第20話 協力者

    【 IA 接続完了 】


『ふふふっ…ありがとう』

 イアの微笑は歪んだ笑みに変わる。

その、明らかな敵意に向け、俺は言い放った。

「お役に立てなくて悪かったな……イア」

 その言葉に、イアを含めた部員全員の不思議そうな視線が集まる。


『何の事かしら…? まあ、あなたのお陰でSSに侵入できた。これからは貴方たちを支配してあげるわ』

 イアの言葉を無視し、俺は口を開く。

「みんな…黙っててごめん。ここに来てから、俺には夢の女、イアが見えていたんだ」


『ちょっと?聞こえてるの?』


「そして、俺は、イアの指示どおり動いたかの様に演じた」


『何を…言って…?』


「俺が今インストールしているアプリは…恐らくイアを滅ぼす事となる」


『はぁ!? どういうゥゥ…aaa! ナゼ!データが逆流シテeeクルuuu?!』

 そう云うイアの身体はノイズが混じり、膨張をはじめた。


「奏太君? どう云う事か教えて頂戴」

 部長の言葉に、俺は自分の仮説を皆に話す。

「はい、イアはSSに侵入する事が目的だったんです。その方法『IA 』に、俺は細工をしました…………」

 仮説を話し終えた刹那、もはや人の言葉を失ったイアの絶叫が頭に響き、肥大化した塊で襲い掛かってくるが、その物体は何の抵抗もなく俺の身体をすり抜けた。


 仮説を聞き終えた部員達が呆気に取られる中、如月部長が冷静に尋ねて来る。

「素晴らしい仮説ね。イアが見えている、あなたの様子からするに、仮説は合っていたようね」

 ほんとに、如月部長は俺と同じく『思考加速』でも起こっているんだろうか?


「危な…かった…私、人類を滅ぼす所だったのね…」青い顔をした遙は、荒い息遣いのまま目を見開いた。

 

 スマホの画面を見ると、『アップロード中61%』と表示されている。


「皆さん、まだです。恐らく、ここにイアの協力者がいる。本田先輩! インストールが終わるまで、俺達を守ってくれますか?」

 その言葉に本田先輩は『お、おう!』と、引き締まった表情で答えてくれる。

 イアの姿は既に原形を失い、ノイズの塊と化していた。イアの驚異はもう無いが最後のトドメを刺すまでは気を抜いてはいけない。


 ──あとは、の妨害を阻止出来れば。


「えっ!?協力者?」全員の視線が集まる…

本当は、疑いたく無かった。でも、俺を刺すような視線が、怒りに似た感情が、何処からか伝わってきていた。


 俺は息を大きく吸い込むと、声を張り上げた。


「姿を見せたらどうですか! 緑さん!!」

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