第14話
「昨日の午後8時43分、高速道路を走行中のトラックが前を走る軽自動車に衝突し、そのまま高速道路から転落しました。トラックの運転士は死亡しました。荷台からは大量の違法…」
あーあー。やっちゃってんの。
どうせ寝不足で運転中に寝ちゃったとかだろ。マイクロスリープだっけか。
本人が気づかないくらい一瞬の間寝ちゃうってやつ。
睡眠の大事さが分かってないらしい。どうせ俺は大丈夫、なんて思っているんだろう。そういう油断が命とりになるってんだ。
一台のトラックがガソリンスタンドに入ってきた。
「満タンで。」
「へいよー。」
運転士を見ると、妙にすっきりした顔をしていた。だいたいこのガソリンスタンドに来る客は疲れた顔をしていた。長時間の走行で睡眠不足に陥っている人もよく見る。
今日のニュースもあったし、一応言っておくか。
「いや~お兄さん。最近トラック事故が多くてね。睡眠はしっかりとらなきゃいかんよ~」
「お気遣いなく。」
あっさりと流された。
そうかい。
最近の若い者は愛想がないなぁ。
この前からうちに来た新人はぴくりとも笑わない。緊張をほぐしてやろうとちょっとばかし寒いこと言ってやったのに。
なんだあの冷めきった目は。俺のことを完全に見下してやがる。
それに妙に整った顔も腹が立つ。おまけに真珠のイヤリングまで。
今日も遅刻しやがって…。あいつの分までなぜ俺が働かなきゃならないんだ!
くそっ!
その時、一人の男が歩いてきた。年齢は20を超えているが、見ようによっては10代にも見えるような、独特な若々しさがあった。背はやや低めだが、それを感じさせない。むしろ常に周りを見下ろしているようにさえ感じる。
あぁ来やがった。
急ぐ様子もなく歩きやがって。
一度ぶちかましてやるか。年上をなめるとどうなるか、分からせてやる。
あの顔にあざ一つくらいつけてやる。
そう意気込んで彼が来るのを待ち構えていたが、彼はふと立ち止まる。
こちらから視線を外し、遠い眼をした。どこを見ているのか定かでない。
あぁ?びびってんのか?
俺の迫力に気圧されて近くにこれないってか?
ちょっとした高揚感が沸き起こる。
こっちからいってやるか。
「いえいえ。その必要はないですよ。」
呟く程度だったが不思議と耳に届く声だった。
ポケットから手を出し、前に掲げる。
緩やかな動作だったが、つけ入る隙のない流れるような動きだ。
真珠の耳飾りがかすかに揺れた。キラキラと太陽の光を反射している。
親指と中指を合わせ…
パチンッッ
ドゴッ ガソリンタンクから不快な音が鳴る。
そして、
ドゴォォォォォン!!!!
爆風が辺りを包んだ。そこにいた者は跡形もなく吹き飛んだ。
「さて、そろそろ向かうか。奴らも動きだしたことだし。」
男はそのまま爆発に背を向け、歩き出した。
連鎖反応のように爆発が続いているが、彼の周りだけ爆風が届いていない。直前で彼を避けているようだ。
「もう少し派手にしとくか。」
再び指を鳴らすと、爆炎が空に昇っていった。
爆風がうごめき、形作られていった。
空に火炎のバラが咲いた。
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