第15話

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「私の思想をもっと広めるためにはあなたの協力が必要なんですよ。」

「料金さえちゃんと払ってくだされば求人はだしますよ。」

「いくらなんですか?」

「300万です。」

「高すぎますよ!」



そこにはパジャマ姿でパソコンをいじる青年と、眼鏡をかけた若いのか、それなりにいっているのか何とも見分けがつき難い男がいた。後者のほうは怒りで顔を紅潮させていた。


「私の思想は広めるべきなんです!むしろあなたはその協力ができるのですよ!300万なんて…」

「じゃあ他のところに頼んだらいいんじゃないんですか?もっと表向きのところに。」

「そ、それは」

「できないから今ここに来ている。そうでしょう?あなたのその思想とやらを広めるには払うしかないんですよ。もちろん僕を脅迫して無理やりに…なんてしてもいいですけど?」

青年の顔が不敵にゆがむ。目つきがやたら鋭く、相手に有無を言わせないような圧力が漂っている。

「値段についてはもう少し安くしときますよ。今はサイトのメンテナンス中なんで、今日のところはこの辺で。」


「分かりました……。」

男はそれだけ言うと部屋から出て行った。



男と話している間中、パソコンを打ち続けていた彼の手がようやく止まる。

「ふう。メンテナンス完了っと。」


彼が立ち上げたサイトの左上には「Questers」と書かれている。

「~30人募集 場所はD28 取りは一人あたり 6万程度」と打ち込みサイトを更新した。

このサイトはいわゆる裏求人サイトだ。そして彼はこのサイトの管理人であり、作成者であった。コンピュータに関する知識と人の心理を見極めることに長けていた彼は個人で莫大な金を稼ぎ、今では高層ビルの最上階から地上を見下ろすまでになった。


またくだらないのが来たな。ま、こっちは儲かるからいいんだけど。

しかし、もっと面白い依頼が欲しいものだ。金を稼ぎながら世の裏側を鑑賞するのが僕の趣味なんだから。変なおっさんの宗教勧誘の手助けなんて仕事じゃなきゃやってないね。


ピロリン

パソコンの通知音がなった。音程がやたら高く、耳に障る音だった。すぐに反応できるようにわざとそうしているのであった。


3億だ。有能なものをかたっぱしから集めてくれ。時が来たら再度指示を出す。


!? 

すでに入金されている……。送り主は…adora?

初の依頼主だ。いきなりここまでの額を出すとは。

何か始まるな…。

自然と口がにやけた。


よし。いいだろう。僕が厳選した人材を集めてやろうではないか。

すぐさま人材リストを開き、評価がずば抜けている者たちを抜き出した。


どんな依頼内容であれ、十分こなせるであろうメンツだ。

一人ずつ招集をかけていくと、予想通り全員食いついてきた。


準備はできた。こちらからadoraに連絡するか。


準備ができたことを伝えると、すぐに依頼内容が送られてきた。


なんだって?


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