第22話 危機

 緑が振り下ろしたハンマーを俺は身を翻し避けようとした。右肩を掠め、緑はその勢いのままサーバーに振り下ろしてしまった。

火花が散り『バチッ』という音と共に弾かれた緑はそのまま気を失う事となる。


 しかし、その直後、モニターに表示された言葉に一同は言葉を失った。


『起爆作動 残り2分』


 次の瞬間、けたたましい警報と共に『この施設は2分後に消滅します。全従業員は速やかに退所を』というアナウンス。

 恐らく、この施設は『SS』の目的を果たしたあと、最終的に破棄される予定だったのだろう。それが、今作動してしまった。


「えっ?ええっ!?」

優弥がパニックに陥る。

――それもそうだ…2分では…逃げ切れない…


「奏太!如月部長!逃げなきゃ!」

 遙の悲痛な叫びがこだまする。

「くっそ!2分って…」

 本田先輩は気を失った緑を抱える。


……落ち着け…俺…

 …皆を…助けるんだ!

この建物には『窓』が無い、窓を破って脱出は出来ない…だが、きっと…


 俺は壁面を見渡す…すると、あった!


 非常階段へ駆け出そうとする皆に向かい俺は声の限り叫ぶ。

「皆っ!そっちじゃない!!俺に着いて来てくれ!!」

 俺が見つけたのは、壁に表示されていた脱出用シューターだった。

 俺は、祈りながら作動用のレバーを下げると、ロックが解除される音に続き、壁の一面が外に向かって開く。

 すぐさま、空気を送り込まれた滑り台が、裏手にある森の地面に届いた。


「よしっ!皆っ!逃げろっ!!」

 全員が滑り降りるのを確認し、最後にシューターに飛び乗った時だった。


 ――耳をつんざく爆発音。

滑り切る手前で俺は外に投げ出されてしまい、意識を失った……。


…俺達が助かったのは、幸運だった。


「奏太!お見舞いに来てあげたわよ!感謝しなさい!」


「おいおい、ここは病院だぞ!静かにしましょうって習わなかったか!?…全く、ただの検査入院なのに、大袈裟なんだよ」

 遥のあと少し遅れて如月部長と豊田副部長、本田先輩が姿を現す。


「ふふっ。その様子なら大丈夫そうね、奏太君」如月部長が可笑しそうに口に手を当て笑った。

 


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