第18話
ビルを出て近くの喫茶店に入ると、隣の席にあいつがやってきた。
「待って。あんたメンバーじゃないじゃない?」
「今回は呼ばれなかったようだね。」
「何しに来たのよ?」
「さあね。でも、来て正解だったようだよ。」
「はあ?」
「能力持ちを探せ、だっけ?」
アガサは困惑していた。目の前のこいつはあの場にいなかったのに依頼内容を知っている。盗聴器などはすぐ探知されるため、依頼内容を知れるのはあの場にいた者だけだったはずだ。
「どういうこと?」
「君とこう話すのも今日限りだ。君はこの件、本気でやるだろう?」
「ええ。もちろんよ。」
「そう……。できればこの先出会わないことを願うね。」
500円玉をテーブルに置くと、彼は足早に出て行った。
何が言いたかったの?いまいち理解が追いつかなかった。
すぐさま勘定を済ませ、彼の後を追った。少し先を歩く彼の姿が目に入ったので、尾行する形でついていった。
彼はコンビニに立ち寄ったので、出てくるのを向かいの建物の影から見張ることにした。
出てこない…。すでに30分が経過していた。おかしい。コンビニにそこまで時間がかかるだろうか。
もうしばらく待ったが、一向に出てくる気配がしない。
仕方ない。中に入ろうかしら。
偶然を装って彼に接近して、さっきのことについて問いただすのが早い。
「いらっしゃいませー。」
さりげなく商品を見るふりをして歩く。できるだけ自然に見えることを心掛けた。
いない!?どうして?
コンビニの中に彼の姿はなかった。トイレにも誰も入っていない。
嘘よ。彼は確かにこのコンビニに入ったはず。彼がコンビニから出ていくのを私が見逃したっていうの?
それはない。そこまで私の目は節穴ではないわ。
では一体どうやって…。
「お客様?どうかなされましたか?」店員が恐る恐る尋ねた。
「い、いえ。なんでもないです。」額に嫌な汗が浮かんでいる。ここまで訳の分からないことを体験したのは初だった。大抵、アガサの頭の良さがあれば、考えて納得できないことなどなかったのだ。
つくづく気に食わないやつね。私を翻弄するなんて。
仕方なく、新商品のアイスを買ってコンビニを後にした。
アイスの冷たさが心地よかった。自然とイライラも静まっていくようだ。あいつのことは一旦おいておこう。いつまでもあいつのことを考えていたら、私があいつに失恋したみたいになっちゃうじゃない。
そんなことより、問題は依頼のほうよ。具体的に何をすればいいか、見つけたとしてどのように対処すべきか全くわからない。
まずは様子見ね。私の担当区域に近いメンバーと話をしてみようかしら。
アイスをもう一口ほおばった。
なかなかおいしいじゃない。
「ロイヤルミルクティーバー」と書かれている。中にぷにぷにしたタピオカが入っている。
最後の一口を食べると、棒に当たりと書いてあった。
運がいいわね。
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