礫
別れていく人間を、腐るほど見てきた。もっとも、僕の見ていた二人の関係は、どろどろに混じった愛憎の上澄みだけだったのかもしれないけれど。誰も彼も皆あれほど仲が良かったのに、果てには軋轢と生傷を残していがみ合っているのを見たとき、まるですべての人間が互いの心に傷をつけるために他人と付き合っているような気がした。笑いながらナイフを翳し合い、したたかに不平不満を抑制し合う。そして、いつかその均衡が崩れて、互いに傷を負う。そうして被害者として嘆いているのを見たとき、僕はその手に握られた刃でちょんちょんと背中を突かれて、次はお前だ、とでも言われているような感じがして、ひどく背筋が粟立つ。酷いもので、人間は、自分の犯した罪に気が付かない。否、気が付かないからこそ罪なのだ。水面下の心の刺殺。軋轢の粒を奥歯で噛み潰すと、気味の悪いほど甘かった。
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