第42話
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10台以上並ぶモニターにはそれぞれ違う映像が映っている。
「標的は仕留められなかったのか?」
「はい。能力の情報が誤っていたようです。」
ここは警備室。本来なら監視カメラの映像が流れるようになっているが、特別に改造し、海外からも映像を受信できるようにしている。
「最初から説明しろ。お前にはその義務がある。」
「はい。まず、ボスが送った武装飛空隊は全滅しました。機体もバラバラに壊され、乗組員も全員絶命しています。」
「そこまでやるのか、八雲というガキは。」
画面越しにも不機嫌さが伝わってくる。
一定のリズムで机を指で叩いている。
「ええ。まず、奴の能力の発動条件について誤りがあります。」
「指を鳴らす、ではないのか?」
「はい。なし、です。」
「はぁ?」
「発動条件はありません。指一本動かさなくても、能力を発動することができます。」
「なんだと?!あのレベルの能力を何の条件も制約もなしに使えるというのか?!」
ボスの焦りようもよく分かる。実際目の前にすると、その強力さに恐怖したものだ。
「奴は言ってました。俺を捕らえたければ軍隊でも引き連れてくるんだ、と。」
「今の話が本当なら、軍隊でも奴を捕らえるのは不可能だ。…仕方ない。あれを向かわせるか。」
「許可はとれるのですか?」
「ああ、他国にも八雲の部下たちの被害が及んでいる。今止めなければ奴はさらに力を蓄えるかもしれん。」
「そうですね。では私はもう降りさせていただきます。」
返事を聞かないままモニターの電源を切った。
もう自分にできることはないのと、これ以上首を突っ込むと危険だからだ。
あれが来るということは日本にかなりの被害が出る可能性がある。
かつてヨーロッパで大量虐殺を行った異能集団。「Σ」人工的に潜在能力を引き出され、能力に近い力を手にいれた者たちによる半犯罪組織。
国家に雇われ、危険な人物の抹殺を命じらている。その際、手段を選ばず、民間への被害もまるで考えずにただ標的の排除を優先する。
各国の重要機関がバックについているため、どんな残虐な行為も任務を達成する過程で起きたことなら許される。
常識の一切通用しない集団が日本に来る。
これは最悪の手段だ。それに標的はあの八雲。どちらが勝つかという問題ではなく、その被害は尋常ではないだろう。
モニターを全て壊し、電源コードも抜いておいた。
俺は命が惜しいからな。
後は勝手にやってくれ。運命の流れに身を任せるとするよ。
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