赤
例えばものを食べる。風呂に入る。呼吸をする。その一つ一つの行為をする度、身体からの“生命活動を維持しますか?”という質問に承諾しているような気がして、やりきれない。希死念慮を抱き始めたのはいつからだろう。ビルの外階段を昇る時なんかは、外を見る度に承諾を繰り返している。風呂に潜ってみた時も、承諾に迫られ水面に顔を出す。例えば、交差点。大通りを流れに則って往来する車たちは、全てが例外なく個々の目的のために動いている。それを考えただけで、何だか悪寒がする。自分以外の人間が意思を持っていることが、たまらなく怖いのだ。哲学的ゾンビ、というものの存在の証明を何度願ったか。けたたましい警鐘が聞こえる。身体を前のめりにし、一歩前へ。心音、冷や汗、涙、その全てが惨めで、鮮やかだ。僕は、初めて、その質問を拒否した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます