


そんなセリアの何気ない言葉を聞いたティアは背中から羽を出し、俺の目の前まで飛んできてオデコに自分の手を当ててきた。


「………かなり熱が上がっておるではないか⁉ ここに来る前から怪しいとは思っておったが、なんで言わんのじゃ!」


「言われてみれば熱いような? でも丁度良い気もするんだが」


「それはお主が寝る時冬でも関係なしに半袖半ズボンで寝ておるから熱のせいで丁度良く感じておるだけじゃ。ほれ、わらわがベッドまで運んでやるからもう大人しく寝るのじゃ」


どうやって運ぶんだ? とか思っていたのもつかの間、ティアは飛んだまま俺の後ろに回り体ごと持ち上げた。


ロリババアの状態で俺のことを持ち上げるとかスゲー。太陽の光に弱いとかはデマだったけど力持ちってのは本当なんだな。


「あっ、おいルナ。日本に行ってうどん買ってきてくんね」


「なんで私がおつかいなんてしなきゃいけないのよ。しかもうどんって……」


実はここに来る途中の廊下でティア経由でエメさんから何が食べたいか聞かれていたのだが、この世界の病人食というか消化にいい食べ物はどれもパンを使う物かスープ系しかないらしい。


なので昼とは違う雑炊を頼もうかと思っていたのだが、丁度俺以外で日本に行ける奴がいたので頼んだのだ。


「元はといえばお前が来たから熱が上がったようなもんなんだからスーパーくらい行ってこいよ」


「もう時間切れじゃ。ルナがうどんとやらを買ってきてくれるよう布団の中で祈っておれ」


言葉通りティアはこの部屋のドアへと向かうとエメさんがタイミングよくそれを開け、俺は自分の部屋へと強制連行された。

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