取り戻すために

 結局、今の俺の実力では龍達相手に傷一つつけることは出来なかった。あれから何度も圧倒的な力で叩き潰され、死を体験しまくった。その度、ゾンビの如く蘇り、挑戦し続けたが何も出来ないまま時間だけが過ぎていった。

 目が覚める。ベッドから起き上がろうと体を起こす。すぐに右手に違和感を感じた。右手に目をやると、龍達の空間で使っていた龍剣ドレイクが握りしめられていた。


「あいつらからの贈り物か……」


 正直、俺には勿体無さすぎる代物だが、ありがたく受け取っておくことにした。


――――――――――


 それからすぐに退院し、ザックスの家へと戻る。

 以前に退院した時と同じく賛辞の言葉が送られた。

 そして休むことなく働き始める。

 日没の時間になり店が閉まる。夕飯を頂き、俺はすぐに出掛けた。この後、日付が変わるまでグリーデとの修行を行うという約束をしている。それが終わっても次はベッドの中で龍達との殺し合い(ほぼ一方的に殺されているだけだが)が待っている。

 これがこれから王都グレインで騎士団に入団するまでの日課となる。はっきり言って地獄だが、生ぬるいことを言っている余裕は自分にないのは分かっている。


「つーか何で俺も付き合わされてんだ?」


 俺とザックスは腕立て伏せをしていた。

 グリーデはザックスを睨み答えた。


「お前、これからの半年間何もしねえで遊び呆けるつもりかコラ。言っとくけど今のお前にも娘は託せねえよ」

「そ、そんなあ……」


 弱気な声を発しながらも腕立て伏せを続ける。毎日筋トレをしているだけあってあまり苦しく無さそうだ。

 一方、普段から筋トレなと特にやっていなかった俺は情けないことに息が切れてきていた。

 

「ユーガ、ペース落ちているわよ。頑張って」


 修行に付き合ってくれているリオーネが腕立て伏せをしながら励ましてくる。彼女は全くペースを落としていない。男として負けるわけにはいかない。


「やってやろうじゃねえかこの野郎!」


 俺は気合いを入れ、ペースを上げる。


――――――――――


 死にそう。体が立ち上がらない。


「立てコラ。休んでんじゃねえぞこの野郎」


 グリーデに無理やり立たされる。体がふらつく。


「さて、次はとうとう剣の稽古だ」


 グリーデは俺に木刀を投げ渡した。


「細かいことは教えねえ。やりながら学べや」


 無茶なことを言ってくる。けどもう慣れた。


「行きますよ! 師匠!」


 俺は木刀を握り締めて走り出す。


 俺はこれからの半年間、毎日が地獄のような日々になるだろう。そんな地獄を乗り切って強くなってやる。俺の力で仲間を守るために。魔王を倒して何気ない退屈な生活を取り戻すために。








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