笑うセックス

鮭さん

第1話

 セックスクスクス、セックスクスクス


 セックスが笑っている。


「なによー、なんで笑ってるのよぉ〜。あんあんあん。」


「本当だ!!なんで笑っているんだ。うんうんうん。」


「うるさいわよお〜。うるさいわよ〜。あん、あんあん。」


「本当にうるさいぞ!セックス!!黙れ!!うんうんうん。」


 ドンドンドン、ドンドンドン


 お隣さんから壁ドンがやってきた。今までセックスをしている時壁ドンがやってくることはなかった。つまり、セックスが笑っているためにやってきた壁ドンなのだ。セックスが笑っているせいでお隣さんは迷惑に思ったのだ。お隣に住んでいるのは吾郎さん。普段は旅行のお土産をくれる優しい人だ。そんな人が壁ドンをするんだから、それはもう迷惑なのだ。


「全くもう。お隣さん、怒ってるじゃないのお!!あんあんあん!!あんあんあん!!」


「本当だぞ!!怒っているぞ!!うんうんうん!!うんうんうん!!」


「クスクスクス、クスクス......ごめんなさい....これには訳が.....」


「うんっ!!」


「あんっ!!」


 セックスがなにか言いかけたところで二人は果てました。セックスは死にました。


 〜二週間後〜


「あなた、ちょっと、なんか寒いわ。」


「そんな。気温38度だぞ。寒いなんて、変じゃないか。俺は汗が止まらんぞ。」


「そうねぇ、風邪かしら。それになんか、眠気もすごいわぁ。」


「なんだろうね........。ハッ!!もしかして!!」


 ブーン!!ブーン!!ブーン!!


 二人は病院へ向かいました。


「おめでとうございます!!」


 検査は陽性。そう、妊娠していたのである。


「やったあ!!」


「あなた、嬉しいわ!!」


 二人は喜んだ。結婚8年、子供を作ることが二人の夢だった。それはもう、それはもう喜んだ。そこであの、二週間前の奇妙な出来事を思い出した。笑うセックス。セックスクスクスクス。そう、あの時の奇妙なセックスのこと。きっとあのセックスはこのセックスにより子供ができることがわかっていたのだ(なにせ、セックスなので。)。そのため一人喜び、笑っていたのだ。


(そうだったのか、セックス。怒ったりして、ごめんな。)


(ごめんなさい。セックスさん。子供が出来たのはあなたのおかげよ。)


 二人は胸の中で静かにセックスに謝り、そして感謝した。


 〜10ヶ月後〜


 バブーバブー!!バブーバブー!!


「おめでとうございます!!元気な男の子ですよ!!」


 何もかも順調に進み、元気な赤ちゃんが生まれた。


「あぁ、私の可愛い赤ちゃん。」


「うぅ、よしよし。よしよし。」


 二人は涙を流して喜んだ。


「おめでとう!!」


「おめでとうじゃ。」


「おめでとうでござる。」


「めでたい!!めでたい!!」


「今夜は赤飯!!赤飯じゃ!!」


 二人の両親、友達、親戚など、みんな喜び、祝いの言葉を述べていった。


「ありがとう。ありがとう。」


 二人は涙を流しながらさらに答えた。とてもとても、幸せそうだった。それはもう、幸福で溢れていた。


 しかし、私は問いたい。争いのやまないこの世に新たな命が産み落とされることは、本当に祝うべきことなのか、と。

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笑うセックス 鮭さん @sakesan

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