目が覚める。全身を覆う浮遊感の塊を払い除け、上体を起す。心拍は依然として速く、それによって全身が締め付けられているような錯覚に陥る。頭などは特に緊箍児でも着けられているかのような痛みだ。絞られた脳がからからに乾涸びて、全ての思考を停止させてしまうような幻想が過る。汗の滴がこめかみから喉元まで伝う感覚が厭わしく、喉笛はその骨の隙間を的確に、薄く鋭利で怜悧な剃刀の刃が貫いているような気がして、もがき苦しみながら首を押さえた。頸動脈の脈動は未だ速い。明けない夜は無いと、誰かが言った。然しこの夜は永遠である気がして、時間の奔流に取り残されているような思いであった。

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