最終話 日常

 あれから2週間…

夏休みが明け、俺達に日常が戻ってきた。


 合宿での出来事は、エリクサー社が国の機密事項だったせいか、ニュースでは取り上げられず、学校でも大きな話題になる事は無かった。


―それにしても…とんでもない経験だったな…

 「…ねえ、奏太。ボーッとしてどうしたの?人の話ちゃんと聞いてる?」

隣の席から、遙が話しかけて来ていたようだ。

「ん、ゴメン。聞いてなかった。」

…残念な事に、頭を強か打ったせいか、俺の『思考加速』は消え去ってしまった。

でも、これで良いのかも知れない。

 だって、人を導ける程、俺は器が広くないから…


「さあ、部活に行きましょう!」

目の前で微笑む遙の笑顔を守れただけでも、俺には上出来さ…

「緑も今日から来ているみたいだし、元気付けてあげないとね!」


…そう、気がついた緑はここ数ヶ月の記憶を失っていた。きっと、イアに洗脳されていたのだろう。以前のままで接する事が出来るのは、本当に嬉しい知らせだった。


「さーて、次こそ女体の神秘について、研究しようかな!」

 その言葉に遙が…

「それは、いいわね…私を使ってみる?」

と…んん? はぁああ!?


「バカ!冗談よ!」

そう言うと顔を赤らめ、遙は走り去っていく。

 危うく『突然死』するところだったじゃないか…遙よ。

 一気に上がった心拍数を落ち着かせようと、窓越しに空を見上げる。

 そこには澄み切った青空に高く浮かんだ雲が…夏の終わりを告げようとしていた。


――――――― END  ―――――――

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