窓際のぬいぐるみは、部屋の中に向けておくのが望ましい。たとえ彼らが外を向いていても、興味を示す人間なんてそうそう居ないからだ。住宅街、二階のミッキーマウスと目が合ってしまった感受性の豊か過ぎる僕は、そんなことを考えていた。なあ、誰にも気づいてもらえずに、ご主人様にも背を向け続けるお前はどんな気持ちなんだ。母親は僕の様子に気が付くと視線の先を一瞥して、「ミッキーさんいるね」と呟いた。そんな軽薄な好奇心によって興味を傾けている訳ではないけれど、いつまでも僕のことを子供だと思い続ける母親には説明してもわからないだろう。窓辺のミッキーは、当然瞬き一つせずに、縫い付けられた双眸でこちらを捉えていた。何かを伝えたかったのか知れない。その家の住人が孤独死していたことを知った時、嗚呼やっぱり僕の感受性は豊か過ぎるんだなと静かに思った。

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