第16話

アガサへ

直ちに集まってほしい。

               kerubero


Questersの管理人であるkeruberoから招集のメールが届いた。

本人からメールが来ることは珍しいので彼女はすぐに反応した。

アガサというのはもちろん本名ではない。アガサクリスティーからとったのだが、別段推理小説に興味があるわけでもなかった。なんとなく響きがよい、その程度の理由からであったが、最近ではこの名前を気に入り始めていた。


「もしもし、おじさん。今日は帰らないけど気にしないで。」

「はいよ。」

それだけ言うと、携帯の電源を切り、眼鏡とマスクを着け、駅に向かった。


制服を着ていないと大人びて見えるが、彼女は正真正銘、女子高生である。本来なら受験生として毎日勉強の日々を送るはずなのだが、彼女は違った。一応、進路担当の教師には専門学校で専門的なことを学びたいということにしているが、実際はそうではない。

「Questers」-- 彼女がこれに出会ってから、彼女の価値観は一変した。そして悟った。自分の才能を生かせるのは学校ではなく、ここなのだと。ここには様々な刺激がある。法に触れること、危険なこと、頭をフル回転させなければ達成できないこと。

そして、達成できればそれなりの額の金が手に入る。まさに一石二鳥であった。


彼女は非常に頭がよかった。それゆえ、今回の計画に呼ばれることとなった。



目的地である高層ビルのフロントまで来ると、こういう件に限って、見慣れた顔があった。

「やあ、やっぱり君も来たんだ。」

「あんた程度も呼ばれるのね。宮本君でしたっけ?」

「ひどい言い方だなぁ。君ほどではないが、俺だって頭はいいんだぜ。」

「そうかしら?私にはなぜあなたがこれまで依頼をこなせてきたのか謎なんだけど。」


「それは秘密ということで。」

彼はアガサと同じ年であるが、なぜかあまり親近感が湧かなかった。

気に入らない。口が達者で常に何かを隠しているような口ぶりをするためであったが、アガサは彼が本当に何かを隠しているのを確信していたため、余計気に障った。


「今回はなんで呼ばれたんだと思う?」

「さあね。でも今回は今まで以上にでかいことな気がするわ。」

「君がそう言うと気味が悪いね。場合によっては俺は手を引こうかな。」

「そ、好きにすれば。」

歩くペースを速め、彼から離れるように歩いた。彼は特に合わせてくる様子もなかった。考えこんでいて気づいていないようだ。



最上階まで来ると、他にも見たことのある者たちが集まっていた。

そして中央の机にパジャマ姿をした青年が座っていた。



「さあ、全員集まったようだね。」


「シンプルに言うと、依頼は……


    {能力持ち}とやらを探すことだ。」

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