百恋の扉

 おや、初めてのお客様ですね。

 ようこそいらっしゃいました。

 私は百恋もれと申します。

 え、暗い?

 ああ、まだお目が慣れていないのですね。じきに慣れましょう。

 ふふ、このくらいの明るさでなくては活劇が楽しめませんので、どうぞご辛抱くださいませね。

 では、その扉をお閉めになっていただけますか。

 はい、ありがとうございます。

 まだお目が慣れていないことと存じますが私の方をじっと見てくださいませ。ぼんやりとではありましょうが、私の後ろに五つの扉が見えますでしょうか?

 まずはじめは、一番右にあります、始まりの扉の中に入っていただきます。

 あとはそこに立っているだけで道が勝手に進んでいき、終わればこの百恋の間に戻るようになっています。

 一度ここに戻って参りましたら、あとはどの扉でもご自由に開いてくださって結構です。

 一つしか開かないのもよし、全て開くのもよし。

 それはあなた様次第です。

 お帰りになられる際は、あなた様の後ろにございます扉からお出になってくださいね。

 そう、今お閉めいただいた扉でございますよ。

 外では十恋とれがお待ちしておりますので、お帰りになりたくなったらどうぞご遠慮などなさりませぬよう。

 はい、構いませぬ。人それぞれ感じ方が違いますれば、中座されるも、最後まで見届けるもお客様次第なのですよ。ただ、中座されるときは必ずこの百恋もtれの間に戻られた後にお願いいたします。扉の向こうはお足元が危のうございますのでね。活劇自体は途中で目を閉じるなり耳をふさぐなりなさってご覧にならないことはお客様の自由ですよ。

 それでは、ご準備はよろしいですか?

 はい。こちらのはじまりの扉の方へどうぞ。

 では。

 行ってらっしゃいませ、お客様。

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