第17話

「依頼主はadoraというそうだ。素性はよく分からないが、金は確かにもらった。あなたたちにはその能力持ちとやらを探していただきたい。」

パジャマ姿の青年は視線をパソコンから話さず、依頼の説明を始めた。


「この能力持ちというのは何かの例えなのだろうか?心当たりがある人はいるかな?」


全員ピンと来ていないようだ。

「…いないか。」

カタカタカタ

キーボードを叩く音が止まらない。

「何でもいい。何か調べる手がかりとなりそうなことを挙げてくれ。」


「能力…とう言うのはいわゆる、超能力と呼ばれるものかと。運動ができるや頭が良いなどの能力ではありきたりすぎる。わざわざ探すのに金を出したりしない。」


「なるほど、主は超能力の存在を信じているということか。非現実的だとは思わないかな。」


別の者が答える

「さあ、そもそも気づいていないだけで、超能力というのは身近に存在するのかもしれない。主はその存在に気づいた、あるいは用心している、というのは?」


「そうか、何だか夢のある話になってきたね。」

カタカタカタ 問答をしながらも彼の手は止まる気配がない。


「そうだと言えないような気もします。この件に全力を注いでいいのかと…。パンドラの箱を開けるような…。個人的な意見なんですが、なんだか不気味です。」


「案外、みんな能力持ちについて疑問を抱いていないようだね。薄々勘づいているんじゃないのかな?そういう者の存在に。」

カタカタカタ パチ


作業が終わったのか、青年は顔を上げ、メンバーを見渡した。

「この件、参加したくない者は辞退してくれてかまわない。正直このメンバーで揃って依頼に望んだ方が確実だと思うが、危険…かもしれない。データをいろいろ集めてみたが、どれも不鮮明なものばかりだ。裏で組織的に動いている者たちがいるかもしれない。」




アガサは先ほどの問答をただ黙って見ていただけだが、考えはまとまっていた。

そしてそれは他の者も同様のようだ。

ここを出ていく者は誰一人いなかった。



「仕事はしっかりこなす、優秀な人たちだ…と言いたいところだけど、みんな同類ってことだね。少なからずわくわくしている。何か大きなことが起こるかもってね。」


壁をスクリーンとし、画像やマップ、文献が壁一面に表示された。

それぞれ担当が割り振られている。おそらく実力も考慮されているんだろう。


「あくまで調査だ。必要以上に干渉する必要はない。というか、そう簡単に尻尾は出さないはず。何せ今まで全く気づけなかった存在だからね。バックアップは僕直々にする。いつでも連絡してくれ。」


アガサは自分の担当区域の情報を頭にインプットした。

周りの区域にも目をやったが、一つ不自然なことに気づく。


あれ?あいつの名前がない。

ここに来ていたはずなのに。

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