第50話

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その日、世界中で奇妙なことが起こった。


ある者は空を大木が飛んでいるのを見たとか、ある者は海の中から炎が吹き上がったのを見たとか。

世界各地で異常現象を目撃した人が溢れた。

皆それぞれに目で見たことを語った。写真で撮った人はネットにアップし、世界中に広がることとなる。

メディアによる報道も後を絶たず、テレビはほとんど異常現象の映像で占められている。

それを取り上げるバラエティー番組も高い視聴率を得ている。


「東京タワーの上半分が消えてしまうなんてどないやねん。代わりにだるまが置いてあったとか。」

「怪獣が持ってったんちゃうか?ほら、あの映画の。」

「アホか。あれはファクションの世界や。」

「それを言うならフィクションや!」


笑い方が独特のMCが、机をバンバン叩きながら突っ込みをいれた。それに合わせ、観客席にも笑いが起こる。


別のチャンネルでは都市伝説に絡めた番組もある。


「少し前から行方不明になっていた少年がいた…。捜査をしてもまったく見つからなかったそうだ。正に神隠しにあっていたその少年が、なんと空から降ってきたのである。」

「そんな映画みたいなことある?!」

「それがあるんです。これが実際の映像です。」


海を撮影している途中に映ったものだ。

海の上空から黒い物体が落下してくる。

拡大すると、人の形をしているのがわかる。それを見た撮影者が慌てて海に飛びこみ、落ちてきた少年を救助する映像だ。


「撮影者によると、その少年は気づいたらどこかへ行ってしまったそうです。そのあと少年がどうなったかは誰も知らない…」


エコーがかかり、前髪を後ろの方で結んだ人が決めポーズをとっている。



このように一つのジャンルとして世界的に流行になった。

海外のメディアでも同じような映像が流れる時がある。特に被害が出た地域には寄付金を提供するという企画も世界的に行われた。



これを見て、くだらないと思う者もいれば、興味を引かれる者もいた。

ごく少数ではあるが、そこからメッセージ性を感じる者もいた。本当に少数だが、いてもたってもいられないと自分なりに動き始めた者もいた。



この出来事から、世界は大きく変わっていくこととなる。世界各地で小規模なクーデターが勃発した。国のトップが謎の失踪をすることもあった。

安定を崩した世界は、また次の安定を求める。誰もその流れに逆らうことはできない。


それが人々の願う方向へと進んでいくことを願うばかりだ。




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