浮気性の彼から、去り際にアネモネを渡された。花言葉は、薄れゆく愛、らしい。押し問答をする気力すら無かったから、私は適当に受け取った。「鈍感な君にはわからないだろうけど」と彼は言いかける。嗚呼、そういう所が大嫌いだ。自分が一度好きになった人を悪く言うなんて、自分の価値観を否定しているのと相違ないのに。花言葉も、妾のことも、全てわかっていることなのに、私を心配するふりをして、見下すところが、大嫌いだ。心にもない「今までありがとう」は、場の空気を澄ませるわけでもなく、ただ口から放たれたままだった。「次の日曜日には、スノードロップを贈ってあげるね」鈍感な君にはわからないだろうけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る