第28話
「これからの方針なんだが、このまま続けるべきだろうか?」
部屋の中心にある机に座ったパジャマ姿の青年が周りを見渡しながら言った。
「とりあえず各地で何があったかは分かった。ただ、これからどう対処するべきかイメージが湧かない。」
パソコンに目を向けたままうなる。
「依頼主のadoraさんなんだが、あれ以降連絡がつかない。何の目的で依頼したのかも不鮮明なままだ。」
「本当に目的があったんですかね?」
眼鏡をかけた長身の男があきれたように言葉を発した。
「さあね。だが、金は確かに払われている。遊びで払うほどの額じゃない。」
「目的はどうであれ、能力持ちの存在は危険になりうる。それに対処するために支給された金だと思えば納得できる。」
今度は無精ひげを生やした、若干貫禄のある男が言葉を発した。組まれた腕は筋肉で盛り上がっている。
「確かにそう考えることもできる。ではこのまま続けようと思うが、何か意見がある人いるかな?」
「あります。」
この中で唯一女子高生である、少女が答えた。
「単独で動くのは危険だと思います。おそらく向こうも組織で動いている。複数人で組んで動いたほうがいいと思います。」
「なるほど。その組織も気になる。君の話によると、とんでもないやつもいるみたいだからね。」
「その意見には私も賛成です。戦闘なんて私はからっきしですから。」
眼鏡の男がへらへら笑いながら少女の意見に賛成した。
「よし。行動範囲を絞ろう。何も異変がなかった区域もあるし、そこは範囲から外す。同じ区域に数人入れるようにしておくよ。」
壁に映し出されたマップが更新され、新たな編成になった。
それを見て顔をしかめる者や、にやりとする者、無表情な者もいた。
「嬢ちゃんが一緒だと頼もしいなぁ。」
「私のことはアガサと呼んでください。嬢ちゃんなんて言われるほど子供じゃありませんから。」
「最近の若い子は大人びてるねぇ。」
無精ひげをなでながらニヤニヤとアガサを見た。
「セクハラですよ。」
「はっはっは。これは失礼した。」
「高校生だよね?」
「はい。」
「学校行かなくていいの?」
「ええ。おじさんがしっかりやってくれてるはずなんで。」
「複雑な家庭なんだね。」
哀れむような目でアガサを見る。
「何ですかその目は?私を子供だと思ったら痛い目見ますからね。」
「はっはっは!パートナーなのに痛い目を見させられるのか。こわいねぇ~。」
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「まずは、新たに加わった者たちに。お前たちはもう引き返せない。もし裏切るようなことがあれば、俺が殺す。」
場の空気に緊張感が含まれた。場の中心の男が放った言葉には突き刺すような威圧感があった。真珠の耳飾りが光を反射し、周囲の者の目をちかちかさせた。
「だが、これだけは約束する。必ず生きることができる。」
場は言葉の意味が分からず、どう反応していいか分からないとなっていた。
「副リーダーの僕からも一言、八雲はたまに意味不明なこと言うけど気にしないで。」
「こんなところだ。エディ、計画の説明をしてくれ。」
「おーけ。実はここにいないメンバーが計画の大半を担っているんだ。ここにいる人たちにやってもらいたいことは主に邪魔者の排除だ。」
「一つ目はQuesters。一致団結した組織ってわけじゃないけど、個々のレベルはかなり高い。能力持ちは確認されてないけど、十分警戒に値する。そこにいる蓮藤くんが隊長を務めるからガンガン頼っちゃっていいよ。腕っぷしは僕が保証する。」
「できるだけ自分で動いてほしい。俺、頭は良くないから。」
ダンベルを手で巻き上げながら空気椅子をしている。額には血管が浮いている。
「そして2つ目はアンラッカーだ。これについては今知ったものも多いと思う。だけど、優先度はこっちが上。この先必ず、僕らの障害になる。確実に先手を打っておきたい。」
その青い瞳がわずかに熱を帯びる。
「リーダーは僕がやる。詳しいことはまた後で話す。奴の能力についてはかなりの精度で予測できてるはずだ。作戦もその能力の穴をねらっていく。」
場の中心にいる者が立ち上がる。それに呼応してその場にいる者全員が立ち上がった。
「では一旦解散、って言いたいところだが、早くも裏切り者がいるようだ。」
周囲にどよめきが走る。
それにまぎれこの場を去ろうとする者がいた。
「うっ!体が動かない……」
「エディ、能力を解除してやれ。」
「え?いいの?」
「最後の確認だ。」
体の硬直が解けるが、威圧感で足が固まり、動くことができない。
「本当にそれでいいのか?」
「あ、ああ。そうだ。ここでの会議もすべて筒抜けだ。」
「それってこれのことか?」
手にはペンの形っをした盗聴器があった。
「いつの間に……。」
「最後にもう1度聞く。本当にそれでいいのか?」
「死ねぇ!!」
手には銃がもたれていた。引き金をためらいなく引き、銃声が鳴った。
「残念だ。」
「なん……で?」
正面の男を貫くはずの弾丸は自らの腹を貫いていた。
「愚かだな。」
冷たく聞こえた言葉とは反対に、その瞳には悲しみが宿っていた。
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