フリーズドライ、という言葉をご存知だろうか。液体窒素などを使うと、物質を凍らせて乾燥させ、そのものの姿を留めておける。例えば、花。それは、寒い寒い冬の夜だった。私の愛していた彼は、外で吹雪にまかれて死んだ。ホワイトアウトしたらしい。自宅から数分もかからないような場所で、花束を抱えて倒れていた。不謹慎ながらその遺体はこの世の物とは思えないほど美しく、胴から爪の先までもが霜に包まれ煌いていた。私は彼の唇にそっと触れると口づけを落とした。そして、脇に置いてあった花束を一瞥する。花弁は全て乾燥し、ぼろぼろに崩れてしまっていたものの、蕾だけが頑なにその形を保ち続けていた。永遠に咲かない花。まるで包含されている幸せを懸命に逃さないような姿は、私たちの愛の終わりを飾るのに相応しかった。

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